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KotoSeka  作者: 吹雪龍
第3話
141/209

「人形の誇り」38

*****



「っー……いてぇ……」


 目覚めは最悪である。全身にある微妙な倦怠感に苛まれながら、恐らく肩の辺りが痛い。筋肉痛だろうか。昨日、帰ってきてからの記憶はほとんど無い。食事も摂っていないし風呂にも入っていないような気がする。気がする、という事は大体そうなのだ。もぞもぞとベッドから上半身を起こす。大きな欠伸をしながら首を回し、顰め面をしながら片目で周囲の確認。外はまだうっすら光が見える程度だ。


「くっそ何時かわかんねえんだよな……」


 時計という物が無い、否、時間や時計という物は存在しているのだが各部屋には置いていないだけなのだ。学院に取り付けられている巨大な物と、寮のエントランスにある物くらいしか見た記憶がない。そもそも十二時間表記だっただろうか。それすら朧気である。と言うのもこの世界では基本的には“鐘”でおおよその時間を把握しているらしく、わざわざ手元に置いてまで確認しないのが一般的らしい。時間に縛られて生きてきた昴からしてみれば傍迷惑な話だ。故に体内時計と打ち合わせをしてみるのだが如何せん時間の感覚が違う。合うはずがないのである。


「とりあえず……早朝。眠くは……無い、か」


 早朝、しかも日の出から間もない。感覚的には。つまり二度寝をしても問題はない時間なのだろう。しかしどうも嫌に頭が冴えている。それと汗をかいたような気が。


「風呂……入ろっと」


 ついでに顔も洗ってしまえば良い、そう思いながら脱衣所へ。ネクタイを投げ捨て、その他服も適当に。替えも何着かあるのだ。洗濯はまとめて行う。意外にも洗濯や掃除は自分で行うのがルールらしい。食事だけは配給なのだが。

 お湯を張ってから来るべきだったと後悔。パンツ一丁で洗面台の鏡に向かう。――我ながら――程好く筋肉の付いた体。最近は妙な事に酷使しているが随分頑張ってくれている。

授業のお陰でそこそこ、運動をしていた頃の体を取り戻せたような気もするし、引き締まったような気もしていた。筋トレをしなくても維持出来るのはこの世界の授業の良い所なのである。筆記の少ない戦闘学は数ある学科の中でも好きな方だ。


「だから人数も多いんだろうな……」


 他の学科が二科までなのに対し、戦闘学科だけは五科まであると聞いている。どれだけ血の気の多い連中だ、とも思うが就職先の安定度が軒並み高いらしいのだ。軍の兵や戦士、果ては町の警備隊などなど。引く手数多らしい。軍の兵と戦士の違いは昴には理解出来ていないようだったが、ともあれ凄いとの話は耳にしている。ここまで全て口伝なので全部が全部正しいとは限らないが。


「そういや今日出掛けるんだったか……うん、早起きして正解だったかもな」


 昴としては初めての外出である。学院の外は城からここまで来る際に見ただけでそれ以降はずっと学院の中だ。なので少々楽しみでもある。見た事無い物ばかりがあるのだろう、と思うと好奇心が湧いてくるのだ。


「……だから起きたのか、まったく」


 自分で言うのも恥ずかしいが、恐らくそれで目が覚めたのだ。そういう事もあるだろう。良しとしよう。


「さて風呂だ風呂。そろそろ溜まる頃だな」


 すっかり目も頭も体も起床。あとは飯を食えばいつでも行動可能だ。

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