第59話「ドラゴンとワイバーンの違いってナニ?」
異世界生活14日目……
結局監視者は襲ってこなかった、きっと俺の隙の無さに恐れを成したのだろう。
或いは俺たちがダンジョンに戻ってしまったので諦めたか…… 多分後者だ。
今回のお出かけで早太郎が店に入っても文句を言われないコトが判った、冒険者の街だからな、もしかしたらテイマーって職業があって従魔を連れてる奴がいるのかもしれない。
異世界モノで犬系の従魔と言ったら十中八九フェンリルだ、ひょっとしたら周囲からは早太郎はフェンリルと認識されてるのかもしれない。
ただフェンリルといったらもうちょっと精悍な顔つきをしてるモノだ、大きさはともかくあんな平和そうな顔したフェンリルじゃ少々迫力に欠ける気が……
いい機会だし島にいるうちに一回シャロにおつかいを頼んでみるか、ココなら何かあってもすぐに対応できるし、上級以上の冒険者が怯むなら今後も安心できる。
ま、しばらくは引きこもりつつ展示品の品定めでもしていよう。
どっかに搭乗型のパワードスーツないかな? 五倍以上のエネルギーゲインがあってマシンガンをくらってもビクともしない特殊合金製のヤツ。
―――
ビーーーッ!! ビーーーッ!! ビーーーッ!!
突如鳴り響く警報…… 短い安息だったな、カムバック安息!
アレ? これサポートの警報じゃない、施設内に流れてる警報だ。
「ベルリネッタ、何が起こっている?」
「現在…… ハイペリオンT-Mは無数の汚染体による侵攻…… 受けてる。《監視機》からの映像経由…… スクリーンに表示」
おぉ! 100インチ空中ディスプレイ!
あ、ちなみに100インチって適当だから、横幅2mくらいかな? 日本人にはインチって分かり辛くてなぁ、帰れない俺には関係ない話だがメートル法にして欲しい。
「これは……」
ディスプレイに映し出されたのは蝙蝠の群……じゃない、大きさは5~6mありそうだ。
この独特の羽……
「もしかしてドラゴンの群?」
それ絶対ヤバイやつだろ? 下手すりゃ国が亡びるレベルの……
「いえ、これはワイバーンの群れですね」
ユリアが横から解説してくれた……のはいいんだけど……
「今更だけどドラゴンとワイバーンの違いってナニ?」
「ドラゴンは上位竜、ワイバーンは下位竜と呼ばれてます、危険度にはかなりの差があって見分けかたは前足の有無で判りますよ」
「前足?」
「前足と翼が独立しているのがドラゴン、前足と翼が一体化しているのがワイバーンです。
ただ翼が無いドラゴンもいるので全てがこのケースに当てはまるワケじゃないですけど、とにかく前足が無い竜はワイバーンです」
……と、いうコトらしい、この世界ではね、余所の世界ではどうかは知らん。
だが確かにゲームとかでも四本足+翼のドラゴンの方が上位種っぽかった気がする。
「ワイバーンにも色々な種類がいて、ここに映っているのは大分小型な種みたいですね、大きい種だと20mはあったりするんですよ? それに鱗の色が属性を現しいてると言われるし、シッポに毒が有ったり……」
ワイバーンマニア? めっちゃ饒舌だな。
放っておいたらいつまでも大して興味ないワイバーンの解説を聞かされそうだ。
え~と、別の話題は…… おや?
「そうすると…… この群れ、ドラゴンが1匹か混ざってるみたいだな」
「エッ!?」
ワイバーンより一回り大きくて前足の有る竜がいる。
映ってるのはこの固体だけだけど、もしかしたら他にもいるかも知れないな……
もうちょっと色とか形とかデザインを変えてくれよ、分かりにくい。
「そんなッ! あり得ません! ワイバーンとドラゴンが一緒に群れを成すなんてッ!!」
「そんなに珍しいコトなのか?」
「珍しいコトじゃなく、あり得ないコトなんです!」
「そうはいっても実際に…… だったら統率する個体がいるんじゃないか?」
例えば世界の半分をくれるヒトとか。
「そんな存在がホントに居たら世界なんてとっくに滅ぼされてますよ」
「だったらこの現象は……」
ピ
「見つけた……」
「は?」
「この汚染体の群れ…… 統率している個体」
ベルリネッタが何やら空中をタッチすると別ウインドウが開き一体の魔物が映し出される。
そこに居たのは人型の……なに?これ?
