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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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国を滅ぼす悪役令嬢

悪役令嬢の腐女子活動

作者: ぺいた
掲載日:2026/03/23

国を滅ぼす悪役令嬢シリーズ

https://ncode.syosetu.com/s1799k/


の3話目です。順番に読んでいただけるとうれしいです。


5話分をまとめた連載版も投稿しました。

「国を滅ぼす悪役令嬢」

https://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/3109341/

あれっここは…。


目の前にはジェーン侯爵令嬢、平和な室内。


「マチルダ様は、貴重な聖魔法の使い手だから、国王陛下も丁重に取り図るようにおっしゃってましたし、殿下はそのお言葉に忠実に従っているだけだと思いますわ」


そして聞き覚えのあるセリフ。 

もしやと思い、2回言ったことのあるセリフをもう1度口にしてみる。


「そ、それにしたって…、あの、こう毎日というのは、図々しくはないですかしら? 少しは遠慮してもよくはございません?」


「でしたら、わたくしがマチルダ様に『少しは遠慮なさい』と忠告してまいりましょうか」


やっぱり! 同じセリフだ! また時間が巻き戻ったんだ!

2回目だもんね、すぐに適応できちゃうわよ、ほほほ。


「それはいけませんわ、断罪ですから」


「?」


ちょっとはしょりすぎたけどまあいいや。


「あっいえ、お気持ちは嬉しいですけれど、ジェーン様のお手を煩わすことではありませんわ」

と言って優雅に微笑んでみせた。


ここは王立学園の中のティーサロン。

私は公爵家のクラウディア、王太子のアラン様と婚約している。

しかし聖女として転入してきたマチルダ男爵令嬢と、アラン様がいつも一緒なので、やきもきしている状態である。


そして私は、日本で生まれ育ち、この世界に転生してきた者であり、この世界のことは「日本で遊んだゲームの知識」として持っているので、マチルダ聖女にはとても嫉妬してるけど、感情のまま文句を言ってはいけないことがわかってる、文句を言ったら「神聖なる聖女をいじめた」と断罪されて、追放されてしまうのだ。


だから、私の数少ないお友達であるジェーンに、毎日愚痴るだけにとどめておいたのに、国を滅ぼしてしまった。


でも時間が巻き戻ったので、「今度は煩悩を運動で発散させよう」としたのに、また国を滅ぼしてしまった。


これはもしかすると、国を滅ぼさない展開になるまで、巻き戻しが続くのかもしれない。


さすがに3回目だから慎重にいこう。要点を整理する。

私はとにかく、親しげなアラン様とマチルダ様を見るのがつらい。

この気持ちをどうにかしたい。


つまり、アラン様のことばっかり考えてるからいけないのよね。

なんか他に熱中できることを探すのが一番な気がする。


おいしいものの食べ歩きは…太りそうだし…

やっぱ趣味とか…


趣味、乙女ゲームだったからなあ。あとはマンガを読むくらいで…どっちもこの世界にはないからどうしようかな…。


「そういえば、ちょっと見ていただいてもいいかしら?」


無言で考え事をしていた私に、ジェーンが羊皮紙を差し出した。

そこには男性の絵姿が描かれており…


「これは…エドガー様!?」


エドガー様は侯爵家の嫡男であり、ジェーンの婚約者だ。

アラン様とも親しい。


「うふふ、実は、しばらく彼とお会いする機会がなかったので、寂しくなって面影を絵にしてみたんですの。そしたらけっこう上手に描けた気がしたので、クラウディア様にも見ていただきたくなってしまって…」

と、ぽっと顔を赤らめた。


「けっこう上手、とかのレベルじゃないですわ…」


私は、姿絵のイケメンっぷりに悶絶していた。


ジェーンは、神絵師だった。

SNSにあげたら、すぐに数万いいねがつく、たぶん!

エドガーは、もともと見目麗しい方だけれど、これだけ単純化された線で、光り輝くようなイケメンを描くなんて、まさに神業!


