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18.謝罪、そして約束

「実は例年優勝者の方は我らがお送りすることになってるんです。何分にも街中の有名人ですから、、。それに大金を持ってると勘違いして狙ってくる輩もおりますから」


はあなるほど、たしかにこのまま街を通って帰ったらえらいことになりそうだ。あんまり街で目立っても良いことなさそうだし正直これは助かる。


「分かりました。ではお言葉に甘えてお願いします」


「はい、では後ほど馬車をご用意しますのでもう少々お待ちください」

彼はそう言うとサッとお辞儀をして走り去って行った。


「あら、随分と良い待遇なのね」

リアが片目を瞑ってそう言った時だった。


「すみません!すみません!」


「困ります!この先は関係者以外立ち入り禁止ですから!」


「でも!どうしても謝りたいんです!」

関係者しか入れないこのステージ裏の出入口で何やら揉めている声が聞こえてくる。


声のする方を見ると会場の出口に向かっていく人々の流れとは逆にこちらに向かって何やらスタッフと話している人がいる。


「あれって、、」


「ちんちくりんじゃない」

リアが腕も組んで言い放つ。このお姫様まだちんちくりんとか言ってる、、。するとあっちもこっちに気付いたのか目が合うや否や叫んでくる。


「あ!キョースケさん!どうしても僕謝りたいんです!」


出入口のスタッフも困ったようにこちらに視線を向けてくる。まあ時間もあるしあれだけ必死だと断る気にもなれない。俺がスタッフに向かって黙ってうなずくとスタッフは道を開けて彼を通す。彼は俺たちのところへ走ってきて直立する。


髪はくるくるの天然パーマで丸眼鏡、年齢はまだ高校生に行くか行かないかそれくらいだろうか可愛らしい顔おかげで子供っぽく見える。


そう、この人物こそが予選で俺たちにとんでもない魔法をぶち込んだ張本人、ロイだ。さっきは遠目で分からなかったが随分と若いんだな。


「あの、、さっきは!ほんとうに申し訳ありませんでした!」

ガンッッッッ!


えっ、、

なんとびっくり突然彼はそこに座り込み頭を地面に打ち付けて土下座した。


「そ、、そんな、、まあ俺たちも無事だったし」


「いえ!それでも命を危険にさらしたのは事実です!決して許されることではありません」

彼が土下座の格好のまま首を上げて俺の方へ叫び再び頭を下げる。すると横で見ていたリアがさっと一歩前に出る。


「あなた、あれほどの魔法を使えるのだからその魔法が命に関わることくらい分かったはずよね?どうして使ってしまったの?」

少しの怒りをはらんでいる気はするが諭すような落ち着いた声でリアが問いかける。


「あの、、元々どうしてもこの大会で勝ちたい事情があって、、でもそしたらキョースケさんがもの凄い速さで前を走って行くから動揺してしまって、、それで僕が使える魔法であの距離まで届くのはあの魔法しかなくて咄嗟に、、打った後にとんでもないことをしてしまったと気付きました。でも!こんなのが人の命を危険にさらして良い理由にならないのは分かっています!どんな罰でも受け入れます!」


どうやらわざとやった訳ではないらしい、彼の振る舞いと両目からあふれ出いる涙を見ていれば分かる。それに靴と足の裾はひどくぼろぼろで顔もなんだか疲れて切っている、もしかしたらあれから俺たちのことをずっと探し続けていたのかもしれない。


「別に罰を与えたりするつもりはないよ。もう頭を上げてくれ」


彼は頭をゆっくりと上げるがその目からは涙があふれ続けている。


「ちなみにどうしても勝ちたかった事情ってのを聞いて良いか?」


「はい。僕はこの国の西にある小さい町の孤児院の出身なんです。その孤児院が厳しい経営難に陥っていて、、このままだと辞めざる終えない状況だと、、それで賞金があればと思って、、」


「そうか、、それは大変だったな」


たしかにそれは負けられない状況だったのかも知れないけど悪いがそれは俺たちも同じだった。決して彼を負かしたことを申し訳ないとは思わない。


「ところであなたいくつなの?」

しばらく黙っていたリアが再び口を開く。口調はさっきよりも幾分か柔らかく聞こえる。


「15、、です」


「15歳、、その若さであれだけの魔法を使えるなんて大したものね、、それで、、どうするの?」

リアが俺の方に目線と共に話を振ってくる。たしかにここは当事者である俺が落としどころを与えるべきなのだろう。


「うーーん」

少しだけ考える仕草をつくり思考を巡らせる。まあ今特別欲しい物とかもないしここは穏便に済ませよう。


「なあ、、ロイ君はさ、、魔法が得意なんだろ?」


「え?あ、、はい」


「じゃあさ、、もっともっと凄い魔法を使えるようになっていつか俺たちを助けてくれよ」


「え、、でも具体的には何をすれば、、?それに、、いつ?」

ちょっと困ったような顔でこちらを見上げている。


「もっとずっと先で俺たちが困ったときにさ、その時にもっと強くなった君に僕たちを手伝って欲しいんだよ。だから、その時まで君にはもっと成長して強くなっていて欲しいんだ」


次の瞬間ロイ君の両頬に再び涙が伝い落ち地面へとしたたり落ちる。少しの間を置いて立ち上がりビシッと直立し直してロイ君が口を開く。


「はい、、はい!必ずこのロイ・タンディー!国を代表する魔術師になりお二人の力になります!」


俺とリアはそれを聞くと互いに目を合わせて微笑みながら頷く。さっきまでご立腹だったリアも満足そうだ。


「キョースケ様!帰りの準備ができましたよ!」

遠くから魔術師隊の人が読んでいる声が聞こえた。


「それじゃあ俺たちそろそろ行くよ」


「はい!ほんとうにありがとうございます!この恩は必ずどこかで!」


「うん、またね」

そう言うと軽く手を挙げて後ろに振りながら俺たちは出口の方へと歩き始めた。


「その時が楽しみだな」


「そうね」

リアがクスッと笑って返してくる。


「それと、、中々良かったわよ」

リアが優しい声でそう呟く。何がどう良かったのか説明して欲しいところではあるがまあリアが満足そうならそれで良い。


「そりゃどうも」

俺は少しかっこつけてそっけない返事をした。しかしそれとは裏腹にほのかに頬が赤く染まっているのはこの西日が照らす夕焼けのせいだろう、俺はそう自分に言い聞かせて歩く足を少しだけ速めた。


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