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月徒と人間

 かつてその世界は、ふたつに分かれていた。



 世界に存在する知恵ある生物の中でも、最大の勢力を持つ者達、人間。彼らは誕生後の数千年で、瞬く間に文明を発展させ、世界中にその存在を広げていった。だが、人間が世界を支配する事を良しとしない者達もまた、その世界には存在していた。

 それは、人間以外の知恵持つ者、人ならざる者達。夜の加護を受けるとされる彼らは、夜の象徴たる天体になぞらえて〈月徒げっと〉と呼ばれていた。厳密には人間のように一種類の生物を指すわけではないが、人間に対抗するかのように、彼らはお互いに徒党を組んでいた。



 二つの種族は、遥か古より敵対を続けていた。人間は月徒を闇から生まれた魔性の存在と忌み嫌い、月徒は人間を低俗なくせに数だけで繁栄した存在と見下していた。両者は互いを蔑み、憎み、争い、永遠の仇敵として認識していた。



 決して交わる事の無い、二つの種族が生きる時代。そんな中、とある小さな人間の村の傍らで、誰も知らない小さな出来事があった。










 木々が鬱蒼と生い茂る山奥。そこに、一人の月徒が倒れ伏していた。


「うう……」


 弱々しく幼い呻きが、それの口から漏れた。人間より強靭な肉体を持つ種が大半の月徒と言えど、それはまだ子供であるらしく、身体の大きさは人間の少年と大して変わらない。

 イヌ科の獣を思わせる頭部に、鋭い角。背中には黒い羽毛に包まれた翼があり、両手に伸びる爪は未成熟ながらも武器としての十分な強度を持っている。獣の特徴を集め、何よりも強い生物として生み出された存在、そのような印象を他者に与えた。

 煌びやかな衣服や装飾品を身に纏っている事から、月徒の中でも高位の存在である事が伺える。全身を覆う金色の体毛は、人間からは魔物と揶揄される存在でありながら、神々しさすら感じられるほどに美しい。


「人の様子を偵察なんて、考えなきゃ良かったな……」


 月徒の口から、弱々しい息と共に、少年の声で流暢な言葉が発せられる。

 彼は言葉通り、この山の麓にある、人間の小さな村を偵察しようとしていた。もっとも、実際は偵察と言うよりも、興味本位で人間の生活を観察しようとしていた、と言ったほうが正しい。


 だが、村の周囲には、月徒に対する罠がいくつも仕掛けてあったのだ。上級の月徒とはいえまだ子供、小さな気の緩みから、彼はそんな罠の一つに引っかかってしまった。

 対象が上に乗ると作動する、鋸状の刃が付いたトラバサミ。特殊な麻痺毒でも仕込まれていたのか、身体は上手く動かない上、月徒の得意分野であるはずの魔法も使えなくなっていた。


「このままじゃ、飢え死にでもするかな。いや、その前に殺されるか……」


 心細さからか、恐怖からか、独り言が漏れる。彼とて、自分達と人間の関係は理解している。自分達の領域に踏み込んだ敵を、放置しておくとは思えない。


「……抜けられそうに、ないか。せめて、楽に殺してもらいたいんだけど」


 少年にしては達観した物言いは、人間よりもシビアな環境で生きている月徒であるためだろうか。もちろん、彼も死にたくはない。恐怖を誤魔化している面もあったが、逃げられそうにない事を彼は悟っていた。



 彼の耳が、誰かの足音を捉えた。


 何か来る。いよいよその瞬間が近付いてきたようで、彼もさすがに身体を硬直させた。抵抗が無駄なのも悟った彼は、どんな方法で殺されるんだろう、どのぐらい痛いんだろう、などと言った事を漠然と考えていた。