「ジェ、ジェーン様…あの、あの、もしよろしかったら、アラン様を描いてみてはいただけませんか…?」


「え? アラン様? わたくしのつたない絵でよければ…」


大急ぎで侍女に筆記用具を取りにいかせ、「お願いします」とジェーンに渡す。


「あっ、できればナナメ右の、ちょい下向きの顔がいいです!」


「ナナメ右のちょい下向き…」

ジェーンはあごに指をあてて少し考えたあと、さらさらと

アラン様を描いてくださった。


「え! こんなに速く!?」と驚いた私は、絵を見てさらに

驚愕した。


尊い…!


美しすぎる…!


畏れ多くて目がつぶれそうな神絵…!


そしてさっきの、ナナメ左上向きのエドガー様の絵姿をテーブルに並べてみると、まるで見つめあってるように…!!


尊死…!


妄想が、妄想がふくらむ! 

アラン様とエドガー様、おふたりの危険な関係…!! 

きゃーっ! いかがわしいわ! 素敵! 


あまりのお宝絵に、何も言えず口を半開きにして震える私。


「あ、あの…お気に召しませんでした?」

ジェーンが不安そうに聞く。


「めっそうもありません!」

私は、がばちょと音が聞こえるほどの勢いで振り向き、ジェーンの手を握りしめ、お礼を言った。

「神の手!この手は神の手です!こんな絵を見せていただけたら、わたくしの人生に一片の悔いなしですわ!」


「そ、そんなに喜んでいただけて、こ、光栄ですわ…」

ジェーンはドン引きしてる様子。


なぜだ。この麗しい2人の絵を見て、なぜ妄想を爆発させないのだ。

私は、こう、不謹慎でハレンチな妄想を語り合いたいのに…!

なんとか、仲間になってくれないだろうか…。


「ジェーン様…」


「はい、なんでしょう?」


「このおふたりが、手を握り合っている姿を想像してみてください」


「手? え? 握手ってことですか?」


普通そう思うよね。でも、思い切って踏み込んでみる。


「違います。恋人同士がするような手つなぎです」


「え??」


「ジェーン様。わたくしは、いけない妄想をしてしまうのです。もしも、この見目麗しいおふたりが、実は好きあっていたら、と」


「えええ? 男性同士ですわよ?」


「だからこそです! 身分違いの悲恋はよくあることですが、性別による禁断の恋をしていたら! ほらほらこの2人の絵姿を見てください。お互い想いあっているのに言えない、そんな雰囲気を感じませんか!?」


「そ、そんな、ありえません、エドガー様は…」


「そうですありえません。だからこその妄想。もしもの世界です! 非現実的だからこそ、フィクションとして楽しめるんですよ。どうですか、この2人が、秘めた愛を持っていること想像したら! ドキドキしませんか?!」


私は2人の姿絵を両手に持ち、ジェーンの目の前に広げた。

そして少しずつ紙を重ねあわせる。


「わ、わ、まるで今にも口づけをしそうですわ!」


「その調子です! さあもっとよく見て、ドキドキしませんか?!」


「し、します! どきんどきんしますううう!!!」



同志ゲットできた。


いけると思ったんだ。

中世ヨーロッパなら、こんな思想は処刑されそうだけど、ここは乙女ゲームの世界だもんね。

BL要素も必須なはずだもんね。


この妄想は素晴らしい。

私にとってのアラン様は、さっきまで「つれない婚約者」だった。でも今は「尊い推し」である。

自分が愛されなくてもいい、ただ物陰から応援したい。


聖女マチルダと一緒にいても、嫉妬する必要がない。

嫉妬するとしたらエドガーにだけど、応援してるからそれもない。


「ねえジェーン様、わたくしがお話を作るから、挿絵を描いていただけません? 2人で、イケナイ絵本を作りましょうよ」


「イケナイ絵本…! それは、ワクワクしますね…!」


「ですわよね! さっそくわたくし、お話を書いてきますわ!」


めっちゃ楽しくなってきた! お話を書いたことはないけど、好きだったBLマンガのあらすじを書くだけなので楽ちんだ。

転生してるんだから、パクリがばれることはないよね。


王太子とか個人が特定されると困るので、似顔にはせずに、とにかくイケメンがたくさん出てきて、優しめの、切なさ満載、手を触れあえたことがなにより幸せで涙するような、清らかな恋。

