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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 人魚族/マーメイド 編 ――
60/175

第60話「お前は経験値が高そうだ」


― ルーファス・バレンティア視点 ―


 それは何の前触れもなく始まった。

 竜の群れの襲撃……

 ワイバーン100匹以上の群れによる襲撃は小国なら確実に亡びるほどの厄災……


 こういった事態は数百年に一度の割合で起こっている、そして何故か高位の冒険者が多くいる場所で発生する。

 今ダークウィードにはチャラい英雄候補の他に偉大なる勇者が二人もいる、そして高位の冒険者も多く集まっている。


 群れがワイバーンだけなら何とかなったかもしれない…… しかし何故か群れの中にドラゴンが混ざっているのだ。

 そして……



 ドガアァァァーーーン!!!!



「な……なんだ……アレ?」


 竜の群れを率いていたのはドラゴンと人間を足して二で割った様な奇怪な魔物。


「まさか…… 伝説の竜人……か?」


 かつて幾つもの国を滅ぼし忽然と消えた竜の群れの伝説があった。

 その竜たちは竜と人の中間のような姿のモノに率いられていたと…… その伝承に語られる竜人によく似ているのだ……


「竜人を倒せば竜の力が手に入るって伝説の……」

「竜の……力……」


 頂点を目指す冒険者にとって竜人は恐怖でもあり憧れでもある。


「お……俺がッ!!」

「バカッ!! 止めろ!!」


「…………」


 一人の若い冒険者が竜人を討つべく飛び出した。

 だが……



 ガキィィィン!!



「ッ!? 結界!?」


 竜人の周りには不可視の結界が張られていた。


「…………」

「う…… うおおぉぉぉおぉぉぉおッ!!」



 ガガガガギンッ!!



 男は持てる限りの力を振り絞って連続で剣撃を叩き込む、しかし結界にはヒビ一つ入らない。


「くそッ!! 何なんだこの硬さッ!?」

「煩わしい……」

「ッ!?」



 ボンッ!!



 竜人のシッポが僅かに揺れた瞬間、冒険者の頭が吹き飛ばされていた。

 いま何が起こった!? 殆ど見えなかった…… だが!


「ッ! みんなさがれェーッ!!」


 上級冒険者では歯が立たない、恐らく特級冒険者でもほとんど何もできないだろう。

 ならば偉大なる勇者が立ち上がらなければならない!


「エルエネミス流剣術・信天翁(しんてんおう)空断(からだ)ち!!!!」



 バキィィィーーーン!!



「これは……」

「よし!! イケる!!」


 俺の攻撃なら奴の結界を破れる!


「なるほど…… オリハルコン製の聖剣の力か……」

「これでとどめだ!! 火炎斬り(ファイアスラッシュ)!!!!」



 ガキィィィン!!



「は?」


 結界は確かに破った…… にもかかわらず剣は見えないナニかに阻まれ竜人まで届かなかった。


「結界が一枚だけとは言っていないぞ?」

「なッ!? ズルいぞ!?」

「聖剣を持つというコトはお前が勇者か…… あまり魔力が高く見えないから気付かなかったぞ」

「んな!? 余計なお世話だッ!!」

「そうでもない…… ここへ来たのは勇者と英雄候補を殺すのが目的だからな……」

「ッ!?!?」


 そう言いながら竜人が右手をこちらに向けて掲げた。

 その瞬間……


「下がりなさいルーファス!」

「ッ!? モモ姉ッ!!」


 真後ろから接近してきたモモ姉が脇をすり抜け竜人の結界に細剣を突き立てる!


「光系統魔法《超越級(オーバード)閃光閃(ライトレーザー)》!!」



 カァァァーーーッ!!!!



 ぐあぁぁぁ~~~っ!! 目……目がぁっ!!

 目を閉じてなお視界を塗りつぶす強烈な閃光が竜人を結界ごとのみ込んだ……様に見えた。


「ハァ……! ハァ……!」

「くっ! モモ姉、光魔法使うなら最初に言っといてくれ」

「う……? うそ……」


 ようやく目が慣れてきた俺の目に映った者は、その場に留まる竜人の姿だった。

 倒せないまでも遠くに吹き飛ばせるだけの威力はあったはずなのに…… しかし実際には竜人はまるでその場に縫い付けられたかのように微動だにしていなかった。


「素晴らしい…… 私の結界が二枚も抜かれるとは……」

「渾身の一撃……だったんだけどね」

「え? 二枚? 俺は一枚…… チッ!」


 プライドに10ポイントのダメージ! 後でフランに回復魔法を掛けてもらおう。


「詠唱破棄で超越級魔法を使い、尚且つこの威力…… 勇者の力…… それもその聖剣の力か?」

「………… さぁ? それよりあなたって見た目と違ってお喋りなのね?」

「そうだったな…… どうせすぐに殺す相手だ、会話など不要」


 あ……あれ? 物凄く蚊帳の外じゃないですか?