 そして、少し時間をおいて、その足音の主が姿を見せる。


「…………あれ?」


 その人物を見た月徒の少年は、少し間の抜けた声を出した。

 何故ならば、現れたのは確かに人間ではあったのだが、彼が考えていた狩人などの類には見えない、小さな女の子だったからだ。


「………………」


 少女は月徒の姿に驚いたように、軽く目を見開いている。驚いたのは彼も一緒で、黄金の瞳をじっと少女へと向けていた。

 年の頃は10歳ほどであろうか。衣服は質素ながら、顔立ちは整っており、雪のように真っ白な髪をさらさらと風に揺らす姿は可愛らしい。


「君は……」


「…………!」


 状況がよく分からずに、思わず少女に声をかける月徒。だが、少女はそれに返事をせず、ただ彼に歩み寄ってくる。最初はやはり殺されるのかと思った月徒だが、少女は彼の眼前を通りすぎていく。


 そして、少女は彼の足元でしゃがみ込むと、金属質な音を立てながら何かを弄り始める。月徒が訝しげな表情をしていると、一際大きな、ガチャンと言う何かが外れたような音が響いた。それは紛れもなく、彼を拘束していたトラバサミが外れる音だった。


「え……?」


「ごめんね、もう少し待ってて」


 初めて少女が口を開いた。透き通った、優しい声だ。彼女は自分のポーチからビンを二つ取り出すと、まずは一つの蓋を開いた。傷付いた月徒の脚に中身の液体をかけていく。


「そ、それは?」


「傷薬だよ。良く効くけど、凄く染みるんだよね。トラバサミの毒がいい感じに麻酔になってると思うけど。大丈夫? 痛くない?」


「……う、うん」


 困惑しながらも、勢いに負けて月徒が返事をすると、彼女は「良かった」と呟き、もう一つのビンを開いた。


「はい、口開けて!」


「え……あ?」


 言われるがまま、月徒は思わず口を開く。少女は満足げに微笑み、彼の口にビンの中身を流し込んだ。反射的に、流された液体を飲み込む少年は、次の瞬間には激しくむせ返っていた。


「ん、んぐっ! う……ゲ、ゲホッ! に、苦っ……えぐい……!?」


「あはは、だよね。私も前に飲んだけど、もうちょっとどうにかならなかったのかな」


 苦しげに咳き込む月徒に、少女は苦笑と共にそんな事を言っている。どうせなら味覚も麻痺していてほしかった、そんな事を本気で考えてしまうほどに酷い味だった。


「ゴホッ、ゴホッ……うえ、吐きそう。な、何なのコレ……毒?」


「毒なんてひどいことしないよ、麻痺毒の解毒剤。効果抜群だから、すぐに動けるようになると思うよ」


 涙目で苦しんでいる月徒には、もはや何が何だか分からなかった。殺されるかと思っていた矢先、唐突に罠を外され、薬を飲まされたのだから、混乱するのも無理はない。

 とりあえず、一分もすれば、苦さは何とか我慢出来る程度に収まってきた。同時に、先ほどまで殆ど動かなかった身体が、少しずつ動くようになってくる。どうやら、本当に解毒剤だったらしい。


