49、某男爵
まあ私の場合はそれなりに格好がついて、ソイ先生が駆けつけるまで持ちこたえられればいい。
狐人族も本業は情報収集や伝達、交渉事で行くつもりだし。
さて栄えある生贄、男爵某は伯爵だった先代がやらかしてなんとか生き残った家の次男。ちなみに長男は当主と共犯だった。
大人しく無難にただただ静かに暮らしたかったところ、派手な嫁さんもらっちゃって商家に借金重ねてにっちもさっちも行かないらしい。
ちょっと横領しちゃおうかなぁ~……ちょっとくらいならわからないよなぁ~って悪心を起こしてもおかしくはない。
でも近頃は貴族たちも紙なんてものを買わされて、歳出入の一切合切を記録・提出しないといけないんだよ。
ヒーヒー言ってるところにお邪魔しますよ、『高名な学者先生方』が!
第二王子一行が自領を出て行ってほっとしてたのに、なんで戻ってくるんだって思っただろうね。
しかもわざわざまた使いを寄越して、今度は暗に晩餐に二人を招待するよう要求。
腰に王家の紋章が入った短剣を下げてるけど気のせいだよね。
今回、私がお留守番なのは私以外の満場一致で決定。
まあ、あんまり出しゃばると足元救われるのはわかってるさ。
周囲の思惑や疑心暗鬼で兄弟喧嘩なんてごめんだから、話を聞くだけで我慢するよ。
さてこの一行、騎士を除けばあとはキルヒャー先生の介助に付けたトムも、当の先生方すらも平民だ。
私の護衛として残ったソイ先生も侯爵家の令息ではあるけど妾腹で本人に爵位はないくらいだし。
しかしまあ男爵夫人はじめ向こうの使用人の態度が悪ければ悪いほどこっちには都合がいい。
元伯爵家がなんぼのもんじゃい。
こちらは第二王子の先生方、私の日頃からの気の遣いようを見るがいい。
最新のテーブルマナー(笑)くらい仕込んでありますわ、フフフフン!
主賓のキルヒャー先生は話題も豊富。
ホストの家族を飽きさせるなんてとんでもないと、自分の腿をこれ見よがしに叩きながら歴代の毒婦たちがどんな事故に遭い、また病死したか微に入り細に入り話したので男爵夫人は大変色白になったそうだよ。よかったね。
食後、人払いを済ませて男爵は額の汗を拭った……かもしれない。
まあオハナシがあることは馬鹿でもわかろうというもの。
そこからはロキ先生の独壇場だったとか。
うむ、よきにはからえ。