全年齢対象だとこんなもんよね。


そして、ジェーンにすんばらしい挿絵を描いてもらって、「ソフトBL絵本」が完成した。


「できましたわーーーー!」

「やりましたわーー!」


2人で手を取り合って完成を喜び合い、2人で一緒に読んでキャッキャした。

楽しい。楽しすぎる。


「このドキドキは、ぜひ他の皆様とも共有したいですわ」


ジェーンが恐ろしいことを言い出した。


「大量に制作して、市場に出しましょう。きっと世の乙女たちに喜んでいただけますわ!」


私もそれは考えた。みんなでキャッキャしたほうが楽しいに決まってる。


でも…、この世界の紙は羊皮紙なのだ。

羊の皮でできているのだ。大量に作るとなると、大量の羊の皮が必要になってしまうということだ。

そうすると、その後の展開が予想できてしまうのだ。


◇◇◇


羊は神に祈った。


神様、今日も同胞が殺されました。

食料にするためならまだしも、腐れた本を作るためにです!

自分たちの命を何だと思っているのでしょう!

どうか人間に復讐する力をください!


◇◇◇


ってなるに決まってる! そして神は、人間以外の祈りには、けっこう応えてくれるのだ。

3回目だから知ってる。


だから、絶対、羊の復讐で国が滅ぶ。

そう思うと大量生産には踏み切れない。


あれ? だいたい、大量生産するような印刷技術もないよね?

この時代って、書き写すことしかできないんじゃなかったっけ?


「でも、大量に書き写すのは大変でしょう?」


よし、こっち方向で、大量生産はやんわり反対しよう。


「あら嫌ですわ、複製スキルがあるじゃありませんか」


複製スキル??


ジェーンは絵本と同じくらいの重さの羊皮紙をテーブルに置いて

「なんじゃらもんじゃらげ~」と唱えた。

すると…


羊皮紙の束が絵本に変わり、絵本が2冊に増えた!!


こんなことできたんだ…。さすがだ魔法のある世界。

やだどうしよう。紙さえあればできちゃうじゃん。


「あの、でも、紙を作るために、羊が処分されるのがその、かわいそうというか…」


なんとか羊の復讐は避けたいから、もごもごと抵抗する。


「羊が? 処分? どうして?」


「いや、どうしてって…これ、羊皮紙ですわよね?」


「もう、いやですわクラウディア様ったら、どうなさったの? 羊皮紙が羊から作られてるわけじゃないことくらい、子供でも知っておりますわよ」


えっ! そうなの?


「羊皮紙を模してるから羊皮紙と呼んでますけど、これは廃材を錬成したものですわ。わたくしには錬成スキルはないので、自分で作ることはできませんけど…」


え!!!


「そ、それじゃあ、大量生産しても、羊は犠牲にはならない?」


「もちろんです」


やったああああ! ビバ! ご都合主義!

それなら大量生産しても大丈夫だよね??

みんなで腐沼にハマってキャッキャできるってことだよね!?


「作りましょう! いっぱい作って腐教しましょう!」

「ええ!」


私とジェーンは手を取り合って、大量生産と販売を決めた。


その絵本は大評判となり、国中の女子が買い求めた。 


しかし、BLに免疫のない女子が、いきなり神絵の絵本を見たせいか、大量の鼻血を噴く者が続出した。

それは聖女マチルダも例外ではなく、盛大に鼻血を噴いた。


聖女の血は魔物を引き寄せる。

そして血の匂いで集まってきた大量の魔物に襲われ、

この国は滅ばされてしまったのであった。

どうやって滅ぼすかを考えるのは楽しかったです。

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― 新着の感想 ―
ぺいた様 いつも楽しいお話をありがとうございます。 ただひとつ気になることが まっとうな腐女子からすると「布教」は「腐教」です、 腐女子のお作法とでも思っていただければ。
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