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噂話

作者: ガッデム

東京都のとある高級住宅地に住んでいる四十代の婦人は、井戸端会議が大好き。毎日五つも下の主人を送ると、近所の同年代で集まり、井戸端会議を始める。井戸端会議自体は楽しいのだが、井戸端会議外での準備が大変である。井戸端会議での話題はだいたいが身近で起こった話で、ニュースで報道されている話題などは、ほぼ話されない。そのため、近所のことをよく知る必要があり、ほぼ毎日行われている井戸端会議に話題を持っていくのはかなりハードであった。そのため、婦人たちは井戸端会議が終わるやいなや、すぐさま各々近所を探索し、明日の井戸端会議で話す話題を探す小さな旅に出るのだった。

 その日も、婦人は井戸端会議が終わると、家へは帰らず町内会をぐるっと一周した。だいたい、一周すると何か一つは話題があるはずだが、今日は本当に一つもなさそうだった。そこで、婦人は以前聞いていた「膝を骨折してしまった九十代の主人」に話を伺うことにした。もう何年も手入れのされていないのだろう。これでもかと言わんばかりに雑草やコケが庭を覆い尽くしていた。少し気味が悪いと感じながらも、婦人はコケの生えかかったインターホンを押した。すると、予想していたよりも若々しい声の男性が、はーいと応えた。

「私、同じ町内会の者ですけども。骨折されたと伺ったので少しお見舞いに、と実家で採れたみかんを持ってきたんです」

みかんを持って来れば、会話の導火線にはなるだろう。そう思って、近所のスーパーへ寄って買って来たのである。

「それはそれは。私はあまり友人がいないものでね。特にこの町内会には。人が訪ねて来てくれるだけで嬉しい。どうぞ、あがってください」

婦人は、よし、とガッツポーズをした。話を聞いていると、主人はかなり弱気で、もうこの歳で骨折するということは死ぬことを意味しているんだ…、と話していた。

 次の日の朝、井戸端会議が開催されている場所へ婦人は急いだ。少し寝坊してしまい、主人を送ることも、今朝はできなかった。しかし、井戸端会議は出席しなければならない。明日にはこの話題が他の人と被ってしまうかもしれないのだから。井戸端会議の開催場所へ向かうと、五、六人いる婦人たちが興味深そうに一人の話を聞いていた。ここからは何が話されているのか聞こえない。もう少し近づこう…ちょうど聞こえたのは「…が心筋梗塞で意識不明なんですって」という部分だった。婦人はかなり驚いた。と同時に、今日持って来た話題が、弱いことに冷や汗をかいた。どうしよう、このままではつまらない人間としてレッテルが貼られてしまう。そう感じた婦人は、悪巧みを閃き、話を始めた。

「○○番地の主人、先日亡くなったそうよ」

骨折して身動きが取れないのであれば、外へ出歩くこともないし、いずれこの話も忘れられるだろう、そんな安易な気持ちで話した。しかし婦人たちの中でこの話題のインパクトは凄まじかったらしく、その日はその話題で持ちきりだった。嘘をついてしまったことに少しの嫌悪感を抱きながらも、今日の井戸端会議の天下は私がとった、という充実感が上回り、その晩は本当にぐっすりと寝ることができた。

 次の日の朝、主人を送ったあと、井戸端会議へそろそろ向かおうかなぁと、朝のニュース番組を見ながらコーヒーをすすっていると、インターホンがなった。こんな朝早くに誰だろう、と出てみると、町内会の会長だった。

「実はね…○○番地の主人がお亡くなったそうで…」

話は、葬儀についてだったらしいが、婦人は自分のついた嘘が本当になってしまった、と後悔の念と、言霊の恐ろしさに顔が真っ青になっていた。話の内容は、会長が婦人と亡くなった主人が話していたのを聞きつけ、この町内会では回覧板がないため、来ているであろう主人のご遺族の方と、葬儀は家族葬にするのかどうかを聞いて来てほしいとのことだった。婦人は血の気が引いた状態で、主人の家に向かった。近づくたびに足が重たくなるのがわかった。実際のところ、私が殺したのではないかとか思いながら、恐る恐るインターホンを押した。すると、聞き覚えのある声が聞こえた。

「また来てくださったのですか。ありがとうございます、来てくれる人も少ないのに、リピーターなんて。嬉しすぎて、本当に泣きそうですよ」

婦人も泣きそうだった。霊的なもので、今から私は呪われるのか、それとも本当に生きていたのか。どちらにせよ、涙をこらえるのに必死だった。

「私は、あなたが亡くなったと聞きました。本当は亡くなっていないのですか?」

「もちろん、だとしたら私は今あなたと会話できていませんですし」

主人は笑って話した。

「そうですよね、よかった。全く、誰がこんなひどい噂話を」


構想自体は単純なものだったのですが、こんだけ長い文になるとは思ってもみませんでした。長い文になればなるほど、文が雑になってしまって…私の稚拙な部分が全面に出ている小説だったと思いますが、最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。

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