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祭りのその時

作者: ウニセフ

 「おーす、調子はどうだ~」


 「まぁぼちぼちなんじゃね?」


接客をしている俺に、声をかけてくる幼馴染。

今日は文化祭二日目。俺のクラスではフランクフルトとジュースを売っている。

昨日は学生だけだったが、今日は一般公開されていて客のはいりがいい。


 「お前いつから休憩?」


 「昨日はフルではいってたから、今日は12時まで。昼からフリーだわ。お前はいつだっけ?」


 「午後の3番目1時半から」


こいつのクラスでは、創作ダンスをする。

昨日もあったのだが、見れていない。今日は見に行く予定だ。


 「ひよりちゃんたち、何時にくるって?」


 「さぁ~?俺のダンス絶対見てくれって頼んどいたから、昼にはくるんじゃね?」


幼馴染がナンパして知り合った気の強い女の子のあさみちゃんと、俺のもろタイプの女の子ひよりちゃんが来てくれるらしい。

フリーマーケットであった時に、文化祭の話になり、興味を持ったひよりちゃんの説得により、しぶしぶあさみちゃんが同行するという感じ。

その時に、ひよりちゃんとあさみちゃんの連絡先を入手した。幼馴染が頼み、俺もその流れに乗っかった。

ナンパで初めて会ったときは、断られたのだが。いわく、お茶に誘われてそれには同意したが、連絡先を教えることはまた別の話だと。

ちなみに、幼馴染とあさみちゃんはぽつぽつとやり取りをしているらしいのだが、進展はない模様。俺もまたしかり。



12時になり、仕事終えた俺は、幼馴染とふらふらとほかのクラスの出し物を見ながら食べ歩きして、時間をつぶす。

腹ごしらえも済み、学校入り口近くのベンチで休んでいると、幼馴染の携帯が鳴る。


 「お!あさみちゃん達今ついたって!」


携帯を見てそう言う幼馴染。その言葉に校門のほうを見ると。ひよりちゃんとあさみちゃんが来るのが見えた。


 「ようこそ!わが学校の文化祭へ!」


 「別にあんただけの文化祭じゃないでしょ」


 「結構人多いんだね~」


 「今日は一般公開だからね。日曜日だからってのも理由かな」


幼馴染の言葉に突っ込みを入れるあさみちゃん。思った以上に人が多いことに驚くひよりちゃんに、説明するおれ。


 「2人は昼飯食べてきたのか?」


 「軽くね」


 「せっかくだし、出店のやつ食べようっていってたの」


 「でわでわ、こいつの出店へお招きいたします」



そういって先導する幼馴染。きょろきょろとしながら、ついていく2人。俺はその後ろを歩いてく。


 「まぁ、普通かな」


 「こう食べ歩きって、なんでもおいしく感じちゃうよね~」



フランクフルトを食べて感想をもらす二人。

別段良くも悪くもない、いたって普通の味。でも、その場の雰囲気というか、キャンプで食うカレーみたいに味補正がされるのか。なんとなくおいしく感じる謎。なんでだろうね?


 「お前そろそろ出番じゃね?」


 「おぉ!じゃあいってくるわ!みんなあとでね~」


そういって、体育館へ走っていく。


 「俺たちも、体育館いこうか?」


 「そうだね」


 「うん!」



体育館の中は生徒と一般客とでなかなか混んでいた。

ステージの上では、有志のバンドが演奏している。


 「あーゆうのって憧れるよね~」


とひよりちゃん


 「まぁ、かっこよくみえるよな」


と俺。

中学の時には漫画を読んだ影響で、父親のギターで練習したことがあった。確か1か月はしてたはず。俺も幼馴染のこと笑えないな。あはは・・・


 「あさみちゃんも去年の文化祭でバンドやってたけど、めちゃめちゃかっこよかったよ!」


 「へー、そうなんだ」


ちらっとあさみちゃんのほうを見ると、なぜかげんなりしている。


 「そのあと、男子からも女子からもモテて大変だったみたいだけど」


と苦笑いを浮かべてるひよりちゃん。

なるほど、と納得する俺。

見た目美人のあさみちゃんはもともと男子にモテてるだろう。そして、バンドでステージに立ったあさみちゃんはさぞかっこよかったのだろう。持ち前のクールビューティーも相まって男子も女子も虜にしてしまったということだろうな。


