53、ストーンバード
……文字を美しく書くなんて意識がまだ生まれてないことを思い知ったよ。
とりあえず原版になるレタリング文字や飾り文字を書いてる私。
自分の身に降りかかった途端、写本なんて考えは宇宙の彼方に消えて行ったね。
誰かにさせるならいいけどさ。
キルヒャー先生の原稿の分厚さを見よ。
しかも日々増産されている。
中身はぜひとも皆に読ませて、後世にも残したいものばかりだよ。
もちろんそれぞれの分野の専門知識ともなればドワンやエルル、トムの方がくわしいこともあるけど概要は理解してるし、この人の頭一つに中規模の図書館が収まってると考えていい。
私の先生なんかしてていいのかね?
いいらしいけど……そろそろ宰相あたりに取られそうだな。
なんか予定がどんどん前倒しされて、あと五年くらいで貴族の学校ができそうなんだよね。
思ってた半分くらいの期間だ。
宰相や文官たちががんばってるんだなぁ。
いまは学校で教える先生を教える先生を探してるみたいだ。
教科書も必要だしね。
ちぇ、ちぇ~、私が見つけたのになぁ。
まあ、最初に取り立てたのは王だけど。
キルヒャー先生が学院長とか似合わな過ぎて笑っちゃう。でもこれも世のため人のためと思って……あ、涙が。
あの先生が「王子の命令でないなら私は行かぬよ」だって。もう一度言うけどあの先生が!
なので私は命令します。
「私が通うだろう学院を万事抜かりなきよう整えておくように」
「しかと承った」
質問にはいつでも手紙で答えてくれるって。
……伝書鳩でも飼おうかな?
キルヒャー先生のお勧めは『ストーンバード』だった。
北方の決まった山にしかいない魔鳥で、必ず何個かお気に入りの石を巣に隠してるのだとか。
その石を取り上げるとずっと付いてきて、遠くに隠しても必ず見つけ出すんだって。
すごい! 面白い!
姿はイチョウの葉をまとったフクロウのよう……って、どんなん?
途中で狩られないようにまた人を襲わないように、休憩や食事はいいけど余計な寄り道はしないようにそれぞれの対策を考えた上で、どれくらいの距離を飛べるか実験しないとならないけど、あの小さな鳩が海を越えるんだもんね?
運べる量も多そうでかなり期待している。