「ッ!!」


 その時、突然頭上に強烈な殺気が発生した。

 そして次の瞬間……



 バチィーン!!!!



「ぐわっ!?」

「きゃっ!?」


 俺とモモ姉は横から何かに攻撃され思いっきり吹き飛ばされた。


「《空間支配(デイルーラー)次元分断(リッパー)》!!」



 ビシッ!!



 殺気の主はあのチャラい英雄候補マエダ・ショウマとかいうヤツだった。

 アイツ……ッ! 俺とモモ姉ごと攻撃しやがったッ!! これだから英雄候補ってヤツは!


 いや…… それも重要だが、いま奴が放った攻撃は……



 ピッ…… パキーーーン!!



 竜人の結界をすべて破壊していた…… 今まで微動だにしなかった竜人が動いていた、つまり初めて回避したのだ!

 そしてそんな攻撃をヒトに向かって放つとは異世界人の倫理観はどうなってるんだ? くそっ!


「へぇ? 魔物のくせに人をかばうのかよ」


 そうだ、あのやたらと長い竜人の尻尾で殴り飛ばされたんだ、まるで丸太で殴られたような衝撃だったけど、間違いなくチャラ男の攻撃からかばわれた。

 何故だ?


「私の獲物だ…… それ以外の理由はない」

「! 人語を解する魔物か…… お前は経験値が高そうだ」


 竜人が俺とモモ姉をかばったのは心底ムカつく理由だった。

 それからチャラ男、なんだよ経験値って? 経験とは日々の努力と積み重ねだろ?




― 前田翔馬 視点 ―


 勇者二人を事故に見せかけて始末するつもりだったのに竜人によって防がれた。

 コイツ…… 余計なコトしやがって!


 この島にいる魔物は全部特殊ゴーレムで魔力を一切持っていない、つまり倒しても経験値を得られない。

 こんな貧乏くじを引かされてようやく巡ってきたチャンスだったのに!

 勇者二人を一度に始末すれば英雄候補達の中でも一歩抜きんでた存在になれたはずだ! それを!


 さすがにこれだけ目撃者がいる中で改めて勇者を殺すワケにもいかない、次は勇者たちも警戒するだろうし……


 仕方ない、せめてこの竜人を殺して経験値を得るか……

 まてよ?

 コイツが勇者たちを助けたのは俺と同じく経験値を得るためだったんじゃないか?

 だとしたら相当知恵が回る魔物だ、そういうヤツは得てして大量の魔力を秘めている、加えて勇者を圧倒するほどの戦闘力。


 もしかしたら…… 期待できるかもしれない、等級が上がるほどの経験値を!



「どうやら結界に自信があるようだが俺の前では無意味だぞ?」

「空間干渉系の異能魔法…… お前が英雄候補か……」

「ほう? 知恵は回るようだな、ならば解るか? 俺はどんな防御も切り裂ける」

「大した障害ではない」



 ピクッ!



 言ってくれる…… なら避けれるものなら避けてみろ。

 両手に極小の次元断裂を発生させ指で弾く、どんなモノでも貫く見えない弾丸《空間支配(デイルーラー)貫通断裂(ペネトレーター)》だ。



 ビビッ!


 ス―――



「!?」


 竜人はまるで見えているかのように弾丸を避けた。


 バカな!? 貫通断裂(ペネトレーター)は速度は大したことないが見えず聞こえない認識不能弾丸だぞ!? 一体どうやって!?

 何かしらの方法で察知されているということか? そういえばさっきの不意打ちにも気付いていたな……

 探知系魔法? しかしどんな魔法でも次元断層は探知できないハズ…… 一体……



 ドンッ!!



 まばたきした瞬間、10mは距離を取っていたハズの竜人がすぐそこまで迫っていた。


「なっ!? 速ッ!?」


 装填していた貫通断裂(ペネトレーター)を放つ!

