第63話「オーパーツハンター」
TSoM-01 硬滅式・地龍殺し《ベヒモス》は非常に使いにくい武器だ。
まず威力がデカすぎるから味方施設で使用する場合は着弾位置を考えないと大変なことになる。
当然、目標との距離も重要だ、至近距離で使おうものなら自分も巻き込まれる…… まぁそこは安全装置があるから自爆するってことは無い、ただし安全距離を確保しなければロックが掛かってそもそも撃てない。
さらに相手が《龍種》の場合、条件によっては避けられる可能性すらある。
そしてエネルギーの充填の為、連射が利かない……
……とまぁ、これらの理由により今回は色々と小細工が必要だったのだ。
小細工1「切り札の存在を悟らせない」
確実に相手に当てるためにはギリギリまで見せないコトが重要、警戒していないトコロへ不意打ち気味に撃ち込むことが一番命中率を上げるからな。
だからわざわざ接近戦を主体とした謎の古武術《神楽神影流》の使い手を装ってみた。普通こんな奴がSF銃使うとは思わないだろ?
小細工2「冷静な判断力を奪う」
コレは簡単だった。何故なら俺は魔無だ、劣等種と侮っている相手にボコられれば誰だって冷静じゃいられない。
だがいま思うとこの作戦ちょっと失敗だったと思う……
そもそもこの世界で強い魔無が居たら、それは確実にオーパーツを使ってるってコトだ。
相手が冷静かつ頭の切れるヤツだったらそれに気づいて警戒していただろう。
つまり相手が脳筋だったから上手くいっただけ、運が良かっただけだ。
小細工3「絶対に当たる条件を整える」
接近戦は不利だと感じた敵が遠距離攻撃に切り替える、こちらが手の届かない上空へ浮き上がってくれた、これが非常に重要、ハイペリオンに被害を出さずに《ベヒモス》を使う為には地べたに居られると困るから。
そして一転攻勢に出ようとした瞬間に全く予想してない方向からの不意打ち攻撃。
視界は塞がれ注意力も散漫になる、これで条件は整ったわけだ。
他にもいろいろ細かい仕込みを入れたが見事にハマった感じだ、自分の才能が怖いね。
ただ今回、俺自身が接近戦をするという無茶に出れた要因はファイヤーウォールのバフ解除機能が大きい。
バフ解除…… つまり魔力によって強化されてるステータスを素の状態に戻すことができる、これさえあればドラゴンだって大きなトカゲと変わらない。
もちろん大きなトカゲだって十分脅威だ、人間vs恐竜で素手で勝利できる奴なんてハリウッドにだって居ないだろう。
だが俺にはパワードスーツの身体強化とアドヴァンスドサポートの知覚強化がある。
つまり今回の結果は成るべくして成った……って感じだ。
ブワァーーーッ!!
「お?」
周囲の目を覆っていた煙がベヒモスの作った真空に吸い上げられ視界が開ける……
おっと、目撃される前にSF銃を収納しておこう。
ミッションコンプr……
「ショウ様ァァァァァァァァッッッ!!!!」
うっさ……
スーパーペガサス先輩に揉まれてた女の子たちが半狂乱しながら集まって来た。
「ああっ! なんてヒドイ怪我! 誰か回復魔法を使えるヤツ連れてきて! 早くッ!!」
メディ~ック、呼んでるよ~。
てか、パーティーメンバー女の子で固めてるクセに回復役一人もいないのかよ?
異世界舐め過ぎだろ? これだからリア充は、きっと顔と胸のデカさで選んだんだ。
「なによこの変な黒いベルト? こんなもので圧迫するなんて、せめて魔法で止血だけでも……」
カチャカチャ…… ポイ
…………
スーパーペガサス・ガールズ採用条件を追加、公衆の面前で胸を揉まれても何とも思わない頭の悪さ。
俺が仕方なく提供してあげた中二ベルトが捨てられた…… なんて恩知らずな奴らだ、まぁどうせ後で回収するつもりだったからいいんだけどさ……
―――
――
―
その後無理やり連れてこられたのは半裸勇者のトコロの癒し担当フラン嬢だった、ほぼ強制連行だ。
勇者のコト蔑んでたくせに都合のいい時だけ利用するとは、フラン嬢も断ればいいのに……
あ、そういえば勇者パーティーは優遇される代わりに権力者からの要請を断れないんだっけ?
キライな奴でも助けてやらなきゃいけないなんて、勇者一行も大変だな。
「慈悲深きもの その御名におき 傷つき倒れし迷い子に 安寧と祝福を――― 《聖天使の祝福》」
パァァァーーー
まばゆい光がフランとペガサス先輩を包み込む。
「おぉ、千切れた腕を接合できるのか」
「超越級治癒魔法《聖天使の祝福》、あの子が使える最上位の回復魔法よ」
いつの間にか隣にヴェラがいた。
てかフラン嬢は確か浸蝕率C、特上級じゃなかったのか?
それとも自分の等級以上の魔法を使える天才か…… まぁ勇者パーティーの一員だしその可能性は十分にあるな。
「あの魔法は対象が生きてさえいれば欠損部位を再生させることすらできる、フランの魔力じゃそこまでは無理だけどね。
今回は斬られてからさほど時間が経ってないから無事接合できたけど」
「へ~、さすがファンタジー世界だな、そんな簡単に再生治療ができるのか」
「簡単じゃないわよ、あの魔法を使ったらさすがに今日はもう回復魔法を使えない、まだケガ人もたくさんいるってのに…… ホント忌々しい……」
ヴェラさんヴェラさん、心の声が漏れてますよ? 英雄候補に聞かれると不味いんじゃない?
