エピソード8:ちょっと聞いてよ!は大抵、ちょっとじゃない / 2
苦労をして帰ってきたかほりの為に、戸羽乃がイベントを企画してくれた。非常にシンプルな企画だ。ヴェノニクスの街中に特殊オブジェクトを設置するから、見つけた人が勝ちで、そのアイテムは持ち帰っていい、というものだった。それなら、疲れているかほりにも出来るだろう。そして、戸羽乃は気を利かせてくれた。
ペア、もしくはペア以上で探索すること。このイベントの主役のようなかほりは相手を選べる。かほりは巳茶を指名した。ちなみに、今日は真珠はオフラインである。別に何かあったわけではないらしいが、きのきょには顔を出さず、1人でヴェノニクスに籠もっているらしい。イベント中に会うかもしれない。
「宝探し」の舞台は、創造の街・アウェルスト。生産系の職業のプレイヤーが集う、雑多な印象を抱かせる、入り組んだ構造の街だ。ボイスチャットは組んでいる相手としか出来ないように設定された。そういう細かな設定が出来ることを初めて知った柚木は、ヴェロニクスの秘めた無限性に思いを馳せた。
海百合「さーて、探すわよ!巳茶さん、まず、戸羽乃の隠したオブジェクトってなんだと思う!?」
桜餅「そうですね。この街にあって不自然じゃない物……でしょうか」
海百合「この街は鉱物系のアイテムも多いし、宝石かしら!」
まず、かほり・巳茶ペアは鍛冶屋エリアの探索を始めた。hito・kanapo夫妻は、小さくて目立ちにくいアクセサリー系がお宝だと踏んで、街を端から端まで探すことにした。そして、戸羽乃と組むことになった柚木は、ネタバレという暴力を振るわれていた。まぁ、企画者と組んだらそうなるだろう。最初から負け確定の勝負になった。
コトコトシチュー<俺は最初から、かほりが見つけられるようにオブジェクトを設置してきたんだ>
深雪<はあ、そうですか……。ちなみに、何処に、何を設置したんですか?>
コトコトシチュー<かほりの手の装備欄に、指輪。「ヴェノニクス」の「街中」にいるかほりに「特殊オブジェクト」を「設置した」。嘘は言ってない>
どうやって!?それが、柚木の頭に浮かんだ言葉だった。しかし、ふと思い出した。戸羽乃のゲーム内職業は<ローグ>。器用さと素早さの数値が高く、その手のスキルを持っていてもおかしくない。思ったのだが、かほりが装備欄の指輪に気付かなかった場合、この企画はいつまでも続くということだろうか。正直、柚木は……眠かった。
と、戸羽乃と柚木がぼんやりしていると、そこに見慣れてきた美少女アバターの真珠が現れた。第一声は、kanapoさんどこ!?だった。しかし、戸羽乃も柚木もkanapoたちを追い回しているわけではない。そもそも、真珠はよく今が企画中だと分かったものだ。今、全員がボイスチャット機能をオフにしているというのに。