 しかし当然のように避けられる。


「くそっ!!」



 フッ―――

  ブオン!!



「ハァ、ハァ」


 何とかかわした……が……


「瞬間移動か……」


 ちっ! 《空間支配(デイルーラー)》最大の切り札《空間転移(テレポート)》のカードをいきなり切らされた。


「クッ! なぜ…… 見えない攻撃がそんな完璧に避けられるんだ」

「なんだ…… そんなことも解らないのか?」

「ヤロゥ…… だったら決して避けられない攻撃をするまでだ! 《空間支配(デイルーラー)次元収納(インベントリー)》」


 異空間から取り出したのは一本の槍。


「雷光突撃槍!」

「槍……?」

「これはかつて6英傑の一人とかいうヤツが作り出した人造神器だ。穂先にはオリハルコン、内臓魔力が尽きるまで加速直進し続ける投擲槍だ」

「それが決して避けられない攻撃か?」

「ふ…… 今に判る!」


 槍にありったけの魔力を込める!


雷帝の一撃(プラズマストライク)!!!!」


 雷光突撃槍を竜人に……ではなく、全く関係ない方向へ全力投擲!


「!?」

「さあ踊れ! 《空間支配(デイルーラー)合わせ次元鏡(インバース)》!!」


 放たれた槍は空中で唐突に消え、竜人の背後に突然現れた!


「!!」



 ズギャッ!!



 竜人の超反応で辛うじてかわしたが、左の翼を大きく損傷した。

 そして槍はまた唐突に消えた……


「大した反射神経だな? だが次はもっと速くなっているぞ?」

「ふん!」


 竜人が再び結界を展開した。

 その直後、真上に現れた槍が結界を二枚破壊しすぐに消える。


「ほう?」


 確かに物理攻撃の投擲槍は結界を複数枚張れば防げる、だがそれこそこちらの思う壺だ。

 何故なら……



 ズギャッ!!



「!!」


 結界の内側(●●)に現れた槍が竜人の脇腹をえぐった!!

 空間支配(デイルーラー)はたとえ結界で守られていようとも、何の抵抗もなく内側に干渉できる。


「ハハハハハッ! そろそろ反応が追い付かなくなってきたな? あと何秒持つかな?」

「…………」



 ドンッ!!



 次の瞬間、先程と同じく竜人が猛烈なスピードで距離を詰めてきた。


 ふ…… 接近してくることも想定内だ、だが残念だったな? 俺には空間転移(テレポート)が……



 ドッ



「!?!?」


 いきなり背後から何者かに突き飛ばされたかのような衝撃が走る!

 振り返って見ても何もない……


 なんだこれは!? いや、今はそれどころでは……

 しまった!?


 想定外のコトに気を取られ反応が一瞬遅れた。

 慌てて空間転移(テレポート)を発動させるが……



 ズバッ!!



 接近してきた竜人の攻撃を受けていた。

 なんとか致命傷は避けられたがその代償はでかく左腕が切り飛ばされていた。


「ぐ……ぐあぁぁぁーーーッ!!!!」

「終わりだな」

「ぐ……くそッ!!」


 ふざけるな! 俺が……この俺がこんな所で……ッ!!

 次の一撃で…… あと一撃で倒せるんだ! 倒してさえしまえば腕は回復魔法で繋げられる!


「殺すッ!! 殺す殺す殺すッ!!」

「無駄だ、これが人間族(ヒウマ)最大の弱点「《魔痕(スティグマ)》からしか魔法を出力できない」だ。

 片腕を失ったお前は今までの様な連続転移攻撃を使えなくなった、それ以前に痛みでまともに魔法制御もできないだろう?」

「ふざッ!! ふざけるなぁぁああッ!!!!」

「そしてやられたことで冷静な判断ができない……」



 ヒュッ! ズドッ!!



 竜人の長い尻尾が残っていた右腕の手の平を刺し貫いた!


「ギャアアアァァァァァァァア!!!!」

「これで魔法は使えなくなった…… 転移で逃げることもできない……」


 竜人は手の平からシッポを抜き頭に目標に狙いを定めた……


「これで終わりだ……」



 ドスッ!!






《特別解説》

『経験値』

 異世界に輸出されまくっているゲーム的概念。

 どんなに訓練しても経験値が一定値を超えないと決して強くなれない理不尽なシステム、そんな世界でダイエットをしても経験値が一定値を超えない限り体重は1mgも減らないのだろうか?


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