「はあ、でも良かった。間違って罠を踏んだ時の為に、解毒剤をいつも持っててさ」


「……ど、どういうつもりなのさ、君は?」


「どういう、って?」


 全く要領を得ない少女の返答に、月徒は頭を抱え込みたくなる。実際は、まだ腕が上手く動かない。


「オレは月徒だ。君達……人間にとって敵なんだよ? どうして、罠で捕らえた敵をわざわざ逃がすんだって聞いてるの」


 至極当然であるはずの彼の問いかけに、少女は少しの間、きょとんとする。月徒は何だか、自分がおかしいのだろうか、と言う気分になってきた。そして。


「……君が困ってるみたいだったから?」


「はあ!?」


 少女のあんまりな返答に、思わず素っ頓狂な声を上げる。いくらなんでもそれは適当すぎるのではないだろうか、と。


「だって君、悪い月徒には見えなかったんだもの」


「わ、悪い月徒って何だよ。もしオレが襲いかかってたら、どうするつもりだったのさ!」


「んー、その時はその時? 君、まだ子供だし。何か、あまり強くなさそう」


「なんっ……こ、子供は君も同じだろ! だいたいオレは」


「あ、いけない!」


 強くなさそうと言われたのはさすがにプライドを傷付けたのか、月徒が反論しようとする。が、それは少女の声に虚しく遮られた。


「もうすぐ大人達が見回りに来る時間なの。君、早く逃げないと!」


「!」


 見つかったら大変な事は、さすがに少女も理解しているらしい。彼は慌てて立ち上がるが、脚に力が入らず、がくがくと震えている。


「だ、ダメだ。まだ身体が……」


「しょうがないわね。肩貸してあげるから、ついて来て!」


「……う、うん!」


 言いたい事はいろいろとあったが、今は彼女に任せるしかなさそうだった。月徒の少年は人間の少女に支えられながら、何とかその場を逃げ出した。


















「ふう。ここまで来れば大丈夫かしら?」


「……そうだね。近くに他の人間の気配はないみたいだ」


 十分ほど山の中を走り抜けてから、二人は足を止める。

 麻痺した自分に合わせたスピードとは言え、険しい山道を走った後にも関わらず少女が平然としている事に、月徒は少し驚いた。もしかしたらこの少女は、見た目と違ってかなりの身体能力を持っているのではないか、と。


「どう? そろそろ痺れも取れてきたんじゃない?」


「うん……大丈夫、もう普通に動けそうだ」


「良かった」


 彼の肩を支えていた少女がゆっくり体を離す。脚が震える事も無い。両手を握り締めてみるが、感覚は殆ど戻ってきている。


「……あ、そう言えば君って、二本足で立てるんだね」


「い、今更? 一緒に走ってたじゃないか」


「あはは、逃げる事で頭いっぱいで、気にしてなかったからさ」


 笑いながらそんな事を言う少女に、少年は呆れたように溜め息をつく。先程から分かってはいたのだが、この少女はかなりマイペースらしい。


「でも、見れば見るほど君って何だかおかしな月徒だよね。人間っぽいし」


「……オレは君のほうがおかしな人間だと思うけど。だいたい、人間っぽいってどういう意味? 二本足で立ってる奴らなんて、それこそいっぱいいるんだけど」


「えっと、体つきとか? 顔は犬みたいだし、カラスみたいな羽とかもあるけど。でも、それよりも雰囲気かな。何か怖くないし」


「い、犬っ……カラスって……」


 悪気は無いのだろうがストレートすぎる比喩に、軽くショックを受ける。が、矢継ぎ早に繰り広げられる少女の言葉に、抗議をする事も出来ない。


「あ、そうだ。君、何て言うの?」


「……え?」


「名前よ、名前。月徒にも名前ってあるでしょ?」


 その質問に、少年は少し口ごもる。敵である人間に、自分の事をどこまで話したものか、と。少しだけ考えて、名前程度ならば問題はないか、という結論に至った。


「そりゃ、あるけど。クーガ、だよ」


 そして次の瞬間。月徒の少年クーガは、その結論を出した数秒前の自分を張り倒したくなった。


「クーガ、か。んー……じゃ、クーちゃんだね!」


「はあぁ!? ち、ちょっと待って! 何だよ、そのクーちゃんって!」


「君の事だよ? うん、良い名前だね。よろしく、クーちゃん!」


「……~~っ!!」


 その可愛らしすぎる響きに、クーガが子供ながらに持っていた高位月徒としてのプライドが、恐ろしい早さで崩れ去っていく音が聞こえた気がした。この人間は本当に何なんだ、と、どこか怒りにも似た感情が芽生えた時。


「でも、本当に良かった。私が気付かなかったら、あのまま大人達に捕まってたと思うし」


「……あ……」


 言われてみて初めて、クーガは自分が助かった事を実感する。反面、あと一歩で死んでいたかもしれないと言う事実に改めてぞくりとして、身体が小さく震える。


「大丈夫、クーちゃん?」


 気遣うようにクーガの手を握ってくる少女。その温かさが、誰かと触れあっているという確かな自己認識が、背筋の寒さを少しずつ消していった。そして、彼女は命の恩人だということに、改めて気付く。その事が、薄暗い感情を霧散させてしまった。


