第93話「白い少女」
センセーに案内されて入った花畑の地下…… そこはダンジョンのように壁自体が発光していて、プランターが所狭しと並べられている、外も中もお花まみれだ。
「ここは?」
「フラワーガーデンの前身である組織「マッドネスチワワ」のアジトだった施設よ」
マッドネスチワワ…… 狂気の愛玩小型犬…… なんというB級ホラーにありそうなネーミングセンスだ。
「ずっと昔に偶然見つけたモノらしいけど、気温も湿度も夏冬関係なく一定で過ごしやすいの、ここでなら季節を問わず花を育てられるわ」
完全に温室扱いだな。
「ベルリネッタ、ここって」
「試験用テラフォーミングユニット……」
やはりArk絡みの施設か…… じゃあ没収だな。
「あ…… ちょ!ちょっとここで待ってて!」
「は?」
バタン!!
センセーは返事も待たずに近くの部屋へ入り扉を乱暴に閉めた。
ただちょっと乱暴すぎた…… 反動で扉がちょっと開いちゃってる、コレはもう見てくれと言ってるようなものだ。
だからちょっと部屋をのぞいてみる、一体どんな乙女の秘密が垣間見れるコトやら……
うわぁ…………
そこはやたらファンシーなグッズで埋め尽くされた部屋だった、そして開けっ放しのクローゼットの中には色違いの魔法少女コスチュームが掛けられてる。
曜日ごとに違う色の衣装を着てたのかな? 火曜日は赤色、水曜日は水色……みたいに。
やっぱノリノリだったんだな…… 今更だが見なかったコトにしてあげよう。
「あったあった、これよ」
センセーは書類の束みたいなのを持って出てきた。
「それは?」
「奴隷の資料よ」
「資料?」
「この資料を基に次に襲撃を掛ける奴隷商や悪徳貴族を選出してたの」
へぇ~…… まさかとは思うが俺の名前とか書かれてないだろうな?
いま一瞬キング・オブ・嘔吐って文字が書かれてた気が……(※書類は日本語表記)
「確か数日前だったから…… これね、BX61-Y21アンノウン、通称“白の少女”拉致」
「白の少女? 拉致?」
「5日前に近隣の宿場町近くで“白の少女”が行方不明になってる、ウチの情報網には拉致の可能性アリと伝わってるわ」
「その白の少女ってのが魔無なのか?」
「確証は無いけどね、ただ魔無ってのは見た目が特別だったりするんでしょ? キミのトコロのケモ耳少女みたいに種族すらよく判らない……って」
確かに…… 俺とシャロ以外は見た目がかなり特殊と言わざるを得ない……
巨乳耳長族に美肌獣人族、そしてスリム炭鉱族だ。
ついでにシャロも見た目じゃ判らないかもしれないが哺乳類寄り人魚族だしな。
「それで? 犯人や監禁されている場所の情報なんかもあるんですか?」
「えぇっとね…… 犯人は上級冒険者パーティー『エシクスチェイン』、ずいぶん皮肉の効いた名前ね」
「本当ですね」
……で? えしくすちぇいんってどーゆー意味?
あぁ、書類にちゃんと漢字表記があるじゃないか、倫理の鎖と書いてエシクスチェインと読ませる……か。
その名前でやってるコトが人攫いとは…… 確かに皮肉が効いてるな。
「んで、その『倫理の鎖』の雇い主がニホンバシの領主サト=リヨタ」
「あぁ、珍しい奴隷をコレクションしてるとかいう……」
なるほど、信憑性が増したな。
「恐らく領主邸か関連施設にとらわれてると思われる……だって」
ふむ…… フラワーガーデン、考えようによっては使えるかも知れないな。
盗賊を収穫して街へ卸すのも面倒だし……
「判りました、今回はフラワーガーデンのメンバーも見逃しましょう」
「よしっ!」
「そんなに嬉しいですか? あのむさ苦しい集団が自分の周りに残るのが?」
「生徒を守るのは教師の務めですから!」キリッ
ファンじゃなかったのかよ? そもそもアンタの守るべき生徒はいま目の前にいるのにガン無視してますよ?
