67、BGM
私もそんな殺伐としたことばかりしてたわけじゃなくて、羊の毛刈りを試みる女性陣の相談に乗ったり……だってバリカンどころかハサミがない。
そこでその辺にゴロゴロいるその道のプロの出番だ!
はじめからぴたりと刃を合わせてくるところなんてさすが。
糸切バサミの親玉みたいなのを手に、暴れる羊を抑え込む見た目美少女な奥さんたち。
私は体力的に無理なので羊毛を梳く道具、なんて言ったかなぁ。
まあそんなのを作らせに行ったら、ドワンが黙って金属製の糸車を作ってた。偉い。
次は棒針とかぎ針を頼む。
想像以上によい毛糸ができたので、久しぶりにマフラーでも編んでみようかと。
羊毛の場合はフェルトって手もあったね。
あ……うん毛織物もいいよね。
だから金属製のその部品、無駄にならないから。
とりあえずいまは編み編み編み編み……こんな時はバックミュージックもいいね。
唯一連れて来てたエルフは井戸の設置場所レーダーとして、また二胡奏者としてひっぱりだこだ。
二胡の音色は特に女たちに人気で、いつもうっとりエルフの容姿も込みで愛でている様子。
自分にないものを求めるのかな?
エルフ族とドワーフ族の間には、生活スタイルの違いによる確執がないわけじゃない。
でも生活圏が遠く離れててほとんど交流はなかったし、うちの国よりマシってありがたくもない理由でそれなりにうまく付き合えるみたい。
言葉は片言でもジェスチャーと気合でけっこう通じるよね。
男連中の間ではハーモニカがブームで、私が河原でブカブカやっててもさほど目立たない。
獣除けになる一方で、『クロスポイズンフロッグ』が寄ってきてゲコゲコ鳴くのは私が吹いてる時だけだ……
ドワーフは仕事中、食事時、また単に気が向いた時にもよく歌う。
でも思いのほか酒は飲まない。
実情を言えば酒作りに回せるほど食料がないんだよね。
それはうちの国にも言えることで、祭事で使われる以外は王侯貴族がワインを嗜む程度。
特別な祝いの席では羽目を外すこともあるけど、それもそう多いことじゃない。
エルフにとっては精霊、ドワーフにとっては神への捧げもの。
そのお下がりを誰がいただくかエルフは矢の命中率で決めるらしく、ドワーフはよく殴り合っている。