 「そろそろ始まるな」


バンドが終わって、少しの間が空き。いよいよ幼馴染のダンスだ。

曲は某ダンス&ボーカルユニットの曲でなかなかのアップテンポだ。


 「2年A組のダンスです」


アナウンスがあり曲がかかる。


団長による、厳しい練習の成果か、クラスの一糸乱れぬダンスに目を奪われる。

幼馴染はセンターで踊ってる。ダンスのセンスがなかなかあるらしく、動作の一つ一つに切れがあるように思う。センターを任されるだけのことはあるようだ。


 「健司くん目立ってるね~」


 「めっちゃダンスの練習してたみたいだからね。普段はあんなだが、根は真面目なんだよ」


人一倍目立ってる健司を見て、そう話すひよりちゃん。

普段ちゃらけてるが授業も真面目に受けるし、部活も練習はちゃんとこなすやつだ。

たまに言動がぶっ飛んでる時もあるが・・・


 「ふーん」


興味なさそうな返事をするあさみちゃんだが、視線はダンスにくぎ付けになっている。

時間は短いが激しいダンスで、相当体力を使うのだろう。健司の笑顔に汗が光る。

最後に健司が大技を決めダンスが終わる。観客から盛大な拍手がおこる。

なかなかかっこいいじゃないか。



ステージはすぐに次のクラスの準備に入る。


 「俺のダンスどうだった?」


ステージから降りてきた健司が、おれたちを見つけ寄ってくる。


 「めっちゃ目立ってたね~」


 「意外にうまかったじゃん」


とひよりちゃんとあさみちゃんが応える。


 「もしかして俺に惚れちゃった?いや~困るな~」


 「ばっ、あんたばかじゃない!」


健司の言葉に、動揺しながら否定するあさみちゃん。

そんな反応したらダメだよ。もっとゴミを見るような目で、冷たく言わないと!

心の中でダメ出しをする俺。

案の定、その反応を見た健司がにやにやする。


 「あさみちゃんまじかわうぃー!ぜひ俺と一緒にシャルウィーダンス!」


 「はぁ?何言ってんの?まじきもいんだけど」


と今度は心から否定する。

そんなやりとりをしながら、体育館を出る。

次どこ行こうか話してると


 「あれ?あさみじゃね?」


呼び捨て?だれだ?

その声に反応し俺たちが振り返る。

見た目茶髪でジャラジャラと腰からチェーンを垂らしてる。いかにもチャラそうな男が立っていた。そばには、俺たちの学校の制服を着てる女子が立っている。


 「やっぱりな。この学校にあさみの彼氏でもいんの?ってかそいつが彼氏?」


俺を指さしながら聞いてくる。

なんだこいつ初対面でそいつ呼ばわりかよ。関わりたくないタイプだわ~。

てか、こいつの交友関係は彼氏彼女しか成り立たないのかよ。

俺の心の警戒レベルをマックスにしていると


 「あんたに関係ないでしょ!」


あさみちゃんが睨みながら吐き捨てる。


 「まぁそうだな。ただの元カレだってだけだよな?」


とにやにやしながら俺を見る。

その言葉にあさみちゃんは顔を伏せる。ひよりちゃんは心配そうな顔であさみちゃんを見ている。


 「そうそう、関係ないね~。今は祭りの最中だし、楽しまなきゃ損でしょ?だからさっさとどっかいけよ」


幼馴染が笑いながらそう声をかける。最初はおどけたような調子だったが、最後には威圧的にそういった。

男は幼馴染をにらみつけたあと、肩をすくめながらこたえる。


 「別に喧嘩しようってわけじゃねえ。大したもんもねえし、さっさとでてくよ。んじゃな」


と出口のほうへ女子を連れて向っていく。

俺はその後姿をただみてるだけだ。

だれもしゃべらない、気まずい沈黙が流れる。


 「ごめん、帰るわ」


俯いたまま、あさみちゃんがぽつりとこぼす。言ったと同時に足早にでていく。


 「あさみちゃん!・・・ごめん、またこんどね」


あさみちゃんを追いかけていくひよりちゃん。

返事することもできず、幼馴染のほうを見る。

文化祭も残り数時間で終わるが、まだ人の音はがやがやとやかましい。

俺たちはつったったまま、ただただ時間が流れていく。


 「なんだってんだ、バカヤロウ」


つぶやくように発せられたその言葉は、やけにはっきりと聞こえた。


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