ま、いっか。1年も学校通ってなかったら確実にダブってるだろうし。
「情報提供感謝します、ちょうど通り道だしサクッと……」
「ちょ! ちょっと待って! サックっとどうする気?」
「え? サクッと領主邸を襲撃して悪徳領主を拷問にかけて攫われた少女を助け出して通り過ぎます」
「なんでそんなに思考がデンジャラスなのよ!」
異世界で盗賊団の首領やってる人に言われたくない。
「あそこには何十人も虐げられてる奴隷女性がいるわ、荒事を起こされると困るのよ!」
それは盗賊団の都合でしょ? 俺達には関係ない。
「ただ襲撃して奴隷を攫うだけじゃ彼女たちを救えない、奴隷契約書を手に入れなきゃいけないのよ、そこで提案があります♪ 私たちと共同戦線を張らない?」
「生徒に犯罪者の片棒を担げとおっしゃるので?」
「領主邸襲撃を企ててたクセに今さらナニ言ってるの?」
ごもっとも。
「そもそも“白い少女”もすでに奴隷になってるかもしれないでしょ?」
「それは…… あり得るな……」
「つまり私たちの目的は一緒ってコト」
う~ん…… 盗賊団と一緒に行動をするってコトはリスクを伴う行為だ。
せっかくアヴァロニア王国での殺人未遂が有耶無耶になったってのに、これ以上犯罪行為に手を染めるのは危険な気がする。
だが上手くやれば襲撃の罪を盗賊団に擦り付けられるかもな…… うん。
「判りました、今回だけは手を組みましょう」
「えー……」
まさかのベルリネッタが不服そうだった、いつも通り無表情だけど注意深く観察するとほんのわずかに眉間にシワが寄ってた、そんなに汚染体が嫌いか?
―――
――
―
異世界生活30日目…… では無いんだよな、俺の認識では30日目なんだけど暦の上では1年以上経っている。
もう〇〇日目は意味が無くなってしまった。
まぁいい、とにかく一夜明けて俺たちは悪徳変態奴隷萌え領主の治める街ニホンバシへやって来た。
そこはまるでグランドキャニオンを思わせる巨大な谷に唯一掛かった橋のたもとの街。
橋の長さは1km以上、支柱は一切使われていないアーチ状の巨大構造物、そして何よりも異常なのは橋そのものが屋敷になっているコトだ。
中央部分は5階建てくらいだろうか? 当然橋を渡るためには屋敷の敷地を通らなければならない、国境や関所みたいなものだろう、料金所と言った方が適当かな?
地球の常識ではあり得ない橋、きっと魔法で作ったんだろう。
それよりもよくあんな所に住めるな? 俺なら絶対にお断りだ。
「はぁ~~~、やっぱり良いわねこのエアカー、快適…… 私に頂戴?」
「嫌です」
「じゃあ売って! 言い値出すから!」
「そんなコトより作戦はどうするんですか? 私に任せなさい……みたいなこと言ってたけど?」
「ちっ! 少しは恩師を敬う気持ちを持ちなさいよ、そんなんじゃ将来出世できないわよ?」
アンタに恩など欠片ほども無い、そもそもこの異世界転移だって元を正せばアンタが原因なんだからな?
こっちは慰謝料請求したいくらいなんだから。
「しょうがない、エアカーの話は後でするとして……」
だから売らないって。
「これから領主邸に潜入します、幸い私はある程度名前の売れた盗賊団の首領、偽の商談を持ちかけることが出来ます」
「なるほど…… 相手は違法行為に手を染める悪徳領主、商談内容次第ではアポイントメントすら必要ないかもな…… そして重要になるのは……」
相手は奴隷萌えの領主だ、当然……
「商談内容は「奴隷」についてね」
「ま、そうなるよね」
「それでね? 心苦しいんだけど、神楽橋クンにはフェイクの奴隷を出してほしいのだけど……」
やっぱりか!
