51、模擬戦
やるしかない彼の男爵は王に願い出て、他領軍と模擬戦をくり返すようになった。
戦い方はともかく「獣人相手に完勝する」って言葉が王の心を動かしたみたい。
模擬戦自体、新しい試みだからルールは好きに決め放題よ。
まず見晴らしのいい広い敷地を確保しまーす。……慣れてきたらいろんな地形を取り入れたいね。
陣地を決めまーす。……いまのところどっちだってそんなに変わんないよ。
数時間、準備する時間を設けまーす。……従来は奇声を上げて士気を高めたり相手を挑発しようと悪口を言い合ったりしてたそうで、そのようにする敵陣を尻目に、目隠しして穴掘ったり柵作ったりする某男爵陣。
だいたい太陽が中天に達したところで戦闘開始でーす。……古来からの作法らしいけど、これは夜襲し放題だわ。
治癒魔法士を置いとくのは主に馬のためだね。
矢に矢じりは付けてないし、武器は木製。それでもあの馬鹿力でぶん殴られると金属鎧が凹む。武器も壊れるけど。
卑怯な真似はしたくないって言うなら、致命傷を受けたと判断したら潔く死体置き場に移動すること!
これまで弱小と侮られてた某男爵領軍が連戦連勝。
フハハハハ、圧倒的ではないか!って言いたいところだけど、僅差ってことも多かった。
風向きが変わったのは本物の反乱軍を鎮圧してからだね。
勝った上に思いのほか自軍に損耗がなかったことで自信を付けて、尚且つそれも「模擬戦」で通した某男爵の株は大いに上がった。
もちろんそこにはロキ先生の影が。
まったく新しい戦法に不満があるなら口で言うか手紙でも書けばいいのに、反乱されちゃうと一族郎党皆殺しにしなきゃならないからね。
次の対獣人国戦を考えれば、無駄に人口を減らしたり土地を荒らしたりしてる場合じゃないのだよ。
戦法って言葉すらなかったところにそれを提唱してこの活躍。
褒賞金で借金も返せていまは子爵だっけ?
でもまだ「おめでとう」は言わないよ。獣人国戦をクリアすれば伯爵に返り咲くのも夢じゃないんだから。
一方で、オールドエイジたちの個人技がすごいことも認めざるを得ない。
局所的には勝っちゃうんだ。士気も上がるしね。
遊撃隊としてまとめるなんてこともしてみる。
後は訓練あるのみ。
よし、ここだ!って勝負勘はあるんだから、あとは周りと意思疎通することを覚えようか。




