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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 炭鉱族/ドワーフ編 ――
70/175

第70話「またオレ何かやっちゃいました?」


「ハァ…… 呆れた」


 ヴェラ嬢に開口一番呆れられた。


 ここはギルド直営宿屋の一室、俺たち反魔力同盟(アンチマギア)が借りている部屋だ。

 上級冒険者にもなると結構いい部屋が借りられる、密談、社交ダンス、無差別級プロレス選手権、なんだってやれちゃう。

 そんな部屋へのこのことたった一人でやって来たヴェラ嬢、大会受付のレクチャーをしに来てくれた、ありがとうございます。

 勇者もようやく俺が安全な男だと判ったようだ、心配しなくてもヒトの女に手を出すような真似はしないぜ?

 相手が魔無(マナレス)じゃない限りな……


「まさかわずか半日で依頼を二つ、それも同時に終わらせてくるなんて…… そんなこと勇者パーティー(わたしたち)にも出来ないわよ」


 だったら素直に称賛して欲しかったところだが…… ここはアレだな? あの異世界伝統のセリフの出番だ。


「またオレ何かやっちゃいました?」

「なんでかしら? そのセリフ妙にイラッとくるんですけど」


 多分それは分かり切ってるコトを分からないフリしてるせいじゃないかな?

 でも異世界にやってきた日本人ってみんなこんな感じだろ? 恐らく英雄候補たちも同様のセリフを100回以上のたまってるハズさ。


「とにかくこれで条件は満たされたわ、後はこの書類に必要事項を記入して」

「あ~、ユリア、代筆頼む」

「はい、わかりました」

「そういえばイヅナは文字が書けないんだっけ?」


 仕方ないだろ、まだ異世界歴3週間程度なんだから。


「なら基本的なことは説明してあげる」


 面倒見がいいなぁ、さすがアホ勇者のブレインだ。


「まず剣聖祭は明日から、参加人数にもよるけど最初は予選からね」

「予選……か」

「団体で登録するのが一般的だけど、個人で出場する人も結構いるのよね」

「団体と個人、メリットとデメリットは?」

「そうね…… 試合・試練は基本的に代表一人で出るものだから団体なら試合の内容を確認してから得意分野の人を出すことができるわ、疲労やケガを負った場合でもすぐに交代できる。

 個人出場だとそういったサポートは受けられないけど、味方を分散することで仲間同士の試合の確率を上げて無傷での突破率を上げることができる」


 ふ~む……


「ちなみに勇者様は?」

「私たちは勇者の魂(ブレイブソウル)で団体登録してるわ。個人出場は単独で優勝できるだけの実力の他に運が必要だからね」


 確かに一枠での勝率は団体出場の方が上だろう。

 だが人海戦術が使えるなら味方を1000人くらい送り込んで全員を個人出場にさせれば一気に味方が千枠になる。

 例えるならチェスのコマ各種一つずつを集めたチームvs残りのコマ全部って感じか、相手に徒党を組まれると手も足も出ないだろうな。


 それが出来るなら個人出場の方が勝率は上だと思う。

 運と実力さえあれば決勝トーナメント進出者を全員味方で固められる、その時点で実質勝利が確定する。

 もっともかなり大規模な後ろ盾が必要だがな。

 ウチにはそんな大掛かりな組織は無いので……


反魔力同盟(アンチマギア)で団体登録……だな」

「それが賢明ね」


 まぁ戦力になるのは俺とベルリネッタだけだろう。

 接近戦ではユリアの持ち味が生かせないし、キララは自称非戦闘員だ。

 シャロは幼女……論外だ。

 いや…… ベルリネッタも出すべきではない気がする…… 対戦相手を●●してもOKなら最強なんだけど……


「ちなみに試合・試練って何するんだ?」

「本戦は試合によって違うわ、選手同士の対戦だったり魔物討伐だったり、予選は基本的にランダムで選ばれた相手と1対1の決闘よ」


 判ってはいたが結構血生臭い祭りだな。


「それランダムじゃないよな?」

「え?」

「優勝候補とか有力選手が予選でぶつかる事がない様に調整されてるハズだ」

「あぁ…… なるほど…… それはそうかも」

「大丈夫か?」

「? なにが?」

勇者の魂(ブレイブソウル)はウチに1勝をプレゼントしてくれるんだろ? 運が悪けりゃ反魔力同盟(アンチマギア)と予選で対戦してそのまま敗退だ。

 勇者的にそれでも大丈夫なのか? 教会に怒られたりしない?」

「ッ!?」


 その可能性を考えてなかったって顔してる、それは俺達の実力を知っているからだ、だがこの国の連中は反魔力同盟(アンチマギア)を知らない、その辺の下級冒険者レベルだと思われてる。

