エピソード7:最強ママは忙しい / 3
そして、加奈子はきのきょにいると「頼まれごと」をされることがある。大抵は戸羽乃のイベント企画の手伝いなのだが、たまにとんでもないものを、パルりん──真珠から頼まれる。その最たるもの……ドラゴン討伐。前衛職の一や戸羽乃に頼めばいいのに、加奈子に頼んでくる。その方が「確実」なのだ。何が?プレイヤースキルが。
今日も今日とて、加奈子は真珠の依頼で「火吹きドラゴン」の討伐に向かっていた。戦利品は、当たりを引けば「炎の涙」という、ステータス強化アイテム。まだ高レベルとはいえない真珠のキャラにとっては、「〜の涙」系のステータス強化アイテムは貴重で大事な物なのだ。装備品での強化には限界がある。
一応、加奈子の援護としてドラゴンのねぐらまで同伴した真珠だが、ステータス強化系の魔法を使うことしか出来ない。そして……バトル、開始。
kanapo<右方から龍尾の攻撃あり、パルちゃん下がって!>
ゆみポ<あんな一撃食らったら死ぬ!>
kanapo<私は盾さえ間に合えば、ノーダメだから……盾をミスらないようにすれば、軽い!>
火吹きドラゴンを相手に「軽い」と言えてしまう加奈子は、きのきょのメンバーからは<ドラゴンをソロで討伐出来るヒーラー>と恐れられている。最強クラスの攻撃特化型装備に加え、防御力底なしの盾である<オウルバグドの盾>があれば、理論上はヒーラーのドラゴンソロ討伐は可能だが、それにはプレイヤースキルが伴わなければならない。
そして、10分後。加奈子の一撃が華麗にキマり、火吹きドラゴンは大地へと崩れ落ちた。光の粒子と化したドラゴンが残したのは、炎の涙、そして、髪飾りだった。
kanapo<わぁ、紅玉の髪飾りだ!>
ゆみポ<kanapoさん、持って帰る?>
kanapo<え、いいの!?これ、80%ドロップの涙と違って、レアドロップだよ!?>
ゆみポ<いいよ、倒してくれたの、kanapoさんだし。きっと似合うよ>
……と、まぁ、人助けはちゃんと自分の身に返ってくる。そのいい例であった。こうして、最強ママの1日は終わっていくのである。リアルで加奈子の隣りに座り、ドラゴン討伐のリアルを見ていた一は、我が嫁ながら恐ろしい速度でコントローラーと変換器を使う加奈子を、決して怒らせまい、と心に誓うのであった。




