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エピソード5:明け方、君と出会えて良かった、と言う / 1

 それから、一夜明けて。加奈子は朝から顔を真っ赤にしていた。理由は1つ、一の寝言だった。相葉家の朝は戦争だ。双子の長男、次男が走り回るわ、長女がメイクの為に洗面所を独占するわ、一が「ネクタイが結べない!」と騒ぐわ。そんな中、加奈子は1人、ぼんやりするのであった。一の寝言は、それほどの寝言だったのだ。



 「加奈子、ネクタイ!」


 「……今日はそんな気分じゃないの」


 「じゃあ、どういう気分なのさ!?」


 「あなたに寝言で、君と出会えて良かった、と言われた気分ですっ!!」



 あぁ、なるほど。一の連れ子、芳花は納得する。継母でありながら、実母よりよほど慕える加奈子のことは、大体把握している。加奈子が乙女モードに入っている時は、実父の一が絡んでいることが大半だ。加奈子の連れ子で双子の弟、小学6年生の千夜と花火は、その辺はよく分かっていないが、まぁ、年齢相応だろう。


 芳花は現在、高校3年生。まだ難しい年頃ながら、自分では年齢より落ち着いていると思っている。何年経っても新婚のような両親のことは好きだし、血は繋がっていなくても弟たちは可愛い。結局、一のネクタイは芳花が結んだ。朝から世話の焼ける父親だ。ぼんやりしていて遅れて、加奈子は朝食の準備に追われている。


 そんな加奈子に、一が声を掛ける。掛けちゃいけないタイミングで掛けた。今、加奈子は目玉焼きを大量生産している。



 「ねぇ、加奈子」


 「何!?はーちゃん!」


 「君と出会えて良かったよ」



 ……加奈子はもう、何も言えなかった。よく分からない涙が出る。そんな加奈子を見ていた千夜と花火がハモって「あー!パパがママを泣かせたー!!」と騒いだ。まさか泣かれるとは思っていなかったので、一もびっくりする。芳花だけが冷静だった。天然でこれなんだよなぁ、と。その間にも、目玉焼きは焦げていく。

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