 予選がどのような形式かは判らん、だがもしブロック毎に分かれてたりすると反魔力同盟(アンチマギア)は優勝候補に勝ち点3を与えるための餌と認識されかねない。

 別にそれは構わない、だがそこで運が悪いと勇者パーティーは予選敗退、決勝トーナメントには進出できません……ってコトになる。

 予選敗退は勇者の沽券にかかわると思うんだが。


「そ…… それは運に任せましょう…… もし最悪の事態になったら…… 苦戦してください、フリでもいいから」


 あぁ、例え反魔力同盟(アンチマギア)に破れ予選敗退しても俺達が優勝すれば勇者の沽券はギリギリ保たれる……かも知れないな。


「本来勇者パーティーに配慮する必要なんか一切無いけど、今回に限っては協力者だ、もしもの時は激戦の末辛くも勝利を掴んだ……って演出をするよ」

「よろしく……お願いします、本当に……」



―――



「ねぇ、ちょっと気になったんだけど……」

「? なに?」


 ヴェラ嬢からの質問、何でも聞いてくれ。

 オレ神楽橋飯綱! 16歳乙女座! マナウイルスに感染してないトコロがチャームポイント♪ 只今彼女募集中♪


「あなた達が剣を持ってるところって見たコトが無いんだけど……」


 なんだそんなコトか、つまらん。


「あ~…… 剣かぁ…… 俺も常々フォースを使う人たちみたいな剣が欲しいと思ってたんだけどね」


 異世界と言えばやっぱり剣だよな、だってここ“剣と魔法の世界”なんだもん。

 魔法は残念ながら俺達には関係ないけど、せめて剣くらいは持つべきだよな、うん。


「剣を持ってないと出場できないわよ?」

「そうなの?」

「剣聖祭……だからね」


 そうか…… じゃあ仕方ないな、俺もとうとう剣デビューの時か!

 ん? あれ? 待てよ?


「それじゃヴェラは?」

「?」

「キミどっからどう見ても魔法使いだよね? 剣聖祭に参加できるの?」

勇者の魂(ブレイブソウル)では女僧侶(フラン)が教義の関係上刃物を持てないからサポート役に徹するけど、私の場合は……ほら」


 そう言うとヴェラ嬢は懐から彫刻刀サイズの刃物を取り出した……


「これが剣? これでどうやって戦うんだよ?」


 相手が素手なら何とか武器になるだろう、だが相手が普通の剣を持ってたら魔法使いのヴェラ嬢では太刀打ちできっこない。

 本物の銃を持つ相手に銀玉鉄砲で挑んでも銃殺間違いなしだ。


「こうやるのよ、魔力付与(エンチャント)炎魔(ファイア)



 ボオオオォォォ!



 彫刻刀からバーナーみたいな炎が噴き出した……


「それは…… 剣と呼んでいいのか? 魔法だろ? どう見ても」

「剣聖祭の出場資格は「剣を持って戦うコト」だからね、剣さえ持っていれば戦い方は何でも良いのよ」


 んなバカな、設定ガバガバだな。

 だがこれは朗報と言える、剣さえ持っていればマシンガンを乱射しても合法と言える。

 そうだ、いい機会だから以前思いついたストレージを用いた攻撃方法を仕込んでみるか、ちょうど資金にも余裕があるコトだし…… クックックッ……



 ガチャ



「イヅナ様、登録完了しました」


 ユリアが任務を終えて帰ってきた。


「おう、ゴクロウサン」

「私たちで最後だったみたいですよ」


 そりゃそうだ、受付は今日までで更にもう夕方だ、どうせ午後五時くらいで業務終了すんだろ。


「出場者名簿が張り出されてましたけど、壮観でしたよ」

「壮観?」

「世界的有名人がかなり来てます」


 え? マジ? 地方のお祭りレベルだと思ってたんだけど、オリンピックレベルの祭典だったの?


「ちなみに有名人って?」

「優勝候補に挙げられてる人達ですね、剣王評議会の“剣王”、魔導結社の“魔将”……」


 剣王と魔将か…… うん、魔の王にするワケにはいかないよな。

 剣王はともかく魔将が剣聖の直弟子を求めてやって来るってどうなの?


「それに極級冒険者パーティー《仮面騎士団(ペルソナ・エクエス)》の“騎士王”!」


 極級冒険者“騎士王”! ちょっと支配者層多すぎじゃない?


「あ、もちろん勇者さんのところも優勝候補に挙がってましたよ」


 すでに負けが確定してるから優勝候補に成り得ないんだよなぁ……


「それと……」

「それと?」

「えっと…… 英雄候補も一人来てるみたいです」

「げ」


 またスーパーペガサスか? それとも別の?

 いや、一応剣聖祭、あの時のメンツで剣を使いそうなのって白馬くらいしかいなかった気がする。

 だとしたら…… 白馬が来てる可能性も高いな。



 バン!



「それ…… 本当?」


 ヴェラ嬢が英雄候補ってワードに反応した、これ禁句だったか。


「は、はい、出場者リストに赤の太文字にアンダーライン付きで書かれてましたから」


 さっすが優勝候補の一角、表記からして特別感がにじみ出てる。


「英雄候補…… 悪いけど急用ができたわ、また明日会いましょう」

「あ、はい、お疲れっした」


 ヴェラ嬢退出、対英雄候補の作戦会議でもするのかね? しかし既に反魔力同盟(アンチマギア)に敗退することが決定してるのにどうするつもりだろう?

 まさか八百長試合の約束反故にするとか言い出さないだろうな?


 …………


 ま、反故にされたトコロで大した影響は無いんだけどね。


「それよりユリア、出場選手・団体のリストが張り出されてたんだよな?」

「はい、大盛り上がりでしたよ」


 盛り上がってたのか…… だったら当然アレがあるよな……


「よし、ちょっと買い物に行ってくる、ベルリネッタ、付き合ってくれ」

「イエスマスター」

「あのイヅナ様、買い物なら私が行きますよ?」

「いやいや、祭りの仕込みもしたいからな、手頃な刃物を買い占めてくる」

「?? なんで?」






《特別解説》

『またオレ何かやっちゃいました?』

 異世界定番の非常識セリフ。前世の記憶があるくせに何故か常識だけは引き継がれない。

 これに類似するセリフを吐くヤツはいわゆる「空気読めない奴」のコトである。


『銀玉鉄砲/ぎんだまてっぽう』

 昭和レトロ、テレビゲームが無かった時代の子供、主に男子が夢中(?)になったオモチャ。

 バネで弾丸を飛ばし、その殺傷力はタンスの角よりも低い。


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