箱の中は
そこで日記は終わっているようだ。
気がつけば私は身震いをしていた。
この日記は一体何なのだろうか。
彼女は一体何なのだろうか。
そんな疑問がぐるぐるぐるぐると頭の中を駆け巡っている。
他になにかないかと最後の日付から日記をめくってみると、パラリと当時の新聞を切り取ったものが数枚出てきた。
1つの記事には、ある青年がバラバラの状態で発見されたと書かれていた、暫く身元がわからなかったとも、理由は頭部が見つからなかったと書いてある。
記事には頭部は野良犬が持ち去ったのではないかと締められていた。
他の記事にも同じ様な事が書かれていて、中には誰かが持ち去ったなんてものもあった。
そして最後に読んだ記事には日記の持ち主であろう少女が病院の屋上から飛び降りたとだけ書かれていた、その記事には箱の事や箱の中身を思わせるものはなかった。
ただ転落した衝撃で頭部がちぎれ飛んだのか、最後まで見つからなかったと書かれていた。
少女が持っていた箱、そして今私の目の前にある箱。
一気に部屋の温度が下がった気がした。
取り敢えず箱は置いておき再び日記をめくっていく。
最後のページに祖父の筆跡らしき文字でこう書かれていた。
「私はなんてことをしてしまったのだろうか、彼女の持つ箱があまりにも羨ましくて私も欲しくなってしまった、そして私は⬛⬛を手に入れた、今日から⬛⬛は私の物だ、決して誰にも渡さない」
それだけが書かれていた。
そういえば祖父は度々1人であの蔵におもむき、誰も中に入れなかったという、そして蔵の中から祖父の話し声と、祖父以外の話し声が聞こえてきた話しを冗談交じりで聞かされた事があった。
無性に喉が渇く、お茶に手を伸ばすも空になっていた。
私はゴクリと喉を鳴らし唾を飲み込み箱に目をやろ。
唾を飲み込んだ割にはまだのどが渇いている。
そっと箱を手に取る。
ぐるぐると巻かれている縄を慎重にほどいていく。
箱を1度机の上に置く。
これを開けて良いものなのだろうかとの考えが浮かぶが、好奇心には勝てなかった。
そっと上蓋を外す。
上から覗き込む。
まず見えたのは液体の詰まった大きな瓶。
そこそこの重さのある瓶を慎重に取り出す。
そしてそれを見た私は……。
ああ、これはなんて美しいのだろう。
絶対誰にも渡したくない。
これは私の物だ。
今にも語りかけてきそうなそれを見た瞬間、私はきっとそれに取り憑かれてしまったのだろう。
「絶対に手放さないよ愛おしく狂わしい私の⬛⬛」