04 宅配便を頼んでしまった
「何か困り事ですか?」
窓枠に腰掛けてあの男の子が私の様子を見ている。
「どこから?」
「窓から。」
「ここ、2階だよ?」
「それが?」
おかしい。私の常識がそう言ってるのに、男の子はそんな私を不思議そうに見ている。
確かにね、飛べるよ、私。魔法で2階くらいなら楽勝だよ。でも、それって特別じゃないの?違うの?
……違うのかも。
……私が知らないだけで、2階に飛ぶって常識?
……飛べない両親は可哀想な人?
「飛べるの?」
「もちろん。」
そうか、私の常識が間違ってたらしい。
私は気を取り直して男の子の方を見た。
「このキノコをおじいちゃんに届けたいんだけど、家が分からないの。」
「名前とか、特徴は?会ったことは?」
「お母さんのお父さんなんだけど、会ったことは一度もない。」
「そんな人にその貴重なキノコを届けるのですか?」
「病気になってもらっても困るから。それから、敬語をやめて。」
このちょっと俺様っぽいこの子に敬語を使われると、なんだかむず痒い。
なんだろう。一般人の女子高生がいきなりヤクザからお嬢さんって頭下げられる感じ?古い映画で見た気がする。
「わかった。これで良いか?」
「うん。」
「それで、母親なら分かるんだな?」
「どうだろう。無理かも。母さん、お嬢様だし。」
お母さんは方向音痴だから、多分無理かも。
「父親は?」
「あ、父さんなら多分分かるはず。」
「わかった。」
「え?届けてくれるの?」
「それが希望だろう?」
「う、うん。」
おじいちゃんもおじさんも元気になったら……
「ありがとう。あ、あなたの、名前。」
「デューク。」
「デューク、よろしくお願いします。」
「ああ。」
彼はキノコを受け取ると、窓から姿を消した。立ち去り際に、振り返って笑顔を見せてくれたけど、その笑顔が凄く眩しかった。
二日後、デュークから茸を届けて来たと連絡があった。この村は辺境だと思ってたのに、意外に王都に近かったらしい。往復二日って近すぎない?
駆け落ちするならもう少し遠くにするべきでは、と思う私だけど、とりあえず連れ戻されないならいいや。
なんて考えながら、今日も元気に金色の茸を作っている私。
そして、それを窓辺で待つデューク。
それが日常になるほど、私はポル茸のシーズン中、金の茸を作り続けたのだった。
茸の配達は、2回目からはデュークが用意する魔法陣に入れるだけになったのだから、簡単になった。
多分、屋敷の玄関に届くんだろうなぁ。
そんな茸の配達をはじめて暫くすると、お手本のように綺麗な文字の書かれた綺麗なカードが入った籠を返してくれるようになった。
押し花や、絵が書かれたもの。いい匂いがするもの、等、こんな田舎では手に入らないものだ。
綺麗なカードは私の宝物になった。
ある日、カゴを置こうと思ったら、キュッと手を握られて、びっくりした。デュークも驚いた。
だって、私達は人気の無いのを確認してから、茸を置いていたから。
それでも恐怖を感じないのはその手がとても優しかったから。
握った手は大きくて、暖かかった。
握られたのはほんの少しだけで、そっと手は離れていった。
次の日から、籠の中に綺麗な絵本やぬいぐるみ、見たことの無いような綺麗なお菓子が入るようになった。
そして、私は両親にバレて、叱られたけど、やめるようには言われなかった。
最近では、お母さんも時々手紙を入れている。返事が届くと凄く幸せそうだ。
「この絵本はね、昔、お母さんが大好きだったお話なのよ。あなたも好きになるわ。」
小さな旅人が、色々な国を回るお話。砂漠の国に行ったり、氷の国に行ったり。
友達ができて、恋人ができて、そして、家族ができて。家族がいっぱいになって。
それがとても綺麗な絵で描かれている。
「良かったな。」
そう言う父さんの胸に寄りかかりながら、お母さんは届いた返事を胸にこくこくと頷いた。
そして、父さんは、私の頭をぐりぐりと撫でてくれる。
「ありがとう、マリア。」
今、お母さんのお腹の中には、妹か弟がいる。
小説とは違って、私は一人っ子ではなくなるようだ。
もしかしなくても、私の村人計画は成功なんじゃないかしら?




