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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 炭鉱族/ドワーフ編 ――
79/175

第79話「異世界日本人は剣や魔法ばっかりで関節技を使わない」


火炎球(ファイヤーボール)!!」

魔力殺し(エグゼキューション)!」



 バシュッ!



 飛んできたファイヤーボールをファイヤーウォールで切り裂く、こっちの勝ちだ。

 これ…… やっぱり誘いだよな。


 予選で俺が魔将を倒したことは当然相手も知っているだろう、遠距離から魔法を撃つだけで勝てる相手じゃないことくらい承知の上のハズ。

 大体このまま続けたって俺の勝利は揺るがない、なにせ相手は魔法を撃つたびに魔力を消費してるからな、俺の方は消費ゼロだ。

 いや…… 消費ゼロってワケじゃないか、電力とか正体不明の謎エネルギーは消耗されているハズだ、だが一個人の魔力総量と宇宙船の動力機関で発生するエネルギーとでは天と地ほどの差があって当然だ。


 つまり放っておいても相手は勝手に追い詰められていく、わざわざ誘いに乗ってやる必要はない。

 大体あの盾、絶対内側に何か仕込んでるぜ? 宇宙世紀じゃ盾に何か仕込むのは当たり前だったからな、ミサイルだったり、ビーム剣だったり、スイカバーだったり。


『カグラバシ・イヅナ、指導1』

「は?」


 なんだ? 指導もらったぞ? つーか指導1ってなんだ?

 まさかとは思うが…… マイナスポイント付けられたのか?


「何だ知らなかったのか? このまま何もしなければお前の負けになるぞ?」

「そういうのは先に言えよ!」

「常識だろ? いちいち説明するコトじゃない」

「ぐっ……」


 そりゃ確かにオリンピックとかでも試合ごとにルールブックの読み上げなんかしないだろうさ。

 つまり将軍様の効果のない魔法攻撃は積極性のアピールだったワケだ。


 そんなの知らねーよ、相変わらず異世界初心者に優しくない世界だ。


 ハァ…… つまり嫌でもアイツの懐へ飛び込まないといけないワケだ……


「ふぅぅぅ……」

「やる気になったか?」

「せっかく今後の仕事に影響が出ないように、無傷で敗退させてやろうと思ったのに…… 俺の気遣いを無駄にして、ゲロ吐く姿を衆目にさらしても知らないからな」

「ふっ、望むところだ」


 え? 望んじゃうの? アイツもしかしてかなりアブノーマルな趣味が……

 いや、コレも誘いだな、明らかにボディを撃って来いと言う挑発だ。


「いいだろう、俺に安い挑発をしたことを病院のベッドで悔やむがいい」

「こい!」


 お望み通り接近戦だ。

 だが俺は相手の掌でくるくる踊るアホではない。


「ストレージ解放:煙」



 ブワァァァ!!



「なッ…… なにぃ!?」


 以前、魔男爵と戦った時に収納していた砂漠直輸入の煙を解放する。

 アッという間に闘技場は煙で包まれた。

 俺はサポートがあるから相手の位置から情報まで丸分かりだが、向こうからはこっちが一切見えないだろう。

 もちろん探査魔法とかあるかもしれないから慎重に……いや、別に慎重に行く必要ないか、うん。


「おらっ! 喰らえ!! 《鉄棒直撃悶絶撃(メガトンホームラン)》!!」



 ガキィィィン!!



「ぐッ!?」


 横から脇腹を狙ってみたんだが盾で防がれた、やはり相当警戒されてるな。


「そこかッ!?」



 コン! コロコロ……



 何か投げた? まさか手榴弾?



 ブワァァァ!!



 小型の竜巻が発生! 煙幕がすべて吹き飛ばされた。

 おい! いま謎の兵器を使用したぞ! 反則じゃねーのか!!

 あ、これで反則負けならオーパーツ使いまくってる俺は予選敗退だったな。


「チッ、煙幕のせいで仕留めそこなったか……」


 アレに巻き込まれたら吹き飛ばされていただろう…… やはりカウンター狙いか。

 面白い…… ならば真正面からその鉄壁の守りを打ち砕いてくれる。


 クラウチングスタートの構えを取る、真正面からぶつかるという意思表示だ、異世界人に通じるかどうかは不明だが…… まぁ多分通じるだろう。


「…………」


 将軍様は盾で全身の殆どを隠す防御姿勢を取った。

 真っ向勝負だ。


「よーい……ドン!!」



 ドンッ!!



 10mの距離を1秒以下で一気に詰める! 盾ごとぶっ壊す勢いで……


「ッ!!」

「《昼食再注文(リバース・オブ・ランチ)超音速出前(スーパーソニック)》!!」



 バギン!! ビシビシッ!! ビキン!!



