表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
KotoSeka  作者: 吹雪龍
第4話
179/209

「炎の魔女は働き者!」01

*****



 成るべくして成った、と言うべきだろうか。この禍々しい“能力”を操る様は、きっとそのように見えたのだろう。魔法とも魔術とも魔導とも似つかないそれを称するには“能力”というのが相応しい、と自身が感じ取った。故に、そう呼んでいる。

 幼い頃から止め処なく溢れて来るこの“能力”。当初は何故自分にこのようなモノが、と悲観していたのだが数年程前からは考えるのを止める事にした。消え去る事が無いのなら、せめて使いこなしてやろう、と。

そうすれば、いつの日か――



*****


「うーむ……」


 昴は机に向かって唸っていた。彼の頭を悩ませているのは目の前に並べられている色とりどりの丸い物体。硬貨だ。形も大きさもばらばらのそれを睨みつけ、ひたすら唸る。

しかしただぶち撒けた、と言う訳でもなさそうだ。同じ柄の物を並べて、重ねて、なにやらその横に殴り書き。


「どうしたの?」


 そんな昴を見兼ねた同居人のカルムが歩み寄ってくるではないか。最近では昴の生活スタイルに合わせて部屋の中では靴を脱ぐようになっていた。最初は違和感があったようだが、慣れてくればこの方が良いとまで言うように。

彼もなかなかに適応力がある人間だ。


「どうもこうも……あのさ。俺、これ貧乏じゃね。金欠じゃね」


 そう、昴が悩んでいたのは手持ちの金銭事情。正確な価値が判断出来ない――日によって変わるという物だ――代物ではあるのだが、食事換算で大体の金額を計算しているのだ。

ここ数週間で学院内でも買い物が出来ると知った昴は時折そこに赴いて買い物の練習をしていた。勿論、物のやり取りには金銭が発生している故に手持ちは減る。解っていた事だ。


「帰りの買い食い最高」


「え?」


「なんでもない……で、よ? これじゃあまともに夜ふかし用お菓子も食えない訳じゃん? はっ!? 高いのか? これ外で買う方が安いのか!? そんな嘘だろお前……学校の中なんだからちょっとくらい安くしとけよ……」


「ちょっと落ち着いた方が……あ、これはその、何と言うか……仕送りとか、無いの……?」


 昴の手持ち金から何かを察したらしいカルム。落ち着くように言うのだがどうもその気配がない。確かにお金が無いと考えると非常によろしくない状況である。


「……あんのかな? 銀行はあるって商学で聞いたから……ああ口座。無いんじゃね? 聞いてくるか……」


 授業で金銭の流れについてを学んだ記憶はある。しかし、この世界のルールが昴に適用されているかと言えば。恐らく、されていないのだろう。これに関しては知っている人間に聞くのが一番だ。幸いにも今日は休日。


「スバルって……不思議だよね」


「俺からしてみりゃここの連中の方が不思議人間だわ」


「あはは。それもそう、なのかな?」


「あーもおーゆっくり休めるかと思ったのに……ちょっと出掛けてくるよ」


 制服の上着を羽織ると気怠そうに立ち上がる昴。どうやら行く宛があるようだ。


「うん。あ、そう言えば今日の夕食はお肉だったような」


「マジ? 早く帰ってこようそうしよう。じゃ行って来るぜ」


 何の肉かは知らないが、肉は美味い。元気が出る。だからなるべく食べたい。……昴の体も大分適応してきているようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