59、ドワーフ・男
もともとドワンの一族が暮らしてた地域では、ジャンクリン王国の農民が入植して主にジャガイモと大豆を育てている。
理由はどうあれ税を納めず逃げた連中だから、ここから出れば犯罪者ってことで文句も言わずよく働く。
もう少し土の改良が進んだらライ麦も撒く予定。
別にドワーフたちを追い出すつもりはないし、採掘や鍛冶に専念させるための方策だ。
私がジャガイモジャガイモうるさかったせいでもない……たぶん。
いまは一族の男の半数程が王都周辺で刀鍛冶及び新製品の試作品作りをし、残りがここで採掘と刀鍛冶をしてるわけなんだけど、それじゃ不公平だって不満が噴出してどのように人員を入れ替えるか日々頭を悩ませてるドワン。
どの道、刀は打ってるのに隣の芝は青いってやつなのかね。
その新領地を過ぎて、この辺りが境かなぁ~ってあたりで会談。
奇岩に囲まれた荒れ地は、丈の短い草がところどころ生えてる以外はほんっと何もなくて、遠目に立ってるドワーフたちが岩に見えたくらい。
《感知》ではめっちゃくちゃ警戒されてるのがわかるけどね。
しかし馬車を止め、文官が小型昇降機で馬車を降り始めれば空気は一変。
護衛たちには後方で羊を囲ませてたのもよかったのかも。
「お前行け」「お前が行けよ」ってど付き合いながら寄ってくる、背は小さめだけどガチムキなおっさんたちに圧されないよう胸を張る。
「我が名はダンカン・アス・ジャンクリン。先頃、我が国の貴族と貴殿たちの間で不幸な行き違いがあったと聞く。誠に遺憾である。よってこの羊百頭を……」
イントネーションはまだ少しおかしいけど十分伝わるってドワンに太鼓判を押されたドワーフ語で、なにげに王国を一段上に置きつつも相手に失礼にならないよう気を遣って話してたのに皆、聞いちゃいない。
まあ前任者は居丈高にして拗れたわけだし、ドワンからもドワーフの耳は形容詞や比喩を多用した長ったらしい話は聞くこと自体拒否するって聞いてはいたんだ。
じゃあなんで無駄な挨拶したんだって話だけど一応、何でも実験しておかないとね。コホン。
「見るか?」って、フランクに親指で示せば「おっ、いいのか?」「話のわかる小僧だな」って……近くにいる護衛がソイ先生だけでよかったよ。
おっさんに群がられた文官は目を白黒させてたけど、そのために連れて来たんだからがんばれ!
エルフが同行してることに首を傾げたのも一瞬、やっぱり気になるのは馬車のタイヤや揺れ軽減の仕組み、昇降機や車椅子らしく、まるっきり新しい玩具を与えられた男の子の集団だ。




