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96、慰問


 その後も一本、また一本、時には二~三本まとめて大樹が寄ってきて、ハイエルフの数は十人を超えた。

 彼らの雑談を聞くに、私たちにまったく興味がないかもしくは気に食わなくて姿を見せない者もいるようだけど、ハイエルフがこれほどの数集うのは見たことないってエルフたちは一塊になって震えてる。


 大樹同士が枝葉や根の置き場所を譲り合い、幹を寄せ合って緩く弧を描くように立てばまるで野外ステージのよう。

 ハイエルフたちを寛がせている瘤や洞がすいーっと降下してくる様はファンタジーを超えて近未来的だ。


 そんなわけではじめましての挨拶と、訪ねた目的……相互理解を深めたいってお題目のもとにいろいろ持ってきたものを紹介したんだけど、当然のように馬車や昇降機、車椅子には興味を示さなかった。

 まったく彼らの魔法は反則だよ。

 渡した獲物や採取物、調味料で料理をする時もすべて魔法だもん。


 薄くスライスしたエルク肉のエシャレット巻きは大変美味しゅうございました。

 何人かは味噌に興味津々で、こちらの言うままに蜂蜜と刻んだショウガやエシャレットを混ぜて肉を漬け込むあたり素直。


 ハイエルフに聞いてもらえる栄誉に涙しながらエルルたちが行った演奏も気に入ったようだ。

 途中から半分以上が寝てたけど。

 ……介護施設の慰問かな?


 それから魔蝶シルクとバラ水及び香油が男女問わず喜ばれた。

 さすが美の結晶のようなハイエルフ……ってことじゃなくて、やわらかい下着が欲しかったのと、乾燥で肌がチクチクして困ってたんだって。

 乾燥肌は治癒魔法の対象にはならないのかな。


 演奏はまた聞きたいけど自分でやる気はないそうで、周囲に隠れて様子をうかがってたエルフたちが勇気を振り絞って「自分たちが習い覚え、お聞かせしたい」って申し出ると何人かが鷹揚に頷く。


 一人のハイエルフが大樹の枝を見る間に楽器の形に変形させてポトリと落とす。

 ほかのハイエルフたちもそれくらい軽いというように次々形作って落とす。

 ささっと受け止めるエルフの必死さがちょっと怖い。


 たださすがのハイエルフも作れないスチール製の弦と魔蝶シルク、既製品があるならそこまでの手間は掛けたくないバラ水と香油を、ジャンクリン王国からエルフたちが買うことになった。

 ハイエルフたちに定期的に捧げたいそうだよ。

 私の独断でコーヒー豆やバナナ、サトウキビと交換することにする。


 私もただ黙って森の中を案内されてたわけではないのだよ。フフフッ。


 ただカカオを見付けられなかったのが残念。

 砂糖の目処も立ったし、あったら高く買うから探しておいてくれないかな?


 エルフたちからすればハイエルフのために譲歩した房状の黄色い甘い実ならまだしも、赤い実を摘まんでその辺に捨てる種の方を欲しがるとか、あちらこちらに蔓延ってる家の材料にもならない木だか草だかわからないものに嬉々とするとか……大丈夫かって顔で私を見るんだ。



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