62、呼び名
まずは刀から。
掴みはオッケーどころかまったく話が進まないわぁ。
まあいい、しばらく放っておこう、もぐもぐ。
やっと返ってきた男たち。
「あれはいい」「ああ、いい」「早く打ちたい」「よし帰ろう」
まだ帰られちゃ困る。
次にドワンに試作させた一輪車。猫車とも言うね。
「これは便利だ」「小回りが利く上に量が運べる」「坑道で使えそうだ」「畑でもな」
そして鐙。
ジャンクリン王国ではまだ誰も使ってない。
もとは私が自分用にと望んでドワンが形にしたもの。
それを馬に装着して順にドワーフを乗せる。
轡はもう一人が取ってるけどね。
感動しすぎて何も言えないドワーフたち。
背丈に比例して手足が短いからこれまで荷運びには利用してたようけど、やっぱり馬って乗ると世界が変わるんだ。
そして私専用に作らせたものがもう一つ。
ハミ。馬に咥えさせるジョイントのある金具だ。
六歳児の短い足で一生懸命蹴っても馬に指示が伝わらないんだよ……馬鹿にされてるってことも無きにしも非ず。
まあ例によって苦労したのは馬と馬丁とドワンだけど。
馬の手綱を引いて泣いて喜ぶおっさんたち。
馬が怯えるからほどほどにね。
「グランタールの奴が生き生きしてる理由がよくわかった」って、ドワンってそういう名前だったんだね。
「そう呼んだ方がいいか?」「いや、いままで通りで」ってこそこそ話してたら、内緒話に気を悪くするおっさんたち。
正直に訳を話したら自分たちにも呼び名を付けろって言う。
なんでも勝手に来て勝手に名乗ったジャンクリン王国の貴族に「お前のような奴に名乗る名はない」って追い返したのが事の真相だそうで、私のことは嫌いじゃなけどやっぱり王国には思うところがあるからだって。
まあ気に食わない相手に名前を呼ばれたくないって気持ちはよくわかる。
んーじゃあ、獅子っ鼻のおっさんはドゴン、賢そうなおっさんはドクトル、いちばん背の高いおっさんはドオール、特にワイドなおっさんはドム。
「あってる」「あってる」「なんというか確かにそんな感じだ」「うむうむ」って膝を叩いたり感心することしきり。
そう? ならいいけど……忘れないようにしよう。
ついでに私のことはオージって呼ばせることにした。
私が小僧って呼ばれるたびに、よその近衛より鍛えられてる護衛たちでもさすがに殺気立つからさ。




