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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 魔人族/エヴィル編 ――
99/175

第99話「B級サメ軍団」


 反魔力同盟(アンチマギア)待機組は宿の屋上に集まっていた。

 街では大量の巨大サメが暴れ回っている、水も無いのにいつまでも元気だ……

 それどころか未だにサメはどんどん追加されている、また一匹こちらへ飛んでくる……


「エルエネミス流剣術・天燕(あまつばめ)



 ピキィィィーーーン



 そんなサメをシエルが真っ二つに切り裂いた。


「シエルおねーちゃんスゴイ♪ ユリアおねーちゃんも負けるな~♪」

「えっと…… シャロちゃんいつになく好戦的だけど…… 大丈夫?」

「アレは悪いサメです!」

「ん? サメに良いも悪いもあるの?」

「オバちゃんがよく言ってました!「イイ子にしてないと歯茎剥き出しの怖いサメが尾びれを齧りにくる」って」


 言われてみれば飛んでくるサメはみんな歯茎が剥き出しだった。


「おにーちゃんがシャロはイイ子だって言ってくれるから悪いサメはシャロのトコロに来ちゃいけないんです」

「あ…… うん…… そうだね……」


 ユリアは言いたいコトを飲み込んだ。


「えぇっとベルリネッタ様、イヅナ様は……?」

「既に純血種と接触してる…… この大型魚類たちがマスターに危害を加えないよう極力排除……」

「あ、なるほど、了解しました!」


 サメの魔物は地上でもなかなか死なないからね。


「それでは分業にしましょう、近くに飛んできたサメはわたくしが斬ります、ユリア様は狙撃に集中してください」

「はい、シエルさんよろしくお願いします」



―――


――




「《大型冷凍庫開放(アブソリュート・ゼロ)》」



 パキィィィン!!



 冷凍マグロよりガチガチの冷凍サメ一丁上がり。


「ご主人様! 右からダブルヘッドシャークが!」

「イヅナ君! 左からトリプルヘッドシャークが!」


「《大型冷凍庫開放(アブソリュート・ゼロ)》」


 迫りくるサメを瞬間冷凍してバックステップで避ける、すると……



 バゴォオオォン!!!!



 巨大ザメの正面衝突、お? 三つ首の方が少しだけ押し勝った。


「ご主人様今度は2時の方向斜め上からファイブヘッドシャークが!」

「えぇとえぇっと、左斜め上から1…2… シックスヘッド!」


 …………


 4は? 別にどうでもいいんだけど……


「《大型冷凍庫開放(アブソリュート・ゼロ)》」



 ドゴォォォン!!!!



 今度は両方バラバラだ、しかし元が巨体だからバラバラになってもかなり邪魔だ、谷底へポイ捨てしたいんだけどどっかに掃き出し窓みたいなの付いて無いかな?


「ご主人様ッ! 上ッ!」

「はぁ…… 今度は7……って、うぉっ!?」



 ズドォン!!



 今までと形状が違うからビビった! まるでサメとタコが一体化したようなフォルム! まさにシャークトパ…… アレ? 触腕が…… もしかして……


「タコじゃなくてイカかよ!!」



 ガァン!!



 凍らせたサメイカを蹴り飛ばす。

 いい加減鬱陶しくなってきたので、この騒ぎの元凶に向けて。


 しかし……



 ドジュウゥゥゥゥゥゥゥ!!



