第80話「零元素機甲・特殊機動兵器 ―エルスタル・フレイム―」
「おい…… どうするんじゃ? これ……」
「…………」
「2連敗じゃぞ? もう後がないぞ?」
「…………」
「何なんじゃアイツはぁー!! 口から破壊光線吐く犬なんていてたまるか―!!」
「陛下! 血圧血圧!」
「血圧なんかどうでもいいわー! 儂の血圧を下げたかったら何とかしろ!」
「大丈夫です…… 陛下……」
「大丈夫な要素など何一つないではないか!」
「万が一に備えて用意しておいた我が国最強の…… いえ、人類国家最強の戦力がたった今到着したと連絡がありました」
「最強の戦力だと? ま……まさか、あの者たちを最前線から下げたというのか!? そんなコトをしたら……ッ!!」
「えぇ、一応武装のメンテナンスの為として下げさせましたが承認を得ていない後退、周辺国家からのバッシングは避けられないでしょう」
「国としての信用に大きくかかわるぞ! 剣聖祭で……しかも対人戦で使用するなど……」
「我々はもう引き返せない所まで来てるのです、陛下! ご決断を!!」
(え? 決断って? 戦力後退させたのも儂の責任ってコト? お主の独断だろ?)
(最終決定はあくまでも陛下の意思に委ねる、そうしないと何かあった時にシッポ切りされる)
「さあ陛下! 我が国の名誉と威信の為に!」
「いや、アレを使ったらそれこそ名誉と威信を傷つけることになるのでは……?」
「そんなモノとっくに傷ついています!」
「えッ!?」
「今はそれが完全に失われるかどうかの瀬戸際なのです! 我らが偉大なる祖国、ギルベリル王国はあんな魔無の集団に敗北していいんですか!?」
「ぐ…… ぐぬぬ……」
―――
「…………」
なんか悪巧みしてるなぁ……(監視機で盗聴中)
やはりオーダー変更しといて正解だった。
「おに~ちゃ~ん♪」
おっと、今は次鋒戦の勝者を最上級のオモテナシで迎えなければ。
「おぉシャロ! よくやってくれたな♪ エライエライ♪」
「ふへへぇ~♪」
シャロを抱き上げ撫でまわす、もちろん頭だけな。
実際のところシャロは何もして無いんだけど、それでもお構いなしにシャロを褒めまくる。
早太郎はあくまで道具だ、褒められるのは使用者の方。
ホームランを打った選手がホームへ戻ってきた時、選手を無視してバットを褒め称えてる場面なんて見たコト無いからな。
でもまぁ、例え道具でも良い働きをしたモノは感謝するべきか……
「早太郎もよくやってくれた、シャロを守ってくれてアリガトな」
「オン!」
例え道具でも大事に扱う、日本人だからね。
「さて…… これで我々反魔力同盟の2勝だ、第3戦中堅戦、ベルリネッタ頼むぞ」
「イエスマスター」
「それで一つだけ注文がある」
「?」
「それは対戦相手を殺さずに勝つことだ」
「?? マスターは殺しかけたのに?」
…………
「え? あれそんな重症だったの?」
「イエス、瀕死の重傷……」
マジか…… やはりやり過ぎだったか。
ま……まぁいい、自分のコトは棚に上げて……
「コホン、とにかくやり過ぎないようにして欲しいんだ」
「この試合、殺しても失格にならない……のに?」
「あぁ、色々理由はあるが殺さない方が都合がイイんだ、頼む」
「イエスマスター、命令を受託」
下手に殺すと魔無への風当たりが悪くなるからな、反魔力同盟の庇護下にあるならともかく、そうでない同胞の立場が悪くなるのは避けたい。
おっと、そろそろか?
『さぁー! いよいよ後が無くなった選抜隊! ここから奇跡の逆転劇を見せてくれるのか!? 決勝中堅戦です!!』
ムリムリ、ここからの逆転劇なんて主人公以外にできっこないって。
『赤門から入場は秘匿部隊所属! マイケル・スミスーーーッ!!』
ΩΩΩ
出てきたのはマントにフードに仮面をつけた謎の人物。
まるで顔見せ前の四天王の一人みたいだ。
たぶんマイケル・スミスも偽名だろう、秘匿部隊って存在自体を明かしてはいけない気がするんだけど?
『青門からは光の国からやって来た! カグラバシ・ベルリネッターーー!!』
ΩΩΩ
歓声が野太い…… ロリコンが掛かったかな?
『え~と、始める前に聞いておきたいんだけど…… カグラバシってキミ内臓殺しの身内なの? 兄妹には見えないけど?』
「一番目の妻」
『は?』
「妻」
ΩΩΩ
さすが超高性能アンドロイド・ベルリネッタ、ギャグまでこなせるとは驚きだ、だが残念ながらセンスはイマイチなようだ、超ブーイング受けてる……
俺が……
「ご主人様いつの間に結婚したの?」
「いや…… ファミリーネームが無いとなんか寂しいなって思って、特に深い意味は無かったんだが」
俺はベルリネッタがロボットだって知ってるから気にしてなかったけど、観客から見ればまぎれもなく美少女だ。
魔無のクセに生意気だとか思われちゃったかな?
例えるなら…… 人気アイドルと結婚した一般男性K氏みたいな感じ。
なるほど、それは羨ましいな、嫉妬するのも判る。
………………
…………
……
「始めないの?」
『少々お待ちを、只今武器を運んでいますので』
武器を運んでる?
ゴウン…… ゴウン…… ゴウン……
「? 何の音だ?」
「おにぃちゃん、上~」
「上?」
見上げると巨大な空船が闘技場の真上に来ていた。
なにか…… ぶら下がってる? あ…… 落ちてきた…… って!? デカくね!?
