72、学友
王の居室がだいぶ執務室らしくなっていた。
前に来た時は仕留めた魔物の角や牙、剝製や石板が乱雑に置かれてて、いかにも男の趣味の部屋って感じだったけど、いまは彫刻の施された執務机がどかっと置かれ、オプションで書類を抱えた宰相が付いている。
これはあれだ。
サインを迫られ続けてほんのちょっとでも現実逃避したくなって私を呼んだんだな。
「お前も七歳になった故、学友を選べ」って何の前置きもなしに言われる。
学友! 学友ですってよ?
にこりともしない父親を前にどうでもいいことが気になる私。
だって宰相とか家令が言うならともかく、この王だと「戦友」あたりがしっくりくるでしょ……
「何を考えておる」
文句があるなら言ってみろとばかりに睨め付けられて、皆これで正直にゲロッちゃうわけだね。
「……そういうことであれば私に付く近衛をいまの倍にしていただけないものかと考えておりました、陛下」
「馬鹿者が!」
近衛は家臣であって友ではないって叱られた。
その一方で近衛の数については希望通りにしていいってさ。
それでも第一王子の周りに配されてる数からすればまだまだ少ないからね。
一応、父親として気にしてはいたらしい。
小言のような愚痴は続く。
「近頃、わが配下までおかしな話し方をする。尻がむずがゆくて敵わん」
「陛下……」
「それもだ。なんだその妙な呼び方は」
あ、やっぱり?
私も使ってはみたものの陛下とか殿下とか閣下とかなんか違和感があるんだよね。
「では、王よ」
「うむ」
うん、こっちの方がしっくりくるね。
この国の気風ってことでいまはこれでいいか。
「学友を選んでいい家はいくつです?」
親父サマはちらりと宰相を見る。
「三十程ですな。書き出しましょうか、ダンカン王子」
「うん、頼む」
「では失礼して……」
少し離れたところにある二回りは小さな机にいそいそと向かう宰相。
よくやったと言わんばかりに頷く王。
……息子を褒めてるっていうより、さぼれてラッキーって思ってるようにしか見えないんだけど気のせいかな?