 魔子爵様は迫りくる冷凍サメイカという大質量体を手を触れずに溶かした。

 いや、それだけに留まらず、一気に燃やした。


 辺りに焼き魚とも焼きイカともとれる香ばしいかおりが漂った…… 一瞬だったけど。

 すぐに焦げ臭くなり、その匂いが消えたら相変わらずの生臭さに戻った。


「貴様…… 名は何という?」

「………… 神楽橋飯綱……」

「聞かん名だ…… これほどの高位の氷結魔法の使い手なら耳に入ってもおかしくないんだが……」


 そりゃそうだ、氷結魔法なんて使えないんだから噂なんか立つハズない。


「大した使い手だ、これほどの氷結魔法の使い手は魔王軍でもほとんど居ない」

「それはどーも」

「しかし残念だったな、俺は魔王軍でも随一の魔炎魔法の使い手だ、氷結殺しとも呼ばれている」


 ウソ臭…… そんな奴がどうしてB級サメ軍団を連れてくるんだよ? 炎系の魔物連れて来いよ。

 ただあの瞬間解凍の手際を見るに魔炎の使い手ってのはウソじゃ無さそうだ。



 スタッ



 ようやく降りてきた、それと同時にこの周辺へのサメ爆撃も無くなった。

 助かった…… キララとミトに被害が及ばないようにするのは結構神経使うんだ、日本人はサメ映画好きが多いけど実際に襲われたらトラウマになる。


「《魔炎(マエン)纏蓋(ロブ)》」



 ブォッ!!



 魔子爵様が急に燃え出した、気合とかじゃなくガチで燃えてる。

 予告なしに人体発火とかビビるんですけど…… 消防車呼ぼうか?


「これでお得意の氷結魔法は俺に通じなくなったな」

「はぁ?」


 《大型冷凍庫開放(アブソリュート・ゼロ)》を舐め過ぎだぜ?

 しかしアイツが超高熱を発し続けるなら凍らせるのも難しいだろう、直接触りたくないのも事実だ。

 なのでストレージから刀を取り出す、だが相手は何と言っても魔王軍の幹部、普通に攻撃しても刀が溶かされるかもしれない。

 だからちょっと小細工をしてみる。


「《殺人強奪呪氷剣(アイスソード)》」


 刀身部分の熱を全て収納する、振れば空気中の水分が凍りつきダイヤモンドダストのようにキラキラと輝く軌跡を描く……

 その代わり持ち手部分には熱を追加する、そうしないと手が凍りつくから。


「ご主人様…… そのネーミングセンスはちょっと……」


 どうやらキララはアイスソードの由来を知ってるらしい、確かに俺も言っててどうだろうって思った。(※39話・特別解説参照)


「俺の魔炎とお前の氷結で勝負というワケか、面白い…… ハァァァァッ!!」


 魔子爵の火力が上がる、さっきまではライターの火みたいだったのに今はターボライターみたいな勢いだ。

 このまま放置したらガス欠にならないかな? ちょっとゆっくり動いてみるか…… いや、やっぱやめた、先手を譲るのは得策じゃない。


 近くに落ちてるサメの頭を魔子爵目掛けて蹴り飛ばす。



 ドッドカッ!



 巨大ザメの頭のおかげで一瞬相手の視界から外れた、その隙に光操作でこちらの位置を誤認させる。

 そして一拍おいてその頭部の後を追いかけた。


「ふん、くだらん小細工を、《魔炎(マエン)障壁(リヴァ)》」


 魔子爵は炎の壁を作り出しシャークヘッドを蒸発させる、しかし俺の残像はそうはいかない、炎の壁など無視して突破していく!


「なにッ!?」


 予想外の事態に焦った魔子爵様が自分と残像の間にもう一枚炎の壁を作り出す、自分が纏っている炎が薄くなってることに気づいてない!

 はっ! 脇ががら空きだぜ!


流水運河斬り(ヴィクトール)!!」



 ズバッ!!



「!? グァッ!!」


 絶対零度に限りなく近い刃が魔子爵の脇腹を切り裂いた…… しかし切り口は凍りつき出血は皆無だった。

 もう一歩踏み込めば胴を真っ二つにすることもできただろう、だがまだ人の形をした生き物を直に斬り殺す覚悟が俺には無い……

 だから今回は別の仕留め方をする。


「グッ…… うぅ…… おのれぇぇぇえっ!!!!」


 魔子爵が右手を伸ばしこちらへ向ける、たぶん強烈なファイヤーボールか火炎放射をするつもりだ。

 この位置関係はマズい、避けたら街に被害が及ぶ、ウチの娘たちが宿で待機してるんだから。


「《魔炎(マエン)放射(ブラス)》」

「《鉄壁大金庫(シールド・オブ・イージス)》」



 ドスン!! ドドドドドドドド!!!!