「それよりもイヅナ! あなたが竜人を倒したって本当?」
「竜人?」
「呆れた、自分が戦った相手のコトも知らないの?」
デウスマギアの事ならこの世界の誰よりも知っているよ、多分キミらはアレが元人間って知らないだろ?
「竜人というのは古くから目撃情報がある伝説の魔物のことよ、その力は国を簡単に滅ぼせるとまで言われているわ。
かの六大厄災の中にも竜人が原因だと言われているモノが複数あるって話よ」
「げぇ…… 存在そのものが災害みたいな奴だな」
あいつ自身はまだ若い個体だったみたいだけど、育てば六大厄災に名を連ねるコトになってたのかもしれないなぁ…… 今なら《無限砂漠》分の空席があるからね。
「それで? どうやったの? どうせまた反則みたいなオーパーツ使ったんでしょ?」
『あぁそうだ、今回使ったのは硬滅式・地龍殺し《ベヒモス》といって、マイクロブラックホールを敵にぶち込む最終兵器だ。
これは対象を分子レベルまですり潰して別次元に廃棄する、この宇宙に存在していた痕跡すら消し去る恐るべき超兵器さ』
…………
なんて言えるワケない…… そもそも俺も原理知らないし、今のもただの推測だ……
「ちょっとした身体強化のオーパーツだよ」
「ちょっとした身体強化で竜人が倒せるわけないでしょ!」
ですよね~
「アナタの功績は勇者や英雄候補を軽く凌駕しているわ、そんなオーパーツ使い聞いたコトも無い! アナタ一体幾つオーパーツ持ってるのよ!」
オーパーツは魔無の生命線だ、そんなコト簡単に明かせるワケない、下手したらオーパーツハンターとか集まってくるぜ。
それにしても今日のヴェラ嬢はやけに突っかかってくるな、スーパーペガサス先輩の件でストレス溜めてたのかな? だからって俺で発散しないで。
―――
「…………」
「ショウ様、ア~ンしてください、今は血が足りないですから♪」
「…………」
「あの…… ショウ様?」
「…………」
―――
――
―
本日はダークウィードで最も高級な宿「ホテルインペリ・ダークウィード支店」にご宿泊。
なんでも今回の襲撃事件解決に多大な貢献をした我々の滞在費をギルドが全額負担してくれるそうだ。
…………滞在費とかどうでもいいから報奨金を出せよ。
と、言いたいトコロだが、肝心の予算はどこぞの英雄候補が全て持って行ってしまったため、出すに出せないってのが現状だろう。
他の冒険者たちも命がけで戦ったのに報酬ナシでめっちゃキレてた。
そしてその失われた予算は俺のストレージに入ってる…… この状況で金払えとはさすがに言えない。
ま、竜軍団撃退という功績に対して報酬がショボいけど仕方ない、せっかく滞在費全額持ってくれるんだ、アヴァロニア大陸に着くまでまったりと過ごさせてもらおう。
―――
――
―
深夜2時過ぎ……
ダークウィードの殆どが寝静まった頃、人目を忍ぶように建物の上を移動する者がいた……
「ホテルインペリのスウィート…… この下か」
地上20階建てで、ダークウィードで最も高い建物であるホテルインペリの屋上に現れたのは前田翔馬だった。
彼の異能魔法《空間支配》の前ではどんなセキュリティーも無力。
この力を使えば例え大統領官邸の秘密の部屋にだってカンタンに入れる。
「ここに神楽橋が泊ってるのか」
ホテルには一応警備兵がいるが、基本的に出入り口を固めているため屋上には誰も配置されていない。
だが今は少々訳が違った。
キィ……
「!?」
誰もいないハズの屋上へ通じる扉が開かれた。
「こんな時間にこんな場所へ…… 何の用?」
「お……お前は……」
現れたのはベルリネッタだった。
「神楽橋と一緒にいたガキか……」
「再度質問…… こんな時間にこんな場所へ何の用?」
「用だと? そんなの決まってるだろ、あいつのオーパーツを貰いにきたんだ。
俺の魔法は強力だがその分消費魔力も大きい、だがオーパーツは魔力消費ゼロで使えるそうだな? 俺が持つに相応しい、だから貰いに来た、強制的に……な」
「つまり強盗目的…… というコト?」
「それは見解の相違だ、俺は世のため人のために力を付けなければならない、劣等種の魔無よりオーパーツを持つのに相応しい人間なんだ」
「無駄…… オーパーツは所有者権限が無いと使えない…… どうしても欲しいなら長時間放置され所持者の無いモノ…… 探したほうが早い」
「それはつまり所持者がいなくなれば俺の物になるってコトだろ?」
前田翔馬がニヤリとほくそ笑む。
「…………」
「だったら簡単だ、神楽橋を殺して俺が所有者権限を得ればいい」
「ハァ…… これだからマナウイルス感染者は……」
「あん? ウイルス?」
「マナウイルス感染者、固体名「マエダ・スーパーペガサス」を敵と認定…… これより排除する」
「その名で呼ぶなクソガキッ!! やれるもんならやってみろッ!!」




