「パラレルワールド!?」01
この世界には平行世界、別の言い方をするならば、パラレルワールドという概念を持つ人間が少なからず存在する。
更に砕いて言うと、今、自分が生きている世界とは似ても似つかない世界が存在するのではないか、という考えだ。それは幾多にも分岐し、それぞれの時間で『現在』を生きているのだ。
「……アホみたいだな。何で大の大人がマンガやアニメみたいな事を平然と、いや、熱心に語れるのか……俺には到底理解出来ん」
読んでいた本を乱暴に閉じ、窓の外に広がる空を見上げる少年。
彼が今居る場所は図書館らしい。周りに居る人々は皆、勉強中であり、少年の目の前にも紙が数枚置かれていた。ちなみに、白紙である。
「何で読者感想文なんてのがあるんだろうな? だがしかし。先にやっておかないと後からどうせやらないし……よし。とりあえず書こう」
ぶつぶつと独り言を飛ばしながらページを捲る。とりあえず、と挿し絵があったところから読み始めた。挿し絵には図が用いられており、パラレルワールドと現在居る世界の位置的関係などと銘を打っている。
「そっか。感想文、だもんな。自分の思ったことを素直に書きゃいいんだ……ええと、読者感想文。二年六組、諸星 昴っと」
ようやく読者感想文の書き方を思い出したのか、つらつらと自分の思っていることを文章にしていく。とは言ったものの、思ったことだけを書いていたら二・三行程度で終わってしまった。
「んー……こういうのはダメだな。まずは、アレだ。始業式終わってすぐに感想文って何だ? 訳が分からない! ……っとスミマセン」
なかなか進まない宿題にイライラが募り、つい声を大にしてしまう。謝ったが。謝れば良いというものでもないというのは当然のマナーだ。
「この空気には耐えられない……帰ってやろ」
勉強道具一式をカバンに雑に詰め込み、本を持ってカウンターへ向かう昴。
「あのーこれ借りたいんですが」
「ハイ。では、こちらのカードにお名前の記入をお願いします」
受け付けのお姉さんから渡された貸出カードに名前を記入し、借りたペンはペン先を自分側にして返す。妙なところで礼儀正しい。ただのマナーの話ではあるのだろうが。
「返却期限は二週間後となっておりますので、忘れずに」
軽く会釈して図書館を後にした。