90、ハイエルフ
キルヒャー先生やエルルの話を総合すると、エルフは基本的に部族ごとに別れて暮らしていて互いに干渉はしないらしい。
ただハイエルフって呼ばれる存在が一定数いて、一般のエルフからすると精神の支柱というか精霊のごとく崇める対象なんだって。
部族長であるエルルですら過去に一度遠目に見て、一度声を掛けられた程度。
それでもそれをとても誇らしく思っているようだ。
そもそもエルフは寿命が百~三百年。
ハイエルフの平均が五百年程で、最長老は千年を生きてるって話だ。
ちなみにドワーフは二百年ほど生きるらしいよ。
そんなこともあってかハイエルフに比べればエルフは世俗的。
それを証拠にうちの国と小競り合いを繰り返してたくらいで、ハイエルフが何を考えてるかなんて想像も付かないみたい。
千年かぁ……当然使う魔法もすごいとか、もう神の領域に片足突っ込んでるよね。
その上、精霊は魔法の行使を手助けするだけじゃなく、例えば風の囁きや水面に映る光、炎の影、土の匂いや温度として親和性のある者に何かを伝えてくるそうだ。
基本気まぐれだけど、おかげでエルルは自分の住む集落の中で起こってることくらいはだいたい把握できてたって話。
それがハイエルフともなれば、その範囲や精度はどれくらいなんだろうね?
案外いま私がこうしてることも知ってるのかも。
だからここからは完全に私の想像になるけど、ハイエルフってまったく外に興味がなくて漫然と時を過ごしているか、すごく好奇心旺盛だけど完全なる引きこもりってパターンじゃないかな。
どちらにせよ自分たち以外は取るに足らないものって考えてるのは確かだろう。
でなければガンガンこっちを攻めてきて、今頃ジャンクリン王国なんて影も形もないんじゃない?
ともかく私がやるべきことはハイエルフの興味を引いて、こんな寿命の短い馬鹿な生き物だけど居た方が世の中面白いって思わせること。
エルフたちを動かすにはハイエルフを動かすのがいちばんだからね。
なぜこんなことを考えてるのかというと、例によって尻拭いを依頼されたからだよ宰相に。
もう絶対、公爵位と領地はもらうからね!
あとはせっかくだから新しい食材でも探してこよう。