「……うん。その、ありがとう。君のおかげで、無事に帰れそうだ」


 クーガは素直に頭を下げると、少女に向かって微笑んでみせた。少女の側だけではなく、彼も本来ならばこの少女を殺すべきだ。だが、恩を仇で返すつもりには、クーガはどうしてもなれなかった。


「でも、さっきも言ったけど、無闇に月徒オレたちを助けたりしないほうが良いと思う。人間を餌としか見てない奴のが多いんだからさ」


「でも、困っている相手は助けなさいって、お母さんに言われてたし」


「いや、それは甘……素敵な考えだと思うけどね? さすがに人間の中での話だと思うよ」


「どうして? 月徒だってクーちゃんみたいにお話もできるのに」


「……クーちゃんは止めてほしいんだけど?」


「どうして? 可愛いじゃない、クーちゃん! もう決めたもの、私は君をクーちゃんって呼ぶってね」


「そういうことじゃなくて。ああ、もう。調子狂うなあ」


 クーガは困ったように頭をかく。対して、よく分かっていないようで、首を傾げている少女。どうやら、突っ込むだけ無駄なようだ。


「……あ、いけない。私、そろそろ戻らないと。大人に怒られちゃう」


「そうか……道は分かるの?」


「当然。この山は、村の子供には庭みたいなものなのよ」


 にっこりと微笑むと、少女はくるりと背を向ける。そのまま駆け出そうとしたかと思うと、何かを思い出したかのように、もう一度だけ振り返った。


「よく考えたら、教えてなかったよね。私の名前は、レナって言うんだ」


「レナ……」


「うん。私、いつもお昼過ぎに、山のてっぺんにある『長老の木』の辺りにいるから、気が向いたら逢いに来てよ。それじゃ、またね!」


 それだけ言うと、少女はクーガの返事も待たずに走り出した。白い髪を揺らして走る姿を、月徒の少年はぼんやりと眺めていた。


「……よく分からない子だったな。月徒を助けたりして……何の得も無い筈なのに」


 そうひとりごち、クーガは空を見上げる。とりあえず今日は帰ろう、怒られたくないから罠にかかった事は黙っておこう、などと考えつつ、背中の翼を広げる。


(――月徒だって、クーちゃんみたいにお話もできるのに)


「考えたこともなかったな、そんなこと」


 彼は子供で、人間と出逢った事は数少ない。だからこそ、大人ほど人間への敵意はまだ持っていなかった。敵だ、という知識があるだけだ。それでも、人間と月徒が普通に話せる、という事実すら忘れてしまっていた。


「またね、か。長老の木……来るときに見えた、一番大きな木の事かな」


 もしも気が向いたら、覗きに行ってみるのも良いかな。そんな事を思い、クーガは飛翔した。






 その日以来、クーガは週に一度ほど、レナに逢いに行くようになった。

 彼自身にも、どうして自分がそんな事をするのかはよく分からなかった。もし人間に見付かれば大変な事になるのは、よく理解していたのだから。


 だが、逢いに行った時のレナの笑顔と、別れ際の「またね」という言葉に、どうしてもまた逢いに行こうと言う気になってしまう。そのうち、クーガもそんな事は気にしないようになってきた。


