42、村
三時間ほどして戻ってきたトムは、非常に困惑した様子だった。
「あの親子に気付かれぬようその所在を確かめよ」ってくわしく説明する間もなく送り出したからね。
「誓って真のみを申し上げます」
覚悟を決めた様子で報告をはじめたけど悲壮感はない。
どんな報告をしても理不尽に私が怒るわけないって信用してくれてるようでうれしいぞ。
トムの報告内容とすでにキルヒャー先生から教わっていた知識を合わせれば、突撃一択だ。
それでも純粋なる好奇心でトムが見た光景を見たいと思った私は、ソイ先生とトム、トムが合格を与えた兵士三人をお供に先行。
草原を抜け林を通り、きれいに耕された畑に囲まれた村が望める木立に潜む。
ソイ先生の指導とこの体がもともと持つ身体能力のおかげで木登りくらい朝飯前だ。
程よく時間を空けてキルヒャー先生が乗る馬車と、その周りを固める騎士及び兵士が登場するわけだけどさ。
飼われているのはロバとガチョウ。
比較的頑丈そうな建物は倉庫か。
中央には広場があって、時代遅れすぎていくらなんでも珍しい竪穴式住居が点在してる。
それでも丈夫な丸太の塀に囲まれた村の中には和やかな空気が流れていた。
狐が二本足で歩いてるけどな。
もう一度言っとこう、狐が服着て二本足で歩いてるけどなっ!
大人サイズなのは大人、ふつうの動物サイズは子供だろう。
ガラガラと音を立ててキルヒャー先生の馬車が村の門に近付いていくと、サッと四つ這いに。
子供はともかく大人はなんでそれで誤魔化せると思った?
一方で違和感のない人もいる。
その奧さんらしき女性に殴られて慌てて姿を変えるおっさん。
耳と尾っぽは残るけど、女がキラキラ光るパウダーを振りかけるとそれも見えなくなった。
もちろん《感知》はできるけどね。




