31、しばしの別れ
さすがにミシェルを旅に連れ出すことは許されなかった。
まあ深窓の伯爵令嬢だからね。城壁から外へ出たこともないんだよ。
それを言うなら第二王子である私はどうなんだって?
そこは話の持って行きようだね。
う~ん。まず兄である第一王子を次期王にしたい思いは、王であり王妃である両親とも宰相とも家令とも一致してる。
私は王になりたいなんて露ほども思ってないし、それはあちら側も兄自身も承知してるんだけど、まあちょっと色々やりすぎた。
武力を重んじる脳筋ばかりのこの国で剣の腕は不明、「魔法で魔物を倒すらしいよ?」くらいの噂しかない私が引っぱり出される心配はまずないんだけど。
このところの王国の変化に……まあ、はじめのちょっとだけど私がかかわってるって知ってる人は知ってるから。
ほとぼりが冷めるまで、私が城から離れるのは悪いことではないのでは?
ついでに王国内を回っていろいろ見聞きして、気になったことを報告しますよ。
こんなところかな。
ミシェルの父親である家令とも取引。
旅と比べれば大した危険じゃないでしょうと、お忍びで王都に出て買い物。
騎士団ぞろぞろ引き連れて森でピクニックもしたよ。
とても喜んでくれた。
「しばらくお会いできないのはほんとうにさみしいですけど、ダンカンさま、どうぞお体に気をつけて。おべんきょがんばってください。わたしも次にお会いするときに、ダンカンさまにほめてもらえるようにがんばります」
おおぅ……いくらでも褒めるよ。むしろいまから褒める所しかないよ!
涙の別れを前に準備は万端。
馬車はいつのまにかキルヒャー先生専用のワンルームになってたよ。寝る時だけ私がそこに居候させてもらう感じ?
まあ私もソイ先生も馬に乗って行くつもりだし。
一応、天幕にも凝ってみた。ガチョウの羽毛を詰めて寝袋も作ったし。
どちらにも魔蝶シルクの布を贅沢に使ったので王妃がお冠だったけど、可愛い息子のためだもんね。
最後は涙ながらに許してくれた。ハンカチ噛んでたのなんて私は見てないったら見てない。