身長は2m弱、トゲトゲの全身鎧を身に纏い、背中にはドラゴンと同じ皮膜翼とゴジラ並みに長いシッポ……
その姿はヒトというよりも悪魔に見えた。
「浸蝕率S…… これは『龍種』です」
「なにッ!?」
『龍種』…… マナウイルスに浸蝕されつくした人間の成れの果て…… つまり元人間……
全然人間に見えないな、獣人族より人間に見えない。
だがその力は恐らく勇者をはるかに上回る…… 半裸勇者を基準にすると大したコトない様に感じるが……
「コイツの目的は何だと思う?」
「たぶん…… 経験値稼ぎ」
経験値稼ぎとはずいぶんゲーム的ワードだな。
「ココにはいま勇者二人と英雄候補一人がいる…… それらを殺してマナウイルスを吸収することが目的…… だと思う……
デウスマギアになって…… あまり時間の経っていない若い個体に見える……」
「なるほど、まさしく経験値稼ぎだな」
つまり魔無の俺たちはアイツの経験値稼ぎの対象外ってコトだよな?
勇者たちが経験値をたっぷり溜め込んだメタルだとすれば、俺たちは経験値ゼロの背景オブジェクトだ、そもそも破壊の対象にならない。
つまり高みの見物を決め込も……
ドガアァァァーーーン!!!!
え…… ちょ…… めっちゃ島を攻撃してくるんですけど?
ゲームだと破壊不能オブジェクトでも現実世界ならいくらでも破壊できる…… マジヤバくね?
「ベルリネッタ、この島って迎撃システムとか無いのか?」
「魚雷なら装備されてる…… 上空からの攻撃に対処はムリ…… 設計されてない。
上からの攻撃は別の攻撃用ユニットが当たる予定だった……」
そりゃそうか、元々は巨大宇宙船の一部なんだもんな、内部の警備システムはともかく外部からの攻撃なんかいちいち想定してないよな、だってフロートユニットだもん。
しかしどうしたものか…… 勇者たちがヤラれるのはいい、経験値が多い獲物はみんなが目の色変えて狩に行くものだ、それこそ絶滅させる勢いで、それが自然界の掟だ。
でも生息域そのものを破壊するのはダメだ、やり過ぎだ。
生息域が残っていればまた経験値の高い個体が集まってくるかもしれないだろ?
こうなってくると俺たちの手で敵を倒さざるを得ないのか?
しかし結論を出すのはまだ早い。
「勇者たちがアイツを倒せると思うか?」
「………… 彼らが勝利する確率は5%ほどと予測……」
「え゛ 5%? なんで? 低すぎない?」
「単純に格が違う…… 魔力を用いた戦闘では総魔力量が勝敗に直結する…… それはつまりマナウイルスの保有量が多いというコト……」
そうか…… 勇者たちはまだヒトの姿をしているが、デウスマギアはヒトの姿を保てないほどマナウイルスを溜め込んでるんだ。
「それじゃ5%の根拠は?」
「彼らが協力し合った場合にのみ…… 勝利の可能性が発生する…… でもそれはあり得ない……」
あぁ~、勇者と英雄候補って仲悪いもんなぁ……
「さらにもう一つ問題が……」
「まだあるの?」
「仮に彼らがもしデウスマギアを倒せたとしても…… そのマナウイルスを吸収して新たなデウスマギアに成るだけ…… 根本的な問題は何一つ解決しない……」
「あぁ~~~」
ソレがあったか。
メタル同士が戦ったら勝ったほうが経験値を総取りしてレベルアップするだけだ。
「結局デウスマギアは俺たちが処理するしかないのか」
マナウイルスに絶対感染しない俺たちが。
「マスターにお知らせしなければならない情報…… 一件あります」
「ん? なに?」
「当機の武装にデウスマギアを滅ぼせるモノ…… ありません」
「え!? マジで!?」
あの惑星を貫通するビーム砲じゃダメなの?
「戦闘・勝利すること自体は…… 問題ない……」
あ、そうなんだ、やっぱりうちのベルリネッタが最強だな。
「デウスマギアを完全に滅ぼせる武器…… Arkでもたった三種しかない、マスターにお渡しした『TSoM-01 硬滅式・地龍殺し《ベヒモス》』がその一つです」
えっ!? そんな貴重なモノをなんでドコにでもいる平凡な高校生に持たせてるんだよ!?
…………
まぁそうだよな、地龍殺しだもんな、龍種を倒せる武器って最初から言ってたのと同じだ。
「それじゃベヒモスを返すから……」
「ムリ…… 試験機の当機には龍殺しの使用権限…… 無い」
「え…… それってつまり……」
「マスターがやるしかない」
…………ッ!!
なんか…… よ~く考えたら放置でイイ気がしてきた。
アイツは魔無を襲わないだろうし、こんな深い階層まで潜ってこないって♪
ドガアァァァーーーン!!!!
ディスプレイには戦っている冒険者ごと島を破壊しているワイバーン&ドラゴンの姿が映し出されている……
くっそ! どう考えても放置はダメじゃん!
いくら巨大な島でも世界最強クラスの龍種が暴れたら沈むかもしれない、それはハッキリ言って困る。
ハァ…… 行くしかないか。
《特別解説》
『世界の半分をくれるヒト』
RPGの古典イベント、「ドラゴンクエスト」のラスボス竜王のコト。
取引に乗ると闇の世界をくれるらしい、どうせ世界の半分をくれるなら女だけの世界をくれればいいのに。