 刀の柄頭で全力打突。

 盾は不協和音を上げ、将軍様は勢いのまま後ろへ押される。



 ガガガガガッ!!



 あ、将軍様、石畳に突き刺さる魔法のスパイクシューズ履いてやがる、どうりでやたら重いと思ったら……


「ウオオオォォォォォオッ!!!!」



 バギンッ!!



 と……止められた!? この盾もファンタジー金属製か?

 だが代償は軽くは無いぞ?


「くくっ! これで決まりだッ!! 礫風爆……」



 ゴトン!



 何か重いものが落ちる音と共に俺の姿は消える。

 落ちたのはヤマダタイト製トゲ付き鉄球。


「な……ッ!? な……に?? 今まで目の前にいたのに……??」

「隙だらけだぞ?」

「!?」


 そう、今の攻撃は俺が直接行ったものではない、ストレージで視覚情報を偽り運動エネルギーを追加した鉄球を撃ち出したものだ。

 姿を消した俺は鉄球の横1mを並走して相手の背後に回り込む、そして攻撃の直前に将軍の斜め後ろから声を掛けた。

 今の攻撃で盾を持つ右腕は死んでいる、もはや防ぎようは無い!


 軽く飛び上がって……


「《強制床ペロ(フロゥリック)かかと落とし(フォールダウン)》!!」



 ズゴシャッ!!



 わざわざ声を掛けてこっちを向かせ、顔面(鼻)にかかと落としを叩き込んだ!

 うぇ~、顔にかかと部分が丸ごと埋まった感触がした……


 やべぇ…… 抜けねえ……



 ズ……ポンッ!



 って音が聞こえた気がする、実際にはグチャッて感じだったけど。


「……ッ!! ……ッ!!」



 ドサッ!



 将軍は前のめりに倒れた…… まごう事なき床ペロ状態だ。

 てか、やり過ぎたかな? 呼吸音は聞こえないけどピクピク動いてるし生きてるよね?


 予選からずっと必要にボディばかり狙ってたのはこの時の為だった。

 内臓殺しなんて異名をつけられたし、対戦相手はみんなボディへの攻撃を警戒するだろう。

 もちろん俺は腹パンにこだわりなんか無い、内臓殺し意外の攻撃もやり易ければ普通にやる。

 決勝トーナメントで対人戦になった時の布石としてやってた小細工の一つだ。


 無駄になるかもと思ってたんだが、ここまで完璧にハマるとは……な。

 どうにも異世界人ってやつらは純朴すぎる、きっと関節技(サブミッション)とかやったら度肝を抜かすことだろう、何故なら異世界日本人は剣や魔法ばっかりで関節技を使わない……


 絵づらが致命的に地味だからね……


『しゅ……終……了…… 決勝先鋒戦、勝者反魔力同盟(アンチマギア)カグラバシ・イヅナ……』



 シーーーン



 うわ、全く盛り上がらない、漫画なら顔面が「( * )(ケツ穴)」みたいになるトコロだけど、リアルだと出血量がハンパなく血だまり拡大中、ドン引きモノだよな。

 てか早く医務室に運んでやれよ、せっかく生かしておいてやったんだから。

 いま死なれると俺が殺人犯になっちまう、俺のためにも生き延びてくれ。


 ΩΩΩ(\オニノコジャ…/)

 ΩΩΩ(\キチク…/)

 ΩΩΩ(\アクマ…/)


 試合で相手を倒したら鬼畜扱いされました、納得いかん。

 きっと逆の展開なら大歓声が上がったんだろうなぁ……


「ご主人様…… さすがにちょっとやり過ぎ……」

「キララちゃんどうして目隠しするの? み~え~な~い~」

「あ……はは……は……」


 味方にまで引かれてしまった、やはり関節技(サブミッション)にしとくべきだったか。



―――



 さて…… 気を取り直して次鋒戦だ。

 実はここで予定とオーダーを変更してある。


『赤門からは第一分隊長! マイク・アシュレイーーーン!!』


 ΩΩΩ(\ワーワーキャー/)


 冷えに冷えた空気もようやく少し暖まってきた。


『青門からは渚のマーメイド! シャーロット・スピカーーー!!』


 ザワ ザワ ザワ


 そりゃザワつきもする、だって10歳女児だもん。

 最初はベルリネッタを出す予定だったけどシャロに変更した。

 理由? 次鋒戦なら相手にまだ棄権できる余地があるからに決まってるだろ?

 0勝2敗の中堅戦だと絶対に棄権できないからな。


 今も第一分隊長と貴賓席にいる国王陛下がアイコンタクトでやり取りしてる。


(ムリです! こんな小さい子に剣を向けるなんて!)

