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97、シンプル


 それぞれ種類が違い形状も特徴的な大樹は、彼らにとって移動手段であり家でもあるらしい。

 「年寄りは夜が早いんじゃぁ」とか言って一人が大樹の中に埋没すると他のハイエルフたちも次々にご就寝。

 それを言うなら「朝が早い」んじゃと思ったけど起き出してきたのは昼だった。


「さて朝飯でも用意してやろうかね」

 深穴とか呼ばれてる千年ハイエルフは、こっちが起き出す前からあちこちを見回ってたようだけどね。


 私が涙を飲んで提供した米は不評。

 くっ……味噌漬けには絶対これが合うのに!


 前日に伝えた天然酵母を使ったパンは大好評だ。


 ずっと長いこと風が運んでくる音に耳を傾け、水や炎の中の影を見ているハイエルフたちはどの種族の言葉も話せるし読めた。

 それだけに本には興味を示さないのは皮肉だ。


 パラパラ漫画は面白がってたけど、さすがに子供じゃないからすぐ飽きる。

 またぞろ居眠りをはじめるハイエルフたち。

 気ままに一人二人と去る者もいて、すでに半分くらいに減っている。


「しようがないねぇ」

 最長老がいちばん勤勉というのも不思議な感じだけど、彼女に言わせれば持って生まれた性格だそうだ。


「ただただ真面目なだけだった私は、工夫が足りないってよく叱られたものだよ。でもそうそう変わるわけがないよねぇ。毎日やってることを一年くり返して、それを千回くり返しただけだもの」

 そう言われればそうなんだけど、やはり悠久の時ではあるよね。


 そしていま世の中で起こってることもよく知っていて、獣人国を落した後はこちらを攻めるのかい?なんて言われてドキリとする。

 こんな時こそ平常心でいたいけど、一回しっかり戦争をすることでその後そういったことが起こらないようにして、平和な時間を引き延ばせれば今回持ってきたようないろんなものを作れるとか説明すればするほど我ながら言い訳じみて聞こえる。


 ハイエルフの中のハイエルフはそんな私の顔を見て声を上げて笑った。

「ふはははっ! いいんだよ、いいんだよ。結局強い者の言うことを聞くしかないんだからさぁ」

 ご機嫌で上空に放った巨大なファイアーボールがボンッと弾けて四方八方に飛んで行く。

 着弾する前にちゃんと消えてるけどそりゃあビビるわ!


「なんじゃっ! 敵襲か?」

「……違うよぅ、また深穴のお遊びだよぅ~」

「どれ、私も」「儂も」


 寝惚け眼のハイエルフたちが次々に水だの土だの見えないけどたぶん風の塊だのをぶっ放す。

 風が吹き荒れ雲が湧き、岩塊が砕かれその割にちょっと風になぶられ小枝が飛んでくるくらいだから私も周りの森も見えない何かでそれなりに守られてはいるらしい。

 最低限の気遣いはできるみたいだけど……ハイエルフまで脳筋とかなんなの。


 

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