エピソード8:ちょっと聞いてよ!は大抵、ちょっとじゃない / 1
とある夜のこと。いつもならきのきょに現れるかほりが、遅くなっても入室してこない。リアルで何かあったのは間違いないが、かほりのリアルの連絡先を知るメンバーは誰一人としていなかった。柚木は、お先に落ちようか悩んでいた。かほりのことは心配だが、もう真夜中だ。このままでは早朝になってしまう。
と、柚木が落ちるという旨の挨拶をしようとした瞬間、かほりがオンラインになった。そして、挨拶もすっ飛ばして一言。
かほり<ちょっと聞いてよ!>
hito<どーしたの、かほり。こんな時間まで来なかったって、大丈夫?>
かほり<アタシのはらわたが大丈夫じゃないわ!!>
訳あり、らしい。もう訳ありなのに訳ありになるとは、きのきょのメンバーらしい。少し眠くなってきたが、柚木はかほりの話に付き合うことにした。さて、かほりの身に何が起きたか、というと、かほりが「訳あり」になった原因が関わること、らしい。一言で言うと、前職を退職した理由──「事件」を起こした張本人に呼ばれた、というのだ。
柚木はさっぱり話が分からない。それを察したかほりが1から教えてくれた。かほりは普段、オネエキャラだが、以前は小学校教諭をしていたのだという。人気の先生でもあった、が、ある日、事件が起きた。そこで、柚木も何となく察した。背筋が凍る話、の時にサラッと聞いたが、合成写真をばら撒かれたとか、何とか。
その事件が原因で教諭職を辞めざるを得なくなり、以降、かほりは「出張彼氏」という職業で生計を立てているという。そして、今日も仕事だったのだが……。
かほり<まぁ、そのスキャンダル相手が今日、アタシを指名で呼んだのよー!アタシだって全く怒ってないわけがないっていうのに!>
巳茶<呼ばれて、どうしたんです?>
かほり<そろそろ離婚しそうだから、離婚したら結婚してくれない?って言われて、終わり。ふーざーけーんーなー!!>
まぁ、それはなぁ。未成年の柚木でも、事の大変さは察することが出来る。しかし、かほりは強かだった。今日、かほりは相手とスキャンダラスな写真を撮ったのだという。次に指名したらばら撒く、と脅して。乙女は強い、と、戸羽乃が感心している。ちなみに、そのスキャンダラスな写真はもう消した、と、かほりは言った。
それがほんとのイイオンナってやつよ。そう言いつつ、かほりはリアルでは缶チューハイを10本も開けていた。明日、二日酔いになるかもしれない。