「普通の奴隷じゃ商談に応じないと思うのよね」
そうだろうね、でもさ? だったら自分を商品にしろよ。
異能魔法少女とか世界に1人だけだろ?
もちろん作戦上それをするワケにもいかないコトは判ってるけどさ……
ウチが出せる奴隷は二人、キララとシエルだ。
だが……
「主さま、わたくしが参りましょうか?」
「いや、シエルは有名過ぎる」
シエルは世界的有名人だ、しかも超強い、エサとして使うには針がデカすぎる。
「そうなると必然的に……」
「わふ?」
「キララ君しかいないよね?」
「わふッ!? ムリムリムリムリムリムリムリムリッ!!」
「別に何もしなくていいから」
「絶対無理!! ご主人様、私を売る気!? 薄い本みたいに!!」
薄い本に奴隷売買のシチュエーションなんて…… あった気もするな。
「そんなに嫌がらなくても……」
「イヤに決まってるでしょ!! 変態領主のトコロなんかに行ったら裸にされて縛られて性的な触手とかけしかけられるんですよ!!」
あ~、そりゃ嫌だわ。
「それで感度ゥン千倍の媚薬使われて、淫紋つけられて、アヘ顔ダルブピースで記念撮影されて、ンホォって吠えさせられるんだ!!」
俺の思ってるシチュと若干ベクトルが異なる気がする…… それどっちかっていうと対〇忍……
まぁそんな目に遭わせる気は無いけどここまで嫌がると説得は難しいな。
ど~すっか……
「おにいちゃん♪ シャロがおにいちゃんのお役に立ちます♪」
「へ?」
「シャロがおにいちゃんの奴隷になるよ♪」
「なっ!? シャロにそんなコトさせられない!」
シャロはこの世界では非常に珍しいスレてない魔無だ。
だからこそこのまま歪むこと無く成長していって欲しい、いくらフリとはいえ奴隷の真似事などもってのほかだ!
「シャロはいるだけで俺の癒しなんだ、これ以上は働き過ぎになっちゃう、だから気にしなくていいんだ」
「いやし~?」
はぁ~、カワイイなぁ…… このまま穢れを知らずに成長して欲しい。
「あの…… イヅナ様、それでしたら私が……」
今度は巨乳エルフが立候補……って、めっちゃ顔色悪いんですけど?
「いや、ユリア…… 無理するな、今にも倒れそうな顔してるじゃないか」
「私などイヅナ様に出会えなければとっくにミミズの糞か奴隷になってました、イヅナ様のお役に立てるなら…… うっ……」
「待て待て待て! 泣くな! 泣くくらい嫌なら立候補するな!」
「泣いてません、大丈夫です…… これは……ミミズの搾り汁です!」
普通は汗が目に入ったとかだろ? 誤魔化すにしても例えが気持ち悪すぎる…… 相当テンパってるな。
「あの…… ご主人様、やっぱり私が行きます……」
「どうしたキララ? あんなに嫌がってたのに?」
「私って……ものすごく我儘に見えません?」
そうだね、他の子たちは自分から志願したり、純粋に役に立ちたかったり、泣くほど嫌でも我慢してた。
それらに比べると全身全霊全力で拒否ってたキララは我儘に見えるかも知れない……
でもまぁバンジージャンプと一緒だよ、飛べないからって責めたりしない、だって芸人じゃ無いんだから。
《特別解説》
『淫紋/いんもん』
エロ漫画で頻出する表現。下腹部の辺りにつけられてハート型がモチーフになっている場合が多い。
淫紋を刻まれるとエロいことが大好きになる。たぶん女専用、男についてるところは見たコト無いし見たくもない。