 さっきストレージに入れたミスリル合金製の金庫を盾代わりに使う、もちろん随時熱を収納する氷結付与状態で……



 ドドドドドドドド―――



「ハァッ! ハァッ!」

「おぉ、さすがに頑丈だな」


 素晴らしい、熱による変形ゼロだ、さすがイージスの盾!


「ハァッ! ハァッ! な……何なんだお前は…… 瞬間移動に物質召喚……? ま、まさか……!」

「?」

「お前が英雄候補・マエダ・ショウマかッ!?」


 マエダ・ショウマって誰だっけ? あぁスーパーペガサスのコトか……


「あんなのと一緒にするなド阿呆!」


 俺さっき名乗ったよな? それに魔無(マナレス)だとまだ気付いて無い…… どうやら判る奴には判るけど、判らない奴には判らないらしい。

 あるいはコイツの探知能力が低いだけか? まぁいい。


「お前には俺の新技の実験台になってもらう」

「実験台だと!?」


 ずっと疑問だったんだよ、あの漫画のワンシーン。


「実験台……? この陰社交界にこの人アリと呼ばれた俺を実験台にするだと?」


 なんだその陰キャばかり集まる地獄みたいな社交界は?


「ふっざっけるなァァァァァッ!!!!」



 ゴオオオォォォーーー!!



 魔子爵、再びターボライター化。

 いいね、いい火力だ、それでこそ実験のし甲斐があるというものだ!


「ストレージ:熱収納」


 結構離れてても熱が届くほど熱いから耐熱防御しながら距離を詰める、5mの位置まで!


「喰らえ!! 《地獄直輸入溶岩風呂(インフェルノ・フォール)》!!」



 ドボッ!!



 魔子爵の頭から本物の溶岩をタップリかけてやった。

 これは先日温泉に立ち寄った際に火山で仕入れてて来たものだ。


「ぐっ……ギャアアアアァァァアァァァァァァア!!!!」

「フハハハハハ! 知らなかったようだな! マグマが炎の完全上位互換だというコトを!!」


 まぁこうなるよな? アイツは炎を纏ってるだけなんだ、殺人強奪呪氷剣(アイスソード)で斬りつけた傷が凍りつくってコトは炎に変化してるワケじゃない、当然熱耐性もない。


「アアアアァァァアァァァァァァア!!!!」


 つまり質量を持った高熱のマグマなら炎の鎧を素通りして本体に届く、それどころかアイツを守っていた炎から熱量が追加されてるかもしれない。


「アアア……アァァァアァァァァァァア!!!!」


 ようするにアイツは何の防御も無く熱々の煮えたぎるマグマをぶっかけられたってコトだ、つまり……


「ア……アァア……アアアアァァァアァァァァァァア!!!!」


 つまり……


「ギャ……アアア……アァァァ……アァァァァァァ……!!!!」


 ど……どうしよう…… 今さらだけど気づいてしまった……

 剣で真っ二つにするよりも遥かにエグイことをしてしまったというコトに……


「ア…… アァア…… アァ……」


 魔子爵はまるで映画で火だるまになった人みたいにヨロヨロと歩き橋の欄干に掴まるとおもむろに飛び降りた。



 ドボン! ジュッ!



 火だるまの魔子爵は水蛇の胴体に着水、浮かび上がってこなかった。

 そもそも泥水で中がどうなってるのか判らない…… 溶岩が冷え固まって重しになって沈んでしまったか?


 ゴ……ゴメンナサイ…… 完全にやり過ぎた。

 例え滅多に人が死なない物語だったとしても…… これは死ぬわ……





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