 そして、二人が出逢って数ヶ月が過ぎた。







「えいっ!」


「甘いよ!」


 レナが振るった棒を、クーガは難なく受け止める。少し下がって挑発するように手招きすると、レナは頬を軽く膨らませた


「うう。じゃあ、これでどう!?」


 一気に距離を詰め、繰り出される鋭い突き。に見せかけ、途中で横薙ぎの一撃に変える。


「おっと。お返し!」


「あっ!」


 しかし、クーガはそのフェイントも軽く避けると、回し蹴りをレナの持つ棒に正確に叩き込んだ。へし折れた棒が、宙を舞う。

 折れた棒を呆然と眺めるレナに、少し申し訳なさを感じながらもクーガが言う。


「よし。今日はここまでかな」


「うー……今日こそはいけると思ったのに!」


「はは。まあ、オレと人間じゃ身体能力が違うから仕方ないよ。それにオレは男だし、女の子にはそうそう負けられないって」


「むー。それ、剣士としてひどい差別発言だよ」


「ああ、ごめんごめん。とりあえず飯にしようよ」


 笑ってごまかしながら荷物を漁るクーガに、レナは渋々といった様子で、一番眺めの良い場所に座り、自作のおにぎりを取り出す。


「……今日は崩れてはないね?」


「わ、私だって練習してるんだもん!」


「あはは。次はちゃんと綺麗な形になる練習かな?」


「クーちゃんの馬鹿ぁ……」


 彼女が自信満々に準備すると言った昼食が、原型を留めていないおにぎりだったのはいつのことか。今日はそこまでではなかったが、大きさも形もまばらでお世辞にも上手いとは言えない。

 さすがに女子としてはそこに突っ込まれるのは嫌らしく、レナは余計にむくれてしまう。とは言え、食事をとりながら適当に喋っていたらすぐ元に戻る事をクーガはよく知っていたが。


 ここは、山奥にある二人の秘密基地。最初こそ頂上付近で待ち合わせしていたものの、見付かるリスクを考えれば、もっと人通りの少ないところが良いと、二人で丁度良い場所を探し、見つけたのがここだ。

 この付近に人が入ってくる事は皆無であり、眺めも良い。先程のような模擬戦をやるのにも問題ないほどスペースもある、と、いろいろな点で絶好の場所である。


 二人が先程のような練習試合を始めたのは、出逢ってひと月頃の話である。山に一人で登る危険を指摘したクーガに、レナが実力を示す為に勝負を持ちかけたのが始まりだ。

 それ以来、まず最初は試合をするのが二人の習慣になっている。もっとも、クーガが負けた事はまだ一度もなかったが。


「でも、レナは本当に強いと思うよ。村の剣道場じゃ、けっこう良い線行ってるんだろ?」


「お父さんが師範だし、小さいころから習ってたからね……でも、こうも負け続きだと、自信無くしちゃうなあ。クーちゃんがこんなに強いとは思ってなかったよ」


「最初に逢った時は、あんまり強くなさそうとか言われたしな」


「……ひょっとして、根に持ってる?」


「いや、別に?」


 実際、全く気にしていないと言えば嘘になる。彼にも高位月徒として、と言うよりは、男としてのプライドがある。


「ふう。私、お父さんみたいな剣士になりたいんだけど……やっぱり、まだまだ遠いかな」


「レナって、お父さんが目標なんだ?」


「うん、そうだよ。何たってお父さんは、王都の武術大会で優勝した事だってあるんだから」


「へえ。それは凄いな」


 クーガは素直に感心する。人間の武術大会がどの位のレベルかは知らないが、少なくとも実力者なのは確かなのだろう。


「で、お母さんは凄腕の魔術師だったの。二人は幼なじみで、十年以上も一緒に武者修行をしてたんだって」


「ふうん。自慢の両親、ってとこ?」


「あはは、まあね。私まで無駄に期待されてて、少しプレッシャーだけど」


 軽く苦笑するレナ。何度も手合わせをして、彼女が年齢に見合わない実力なのはクーガにもよく分かっている。親譲りの才能か、と納得するが、それを口に出すと怒らせそうなので黙っておく。


「そう言えば、クーちゃんの親はどんな人……じゃなくて、どんな月徒なの?」


「……え、オレの?」


「うん。よく考えたら、聞いた事無かったよね?」


「……そうだね。オレの親も、凄いよ。君の親に負けないくらい、ね」


「へえ、そうなんだ。月徒っていろんなのがいるけど、やっぱりクーちゃんに似てるの? 会ってみたいなあ」


「はは……。多分、そんな事を言う人間は、君だけだろうな」


 クーガはいつものような苦笑を浮かべながら、一瞬だけ、どこか悲しげに目を細めていた。





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