93、森
エルフたちがシンプルに「森」って呼んでる領域は広い。
さらに温暖な気候ってこともあって、狩りと採集だけで十分食べていけるわけだね。
彼らは一カ所に留まっても一年といった具合で、せっかく作ったツリーハウスを放棄して移動する。
各部族ごとにだいたい領域は決まってるけど、その中をゆったり巡っていくから獲物を取り尽くしたり森を枯らす心配はない。
再び同じ場所に来た時に以前の住居を再利用することもなくはないけど、たいていは朽ちてるからまた新たに作るそうだ。
エルルの一族が暮らしてた領域はいまはジャンクリン王国の新領地ってことになってるけど無理な開発はしてない。
……できないって言った方が正しいかな。
他国人でも狩猟や採集のために森に入ることはできるんだけど、たいていは一日中ぐるぐる歩くはめになって気付けば森の外に出てるんだって。
ジャンクリン王国で「迷いの森」って呼ばれてる理由。
それでも恵は与えてくれるから懐が深いっていうか。
その森の端から木をかすめ取ったり、たまたまエルフとかち合ってどっちの獲物だとか争ったり……こっちは業が深いね。
先の戦争では力攻めに木を切り倒し火を掛けたらしいけど、すでに半分以上が自然回復してるそうだ。
あ、エルフも木を切るし火も使うよ?
ただその程度が穏やかなだけ。
気性はわりに激しいしね。
私は柳腰のアマゾネスだって思ってる。
男が内気で繊細、家事・育児が得意とか……なかなか興味深い。
そんなわけでジャンクリング王国に降ったのは女ばかりで、男と子供は他部族に助けられながら森で暮らしてる。
エルルたちは年に数回会えるか会えないか。
私がちょくちょく欲しいものを探しに行かせるのも、そういう理由があったりなかったり。
けしてわがままなだけじゃないんだよ。ほんとだよ?




