エピソード10:新人が先輩方に馴染むにはどうしたらいいか / 1
ある日の昼下がり。柚木はヴェロニクスにログインしながら考えていた。どうしたら、きのきょの先輩方ともっと近付けるか。考えに考えて、先輩方との共通点を探すことにした。「訳あり」。まぁ、そうだ。「ヴェロニクス」。……これだ。もう開き直るが、どうせ引きこもりなのだから、1人の時もレベリングしよう。情報源は、ネット。
柚木が1人でヴェロニクス内を歩き回ることは少ない。だから、ネットの情報を頼りに狩り場を探すしかない。柚木のレベルもめちゃくちゃに低いわけでもなくなった。少し街から離れた洞窟が穴場ということで、柚木はその洞窟を目指した。安くはないが、回復アイテムも大量に買い込んだ。武器も思い切って新調した。
ちなみに、柚木のキャラクターである「深雪」の職業は、剣士。使用武器は片手剣。初心者には扱いやすい職業と武器だ。
深雪「あー……洞窟で戦闘不能になったら、パルりんさんにぜーったいバカにされる」
1人、呟く。何かと辛口な彼女にしてみたら、1人でレベリングしていて戦闘不能なんて、ネタでしかない。彼女も戦闘能力が高いわけじゃないが、いわゆる、プレイヤースキルが高いのだ。囮・撹乱が1番の特技だった。戦闘能力が低くても、プレイヤーの腕が良ければ、どんな危険でも乗り越えていける。
しかし、柚木は。まず、性格が前衛向きじゃない。じゃあ、後衛職や生産職に就いたらどうだ、という話なのだが。kanapoのようにソロでドラゴンを討伐出来るくらいのヒーラーだっている。しかし、柚木は子供の頃から、RPGで職業を選べたら、必ず剣士を選んできた。それに、ヴェロニクスの職業・剣士は、多彩な動きが出来る。
柚木はそのことを知らないが、剣士は上位職も豊富だし、扱える武器に制限がなく、スライドというシステムで転職すると、転職後にボーナスが付くということで、そういった意味でも人気職である。そんなわけで、剣士と相性のいいモンスターは取り合いになりやすい。エリアも混む。ネットで穴場とされている洞窟も、当然……。
深雪<……僕、争奪戦系は苦手なんだけど>
穴場だと紹介されている時点で穴場ではなくなっている、それがヴェロニクスのモンスターやエリアの常。覚悟を決めて、柚木はヤドカリのようなモンスターに斬り掛かった。カキン!という効果音と共に、ヤドカリ型モンスターのHPを削る。武器を新調したからか「深雪」の攻撃力は確実に上がっていた。しかし。
グワッという獰猛な声を伴ったヤドカリ型モンスターの一撃が「深雪」のHPを大幅に削った。……防具は買い替えなかったのである。その瞬間、戦闘不能が確定した。




