66、バリスタ
「一族の人たちともよく話し合ってみてよ。とりあえず一月は待つから。その間、僕は狩りでもしてようかな」
「どうぞ」「どうぞ」「好きなだけどうぞ」
許可はもらったので魔物狩りをしてたよ。
のんびりとね。
あまり乱獲して生態系が崩れても厄介だから。
野営も慣れたもので、馬車の入る道さえあればどこへでも行けるのがいい。
シンボリックなレリーフに彩られたドワーフの住居も素晴らしいけど、私以外は頭がつかえちゃうし、さすがに王子一人を泊まらせるわけにはいかないって。
硬いってことでは城と差はないんだけどね。
それを外から眺めるのも格別だ。
岩をくり貫いて造られたアパートメントが、夜になると繊細なランタンのように輝く。
最初のドワーフ族の譲歩は、私が倒したワイバーンを自分たちの作った武器で買うことだった。
スタンダードな剣や槍、盾や鎧……ワイバーンの素材ってこんなに価値があるんだ。
信用できそうな商人を選んで少しずつ運び出させてるけど、私もう十分役目を果たしたと思わない?
おざなりに頷く文官は、その手続きと在庫管理と車椅子の魔改造で忙しそうだ。
さらにバジリスクやタランチュラなんて有名どころから、大きくて毒持ちのカエル、トカゲ、ムカデ、サソリ、サル、カタツムリ、カイなんかを持って帰ると、その分作ってもらえる武器の数が増える。
いままで毒持ちの肉は捨ててたそうだけど、処理を間違えなければ食べられるんだよね、トム?
「オージはゲテモノ食い」って……あんたらもバクバク食べてるじゃないか。
子羊が生まれるまでがんばるぞ!
羊って言えば、私がずっと番をしてるわけにもいかないからバリスタを作らせた。
ドワーフたちも地に足が付いた相手になら早々負けないけど、空を飛ばれちゃうとね。
なんかこんな感じ~って雑な説明でも、あの複雑な機織り機や水車が作れるんだから簡単だよね。
まあ、いつも静かに見守ってるソイ先生が苦言を呈すくらい、こっちに向けられたらマズイ武器なのはわかってた。
でももう適当とはいえ構造を説明しちゃったんだから仕方ないよ。
ちゃんとうちの国でも作らせるからさ。
前世でヒットした足が速くなるっていうシューズ……皆が履けば結局もともと足の速い奴が勝つんだよね。
バリスタの場合は人死が増えるから一概に同じとは言えないけど。




