38、煎餅
一応貨幣は流通してるけど、巷では物々交換することも珍しくないようだ。
現に私たちも道中、訓練代わりに狩った魔物の毛皮と小麦や野菜を交換することもあるし、時々寄ってくる物乞いのためにわざわざ煎餅のような硬いパンを焼いたりする。
「案外旨いもんですなぁ」
栄養面を考えて極力ナッツを入れてるものの、甘味も卵もバターも使ってないからもちろん味はそれなりだ。
でもザクザクとした触感と焼いた小麦特有の香ばしさがあるので、騎士も兵士も見張りの時の夜食代わりにそれが余るのを楽しみにしてる。
割ってスープに入れてもなかなか。
これなら兵糧としてもいけるかな?
レインコートの実証実験も兼ねて多少の雨なら行軍するけど、あまりひどければ雨宿りすることになる。
寄らば大樹の陰で、タープも張ればだいぶマシ。
そこで一緒になった商人たちと話し込むこともあるし、晴れた日でも大抵みんな同じようなところで休憩するみたいで、フリーの娼婦が寄ってくることもある。
うん、どう見ても農家の主婦ですな。
同情心をあまり持たないようにしてることもあって、純粋に興味であれこれ話を聞いてみたいと思うんだけど、私の容姿は目立つしまあ立場もあって直に話をさせてはもらえない。
護衛を兼ねてるソイ先生はもちろん、いかにも破天荒そうなキルヒャー先生ですら止めるからなぁ。
代わりに騎士や兵士たち、もちろん先生たちにも自由な時間と金を与えて話を聞いてもらう。
私はあとで又聞きするわけだけど、それでもなかなか面白いよ。
もちろん重い話も少なくないけどね。
そういうのを聞くとつくづく私には為政者なんて無理だって思うけど、まあ全部一人でやる必要もないわけだしと開き直る。
だって、どう考えてもこれ以上不便な生活なんて耐えられないから。




