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1ー2

 レキアントは様々な攻撃を使う。共通するのは、発動する前にあの円が現れることだ。あの円から、攻撃のタイミングや方向をある程度予測することは出来たが、威力が凄まじく、避けるだけで精一杯だった。あの炎が数発当たっただけで、ビルが倒壊している。

 あの円は何なのだろうか?

 あの円は、レッド達能力者の能力より、遥かに優れていた。

 レッド達の能力は、一人に付き一つまで。レッドは物を動かす能力のみ、ピンクは通話能力のみといった風に、能力の威力に個人差はあるものの、複数の力を使うことは出来ない。

 レキアントはあの円で、防御と攻撃の二種類をこなしていた。さらに、攻撃には炎、氷、水の三種類が使われていることが、今までの調査で判明している。能力ではなく、レキアントが何かの武器を使っていたとしても、その武器を作れるような技術力は、世界中のどこを探しても存在しない。

 レキアントはいったい何者なのか?

 レッドは瓦礫による攻撃を再開した。その間にも必死に考える。

 どうすればレキアントに勝てる?

 瓦礫の連続攻撃は、レキアントを防戦一方にするぐらいには効果があった。レキアントは攻撃と防御の円を同時に使用することは出来ないようで、レッドが攻撃している間は緑色の円だけを出し続けている。

 ならば、複数個所による同時攻撃が望ましいのではないだろうか?

 その考えに至ったレッドは、攻撃の手を一旦止め、レキアントが浮かぶ場所の下方に手を向けて、能力を発動した。

 ここまでの数は操作したことがないが、やってみるしかない。

 地上から、レキアントを囲むように瓦礫が浮かび上がってくる。それに気付いたレキアントが、躱そうと空を飛び回るが、すでに遅い。レッドもレキアントに合わせて瓦礫を飛ばす。

 どんなに動き回っても付きまとう瓦礫に諦めたのか、レキアントが飛び回るのを止めた。

「今だ!」

 レッドはレキアントに向けて、開いていた手をグッと握りしめた。瓦礫がそれに連動し、レキアントを中心として集まり、ぶつかりあう。

 レキアントがいた場所には、人間より二回りも大きな瓦礫の塊が出来上がっていた。

 レッドは手を握ったまま、レキアントの様子を窺った。瓦礫の塊は動こうとしない。レッドが手を閉じたままの今は、瓦礫が中心に向かい続ける。中心にいるレキアントには、かなりの圧力がかかっているはずだ。

 動かなかった瓦礫の塊が、急にブルリと震える。レッドは手を動かしていない。瓦礫の塊が、レッドの意思とは関係なく、動いているのだ。

「くっ」

 レッドは握る手に、さらに力を込めるが、震えは止まらない。瓦礫の塊が一段と大きく震え、急に動きを止めた。

「……何だ?」

 瓦礫の隙間から、緑色の光が一筋漏れる。

「これは……!」

 レキアントが防御の時に放っていた光だと、気が付いた時には遅かった。瓦礫の塊の隙間から、緑色の光が四方に放たれ、瓦礫が勢いよく四散する。

 レッドはとっさに腕で顔をかばった。

 四散した瓦礫が、レッドの場所にまで届き、レッドの身体へ強烈に当たる。

 瓦礫の散弾が治まり、レッドは腕を下ろしてレキアントを見た。

「そんな……」

 レッドはゾッとした。

 レキアントの頭上には、今までのとは比べものにならないほどの、大きな赤い円が出来上がっていた。二重の円とその内側を走る細い文字。円が赤い光を放つ。

 避けられない。

 レッドは直感した。

 赤い円から炎が立ち昇る。人間の倍ほどはあろうかという巨大な炎だった。それが、レッドに向かって飛んでくる。

 避けられないのなら、止めるしかない。

 レッドは炎に向けて手をかざす。力を込めて、炎に能力を発動した。

 一か八かだった。

 炎だって物質の一つだ。

 ならば、能力で動かすことも出来るのではないか。

 レッドは自分の能力に賭けた。

「止まれっ」

 炎がレッドの直前でピタリと止まる。熱気で身体をあぶられ、レッドの額からドッと汗が噴き出た。眼球を焼かれるような熱さに、レッドは目をすがめる。熱さで息も吸えない。

 レッドの能力は、レキアントの炎に影響を与えていた。

 レッドは能力で炎を押し返す。ゆっくりとだが、炎はレキアントの方に戻りだした。

 汗がレッドの頬を伝う。

 足場と炎に能力を使っているせいで、レッドの両手はふさがり、流れ出る汗を拭うことが出来ない。しかし、そんなことに構っている場合ではなかった。

 この炎を完璧に操ることが出来れば、レキアントとの戦いに勝機が見える。この戦いによる犠牲を、もう出さずにすむのだ。

「ぐっ」

 手に血管が浮き上がるほど力を込め、レッドはジリジリと下がる炎を見据える。炎がゆらりと大きく揺れ、炎ごしにレキアントの姿が見えた。レキアントも足を踏ん張り、両手を前に突き出している。この炎は今、レッドとレキアントの力の間で揺れているのだ。

 炎を半分辺りまで押し返すと、炎が下がらなくなった。力が拮抗しているのか、これ以上レキアントに反撃することが叶わない。

 あと少し。

 あと少しの力が俺にあれば。

 動かない炎が、お前は何も守ることが出来ないのだと言っているようで。

 レッドは炎を見ながら歯噛みした。

「俺は……」

 炎がゆっくりとレッドに向けて進み出した。

「嫌だ……」

 力が足りないのか。

 どんなにレッドが力を込めても、炎は止まらない。

 想いが足りないのか。

 守りたいのに。

 こんなに守りたいと思っているのに。

 守れない。

 そんなのは……。

 もう……。

「嫌だあああぁぁっっっ」

 炎が激しく揺れ動く。天を焦がすかのように炎が噴き上がった。そして、炎の中央に黒い穴が開く。

 手の平ほどの黒い穴。

 それが、大きくなるにつれ、レッドの身体が引っ張られていく。

「な、何だ?」

 レッドが足場の力を高め反発するが、穴への引力の方が強く、止まらない。

 このままでは、炎の中に突っ込むことになるとレッドは焦るが、抵抗空しくますます炎に近付いていく。

 しかし、炎にレッドが突っ込む前に、黒い穴はさらに大きく広がり、炎を全て飲み込んだ。

 黒い穴だけが残り、レッドはそこに引き込まれる。

 レッドは消えた炎に使っていた分の力を全て足場に注ぎ込む。黒い穴に引かれるスピードは若干遅くなったが、止まったわけではない。

 ゆっくりと確実に引き込まれていく。

 いったい何が起こっているのか。

 レッドには分からなかった。

 レキアントの何かの能力かとレッドがレキアントを見ると、レキアントの身体も黒い穴に近付いていた。その表情は焦っているように見える。どうやらレキアントにとっても異常事態のようだ。

 足場を黒い穴に向け、さらにレッドは抵抗しようとした。が、その足場に亀裂が走った。レッドの能力と黒い穴からの引き合いに、瓦礫が耐え切れなくなったのだ。

 足場が真っ二つに割れ、レッドは自分を支える場所を失った。

 レッドの身体が黒い穴に向け、急激に引っ張られる。穴との間に、抵抗できるような障壁は存在しない。

 レッドはレキアントより先に、黒い穴の中に吸いこまれていった。

 黒い穴はレッドを飲み込んで満足したのか、収縮し、あっという間に消えてしまった。

 そして、黒い穴が消えたそばには、レキアントのみが残された。


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