ズシーーーン!!!!
「うわっ!?」
「きゃ~~~♪」
ΩΩΩ
闘技場には10mはありそうな巨大な……ゴーレム?が降り立っていた。
『お待たせしました、只今武器が到着しました!』
「これが武器?」
『魔導巨兵ギガンテスです! 我がギルベリル王国が所有する5機のギガンテスの1機でーす!!』
どっからどう見ても完全に巨大ロボットです。
何か良からぬことを企んでると思っていたが、ここまでやるとは…… マジいい加減にしろよ。
「ベルリネッタ」
「?」
「さっきの指示は厳守で…… だがそれ以外はもう好きにしてくれていい」
「イエスマスター、命令変更を確認」
『さーーー! お待たせしました! 決勝中堅戦始まります……が! ギブアップ・棄権はいつでも受け付けております!!』
あの実況解説、一応少女に人型決戦兵器を使うコトに躊躇はあるようだ、だがここの国王と大臣は人道って言葉を知らないらしい。
ならば世界中の人々が目撃するこの場で大恥をかかせて反省を促すのも一興か。
『それでは決勝・中堅戦…… レディ……ファイッ!!!!』
「行け! ギガンテス参號!」
ドスドスドス!!
珍しくトークバトルでは無くいきなり仕掛けてきた。
ギガンテスはベルリネッタに向けて右手を伸ばす…… どうやら殴りつけるのではなく捕まえるつもりらしい。
いくら殺傷OKの試合でも、この大観衆の目の前で少女をひき肉にしたら社会的に死ぬからな。
「プロトアームズ《Ⅴ+》零元素機甲・特殊機動兵器・部分展開」
対するベルリネッタの左側面から突如として巨大な影が現れた。
ガシッ!!
その影は迫りくるギガンテスの手首を掴み止めた。
「あ、出た……」
「なっ!? なにアレ!? ロ……ロボットアーム?」
「?? ゴーレムの……腕?」
ΩΩΩ
あれはベルリネッタが俺と初めて出会った時に使っていた巨大ロボットの腕だ。
いや? あの時見たモノより微妙にサイズが大きい? 別のパーツだろうか?
キュイィィィン――― メキメキッ!! グシャッ!!!!
ベルリネッタのロボットアームは掴んでいたギガンテスの手首をそのまま握りつぶした……
相変わらずのパワーである。
「参號!? バカなッ!! ミスリル装甲だぞ!!」
「…………」
ポイッ ガシャン!
握りつぶされ取れた右手がポイ捨てされる。
「お……ッ おのれッ!! 大魔導システム起動!!」
ギガンテスの胸部装甲が左右に開き、中から大きな水晶玉のようなモノが出てきた。
「光系統魔法《極限級・閃光閃》!!」
おぉ? 人形兵なのに魔法も使えるのか? しかも極限級?
さすがは最強戦力、単体での戦闘能力は勇者を軽く凌いでいるぞ。
太陽光を思わせる強烈な輝きを放つ光線が発射される。
もはや手加減とか完全に忘れてやがる……
「ファイヤーウォール:局所展開」
カッ!!!!
光の奔流が収まると、そこにはベルリネッタが立ち尽くしている。
まるで何事も無かったかのように……
「ば……馬鹿な…… 魔法完全耐性……だと?」
「ライトアーム:展開」
今度はベルリネッタの右側に巨大なもう一本のロボットアームが展開された。
「くっ! 地系統魔法《極限級・超硬質化鎧》!!」
今度は極限級の防御魔法…… 無駄なことを……
「参號! メテオアタック!!」
ドンッ!!
ギガンテス参號が大ジャンプをする、そのまま手足を広げ、ベルリネッタめがけて落ちてくる。
ジャンピングボディプレス…… ロボットでそんな無茶するヤツ初めて見た。
「ブースター:展開」
ロボットアーム上腕部分の装甲が僅かに持ち上がり、その下からブースターノズルが顔を出した。
「ブーストイグニッション」
ドォォォォッ!! ガァァァン!!!!
降ってきた大質量体であるギガンテス参號を真下から殴りつけた。
ギガンテスの落下は止まり、一時的に空中に停止した形になる…… そこへ間髪入れずに……
ガァン!!!! ガァン!!!! バキィン!!!!
ベルリネッタのロボットアームは左右の腕でギガンテスを空中に浮かせたまま交互に殴りつける。
まるでオラオララッシュだ。
ガァン!!!! ガァン!!!! ガァン!!!!
ガァン!!!! ガァン!!!! ガァン!!!!
ギガンテスは一発殴られるたびに部品が飛ぶ。
強制的に浮かされているため逃げることも抵抗もできない
「さッ… 参ごッ!!」
ドガァァァァァン!!!!
ギガンテス参號は最後の一撃でバラバラに吹き飛んだ……
あぶねー、部品が降ってくる! 無茶苦茶だ……
「戦闘終了……」
あ、よく見たら人形遣いは破壊されたギガンテスの部品が直撃してダウンしてる、仮に起き上がったとしても何もできないだろう。
「もしもし?」
『あ…… あぁ…… あぇ?』
「終わった……」
『あ、はい…… いや、しかし……』
「これにトドメ…… 刺さなきゃダメ?」
プラ~ン
気絶していた人形遣いがロボットアームで摘まみ上げられる。
トドメを刺さなきゃ終わらないなら仕方ない、恨むなら国王と大臣と司会進行役を恨め。
『い、いえ! 結構です!! 終了! 終了ーーー!! 勝者カグラバシ・ベルリネッタ!
優勝は反魔力同盟でーーーす!!』
ようやく終わったか……
しかし剣聖祭って何なんだろうな? 最後の試合に至っては剣術要素が欠片ほども無かった……




