57、アドヒ山
執筆活動や学院の創設準備で忙しいキルヒャー先生だけど、会いに行けば快く応じてくれる。
お互い区画は違えど同じ城に住んでるわけで、だからそれほど急ぐ必要もないんだけど『ストーンバード』の石が気になってる私。
まさか許可されるとは思わず「アドヒ山に行きたい」って周囲に漏らしてたら、いつになく穏やかな表情をした宰相に是非にと勧められた。
よくよく聞けばなんのことはない、威張りんぼで無能な貴族の尻拭いじゃないか。
ジャンクリン王国は対獣人国戦を見据えてよりたくさん優れた武器を揃えたい。
まだまだ他にもドワーフはいるじゃないかって目の付け所は悪くなかったんだけど、しゃしゃり出た奴が「武力衝突はまかりならん」ってことしか理解できなかったみたい。
ドワーフの住む地に押し掛けて、居丈高に配下にしてやるくらいのことは言っただろうね。
自分に不利な証言はしないけど。
なんでそれで相手を動かせると思ったのか謎すぎるんだけど宰相曰く、第二王子の真似をしたんだろうって。はぁ?
そもそもドワンたちの場合はジャンクリン王国と争って降伏してるわけで、だからって私は彼らを従えてるわけじゃないし、そんなに威張ってないよね、ねぇ?
だいたいなんで宰相がそんな不思議野郎を送り込んだのか……「いろいろあるが聞いてくれるか?」って。
情報収集のいい機会と思って聞いたけど、覚悟した以上に年寄の愚痴は長かった。
とどのつまりアドヒ山はドワーフの住む領域の中でも北つまり最奧にあって、彼らの協力なしにはたどり着けない。
山に行きたきゃ、怒り心頭なドワーフたちを王国に組み込めないまでも、武器作りを仕事として頼むことさえできないまでも、せめて獣人国側に付かないように機嫌を取れとな。
りょーかい!
その代わりこれくらいは許可してね。
ドワンは通訳として連れて行くよ。
あと車椅子の文官を一人、エルフを一人。
馬車はこの間のを使う。
護衛も前のメンバーを中心に組むこと。
ドワーフへのお詫びの品として羊を百頭。
手土産に水車のパーツを四揃い。
ドワーフの打った刀を四振り。
チーズ十二個。
あといくつかドワンと相談して作らせるわ。




