夢じゃない
ゆっくりと瞼を上げる
仰向けになっている俺の目に映るのはいつも通り天井に貼られたポスター…ではなく、木の天井だった
「知らない天井だ」
とりあえずそう呟き昨日のことを思い返す
…夢じゃなかった…
まだ怠い体を起こしてカバンに手を入れる
やはり慣れないこの感じ…そして出した手には拳銃
昨日取り出したコルト・デルタエリートだ
「異世界かぁ…」
ため息混じりに呟く
そりゃ異世界に来たんだからいろいろと楽しいことや地球では無かったことがたくさんあるだろう
だが、それと同等かそれ以上の不安が俺を襲う
食べ物には困らずに生きれるだろうか、言語は通じるだろうか、文化の違いで生活に困らないだろうか…挙げていくとキリがない
さらに、ここは平和ボケした日本じゃない
もしかしたら何かに巻き込まれて簡単に死ぬかもしれない
ヘタレ勇者のように殺すのに躊躇い…なんて甘ったれたことは言うつもりはないが、やはり命は惜しいものだ
そう考えていると、だんだんと不安が大きくなる…
「…だめだだめだ!せっかくの異世界なんだ!」
うじうじ考えるのはやめよう!
そうと決まれば…
ぐぅ〜…
腹の虫が鳴き声をあげる
携帯の時計機能もイかれてるので、何時かはわからないが、明るさ的にちょうど昼頃だろうか?
…ちょうどいい
そろそろ銃も撃ってみたかったし、食料確保も兼ねて魔物討伐にでも行くか
ま、まず魔物が存在するかどうかすらわかってないんだがな
そう言って新たなモノを取り出そうとカバンに手を入れる
相手がどんなものかわからない以上十分な対策は必須となるだろうとパジャマを脱ぎ捨てて迷彩服やボディアーマーなどを着込む
これで拳銃弾程度までなら大丈夫だろう
あとは武器だ
デルタエリートはホルスターに入れ、マガジンをマガジンポーチに入れる
マガジンは全弾装填された状態で取り出せるからかなり便利である
メインは…ブッシュマスターACRにしよう
6.8mm弾を使用するタイプで装弾数は28発、BFやCODでもお馴染みの武器である
最後にグレネードをポーチにツッコミ、完成である
家の備え付けの鏡で自分の姿を確認する
その姿はどう見てもPMCの兵士である
ニヤける顔を抑えながらカバンを肩にかける
…多少邪魔になるだろうが、これが無ければ俺は生きていける自信がない
この取り出す能力の特徴として、俺の体から1分ほど離れたモノは自動的にカバンの中に戻る
家が消えた後、樹海にこれだけを置くわけにもいかない
俺は最後にもう一度装備を点検してから、家の扉を開けた
そこには一匹のイノシシがいた