エピソード2:姫の現実 / 2
精神科の受診日は、決まって食事は豪華になる。昼はお寿司、夕食はピザ。食の細い真珠は決まって食べ切れない。しかし、彼女の両親はそんなことはどうでもいいのだ。自分たちが「この子に何かしてやった」という満足感さえ得られれば、それで。彼女の主治医、金澤が気付いているか、いないかは不明だが、彼女の両親は毒親だ。
仕方ないわねぇ、と言いながら、何でも与えてくれる。かと思えば、それは絶対に駄目だ!と縛ってくる。不規則な歪んだ愛情の元、真珠は育てられてきた。……一時期を除いて。夕食のピザは妙に重たく感じた。早く「きのきょ」に、ヴェロニクスに行きたい。ピザをほとんど食べず、真珠は口の中で溶かすように言われた「薬」を口に含んだ。
当然のことながら、ラムネの味がする。ラムネなのだから、当たり前だ。真珠はご馳走様も言わず、ダイニングを出た。両親も何も言わなかった。むしろ、真珠がダイニングを出たあとから、話が盛り上がったようだった。それでも、何も感じない。あたしは何も感じない。真珠は、自分は無感情な人形だ、と自分に言い聞かせた。
「……はぁ。疲れた」
ベッドに身を投げ、全身を脱力させる。疲れた、と、脱力しながら、頭では、こんな日はヴェロニクスで大物を仕留めに行くに限る、と考えている。いや、巳茶のレベリングに付き合うか。とりあえず「きのきょ」に顔を出しに行こう、と、ノートパソコンを開いた。「きのきょ」に入室すると、ログが流れていた。話題はどうやら、レベリングのこと。
どうやら、低レベル帯のフィールドで狩りをして<アイテム・レベリング>を行う、という企画を、戸羽乃が考えてきたらしい。<アイテム・レベリング>とは。ヴェノニクスには、アイテムにも固有の「レベル」と「ステータス」が設定されている。どんなに弱い武器でも、回復効果の低い回復薬でも、鍛えれば強くなり、回復力も跳ね上がる。レベリングの方法はいくつかあるが、今回はフィールドに出て、安全なレベル帯のモンスターを狩ることで「レベル」の方を上げる、ということらしい。
現在「きのきょ」の画面には7人分の名前が表示されている。フルメンバー。真珠の気に入らない、深雪もいる。
パルりん<おつー>
hito<おつおつー。って、今来て今落ちるんかーい>
kanapo<www>
あぁ、これだ。この感覚だ。あたしには現実なんていらない、あたしには「きのきょ」とヴェロニクスがあればいい。今日は暴言を吐くことなく、真珠も他のメンバーも楽しいと思える冒険がしたい。……しかし。真珠の耳は捉えていた。自室の外の気配を。真珠の親はこういった盗み聞きをすることが多々ある。今はヴェロニクスのボイスチャットを繋いでいないから何も言われないが、この後、ヴェロニクスにログインしたら、あとはボイスチャットを繋いだままになる。また何か言われそうだ。勿論、親に、だ