(やるんじゃ! お前が負けたらもう後が無いんじゃぞ!)

(だって俺の娘より小さいんですよ!)

(棄権とかしたらクビな)

(そんな! まだローンが……ッ!)

(家族を路頭に迷わせたくなければヤレ!)

(ムリムリムリムリムリ!!)


 ……とか言ってるのかな?

 果たして彼は軍人として命令に従うか、それとも?


『え~と…… 始める前に……シャーロットちゃん?』

「はい?」

『そのデッカイ犬は……なに?』

「ハヤタローです。シャロは歩けないからハヤタローが居ないと一人じゃどこへも行けないのです」


 この大会、従魔の持ち込みに制限は無かったハズだ。

 前回の準優勝者も剣闘犬とかいう大量に剣を背負った犬を連れてたからな。

 ましてや歩けない幼女を無理やり舞台へ上げたんだ、さすがに早太郎にイチャモン付けることは無いだろう。


 そしてそれが命取りになる。



 ガシャッ!



「ん? ユリア…… ナニしてるんだ?」


 見ればユリアは電磁投射狙撃銃(イレイサー)を取り出し構えていた。


「アイツがシャロちゃんに指一本でも触れたら頭を吹き飛ばします! イヅナ様、許可を!」


 えぇ~…… もしそれでアイツの頭が吹き飛んだら俺にも責任が発生しちゃうんじゃない?

 許可なんか必要ないよ、つーか指一本どころかシャロを怖がらせた時点で俺が殺る。

 ただまぁ……


「その必要はないと思うぞ」

「そうでしょうか? あの軍人が棄権する確率は低いと思うんですけど……」

「棄権は「すればラッキー♪」程度にしか期待してないよ」


 あ、そっか、ユリアとキララは早太郎の真の性能を知らないんだな。

 まぁどう転んでもシャロの勝ちだろう。


『お待たせしました! それでは決勝次鋒戦……開始するけどホントにイイの?』

「はい、いつでも行けます♪」

「オン!」

「いや…… マジで棄権してくれよ…… オレ幼女に剣を向けるために軍に入ったワケじゃないのに……」


 対戦相手が何かブツブツ言ってる、そんなに嫌ならさっさと棄権すればいいのに……

 まぁ軍人は上官の命令には逆らえない、ましてや国王直々に命令……というか脅迫してくるんじゃどうしようもないよな。

 ただ明らかに理不尽でモラルに欠ける命令だ、棄権してもバッシングはされないと思うんだがね。


『あぁあ、もうどうにでもなれ! 決勝・次鋒戦…… レディ……ファイッ!!!!』


 進行役のヤケクソ気味な号令で試合スタート!

 しかし両者+1匹は一歩も動かず互いに相手を見据えている。


 一応早太郎にはメッセンジャーアプリで「<殺すな」って指示してある。

 ちなみに返信は「ワオン>」だった…… ちゃんと通じているかは判らない。


「ハヤタロー、ご~♪」

「ワオ~ン!」



 キュイィィィン!



 あ、通じてねーなコレ…… 荷電粒子砲(仮)のチャージ音がする。

 さらば分隊長、国王の脅しにも屈せず剣を抜かなかったお前は立派だったぞ。


「オォン!!」



 ズビィィィーーーッ!! ドガァァァーーーン!!



 早太郎の放ったビームは分隊長をかすめ闘技場の壁に着弾、大爆発を起こした。

 おぉ! ちゃんと威嚇射撃だった! 想像以上に賢いぞあのワンコ!



 ビキッ!! バリーーーン!!



 あ、結界割れた、なんて脆い結界なんだ。


 Ω(\キャー)Ω(キャー)Ω(ギャー/)


 観客席は軽いパニック状態だ。


「あれ~? ハヤタロー外れたよ~?」

「ヘッヘッヘッ」


 どうやらシャロは一撃で決めるつもりだったらしい…… たぶん虫とか潰す感覚だったんだろう、子供の方がそういうの躊躇ないからな。

 つまり一言で言うと…… ヨウジョコワイ


「じゃあ次は当ててね」

「オン!」


「ちょっと待ったぁ!!」


 ?


「ギブアップ。棄権します」


 分隊長ギブアップ宣言、実に賢明な男だ。

 俺の思惑通り相手に棄権させることに成功した。


 思ってた棄権とはちょっと違ったけど……






《特別解説》

『床ペロ』

 床を舐めてる状態、戦闘不能で倒れている状態を指すゲーム用語の一種。

 最近あまり聞かなくなった気がする。


『( * )/ケツ穴』

 主にギャグマンガ、あるいはギャグシーンに見られる顔面の一形状。

 こぶしが顔面にめり込むと現れる、いわゆる「前が見えねェ」状態。


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