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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 人魚族/マーメイド 編 ――
56/175

第56話「シャーロット・スピカ」


「はむ…… むぐ…… ん~……」


 人魚族(マーメイド)の少女はキララに用意してもらった飯を一心不乱に貪り食っている……

 俺の膝の上でだ。


 ちなみに移動時は俺がお姫様抱っこしている、足が無いからね、仕方ない。

 海では潜れず陸では歩けない、さらに魔法まで使えないとなれば手厚い保護が必要になるワケだ。

 たぶんこの世界で一番生存率の低い魔無(マナレス)だ、むしろよくこの歳まで生きてこられたものだと感心する。


「けぷ、ごちそーさまでした」


 あれ? もういいのか、身体小さいから食べる量も少ないな。


「んしょ、んしょ」

「?」


 身体の向きを変えて横座りになった、その足(?)で降りるつもりか?



 ガシッ! ギューーー!



「ぎゅ~~~♪」


 違った、抱き付かれた……


「ご主人様?」


 いやいや! 俺は何もしてないぞ!? だからその目ヤメロ!

 あ、一応キララの予備のキャミソールを着せたから全裸じゃないぜ?


 しかし俺なんでこんなに懐かれてるんだろう? 何かしたっけ? もしかして身体から血の匂いでもしてるのかな?

 まぁ、嫌われたり警戒されてるよりずっと話がしやすいし良しとしよう。

 美少女に抱き付かれるの……嫌じゃないしね。


「さて、一息ついたところで自己紹介をしようか」

「ふぇ?」

「俺の名はイヅナ、神楽橋飯綱という」

「イヅナ……おにいちゃん」


 おにい……ちゃん…… イイ。

 目覚まし時計では決して得ることのできない充足感・幸福感がその響きには確実にある。


「それでそっちが……」


「ベルリネッタ……」

「ユリアリーデ・エルフィアナです、ユリアと呼んでください」

「大神キララ、わたしもキララお姉ちゃんって呼ばれるとうれしい」


「あ……はい」


 若干引いてる…… きっとキララのせいだ。


「シャロはシャーロット・スピカといいますです」


 シャーロット・スピカ、愛称シャロ……ね。

 うんイイね、名前も可愛らしい。


「シャロはここに来る前の経緯を覚えてるか?」

「?」


 あ、ダメだ、な~んにも覚えてませんって顔してる。

 さてどうするか?


「マスター、彼女の経歴…… 少しだけ記録が残ってる」

「記録?」


―――

――


 ここのデータベースに残されていた記録によると……


 シャロは叔母であるレズリー・スピカに育てられたらしい。

 保護者がいたのか…… そうだよな、泳げない人魚族(マーメイド)がこの歳まで生きてこれたのは保護者が存在していたからに決まってる。


 ちなみに泳げないワケではないらしい、むしろ他の人魚族(マーメイド)より泳ぎは得意だった、ただし水中呼吸ができないだけ。

 それ故に海の中で生活できないシャロを育てるのは相当大変だったようだ。

 人魚族(マーメイド)が生きるには大量の水が絶対に必要、シャロは潜ると溺れる、沿岸部で半陸上生活をせざるを得ない、そのため骨格強化の魔法を常に使い続けなければならない。

 さらに人魚族(マーメイド)ってのはその美しさから非常に狙われやすい種族だ、平たく言うと奴隷として大人気。

 暮らせる場所がかなり限られてるのに、同じ場所に長く留まることができない……


 まるで逃亡者の様な…… いや、それよりも遥かに厳しいハンデを背負った生活を送ってきたようだ。


 そんな生活を約10年…… レズリー・スピカは精神的にも肉体的にも限界を迎えた。

 むしろよく10年も持ったと感心する。

 そこで全てを放り出したとしても誰にも攻められないと思う。


 だがレズリー・スピカは最後の希望としてある場所を目指した…… そう、俺たちの目的地でもある《ルース》だ。

 その旅の途中でこのダークウィードにやって来たのだろう……


 記録はここで終わっていた……

 レズリー・スピカのその後については判らない、長年の無理が祟り命を落としたのか…… あるいはシャロを預けて海に帰ったのか……

 どちらにしても220年前の話だ、生きてはいないだろう。


 それとシャロの母親のコトに関しては一切の記載はなかった。

 まぁ叔母が育てていた時点で本人には伏せておきたい事情があったんだと予想できる。

 なのでこの話題には触れないでおこう。



「??」


 今の話を聞いても当の本人は他人事って顔してる。

 220年前の話だからなぁ、忘れたのか? あるいは凍結中に記憶を操作されたか?

 開頭手術を行った形跡は…………無いな。


 ま、仮に覚えていたとしても、もう会うことの出来ない人たちだからな、余計な世話は焼くべきでは無い。


「さっきから気になってたんだけど……」

「?」

「身体…… もう完全に乾いてるよな? なんで足に変化しないの?」


 人魚族(マーメイド)は身体が乾くと尾びれが足に変化するって話じゃ無かったっけ?

 もしかして魔無(マナレス)の影響か? 身体が変化するなんて如何にも魔法っぽい力だもんな。

 だとしたらこの子は一生人間形体になれない? それじゃ子作りどうするの? もしかして鮭みたいに卵を産んでそこにぶっかけるの? つーかその後死ぬんじゃね?


「あ~、それはたぶん彼女が成人前だからですね」

「成人?」

人魚族(マーメイド)の成人は個人差があるけど12~17歳くらいで、それより前に身体が変化することは無いそうです」


 ………… ユリアは成人って言ってるけど、それたぶん子作り可能年齢のコトだよな。

 今はまだ幼いシャロもいずれは美しく成長するだろう、なので大事に保護しながらその時を待つとしよう。

 どうか足が生えますように…… 鮭プレイはお断りだ。


「…………」

「~~~♪」


 それよりもどうしても気になるので誰か教えてください!

 ナゼこんなにも懐かれているのか?


 確かに異世界主人公ってのはモテる! 下手すりゃ鼻ほじっただけでも「トゥンク」とか言って(ヒロイン)が勝手に惚れてくる、恋愛フラグがガバガバのチート生物だ!

 だが俺にそんなチート能力は無い、あったらセレスティーナ姫との間にもフラグが立ってたハズだ!


 説得力の無い恋愛フラグには何か裏があるんじゃないか? って疑いたくなるくらいには捻くれてるんだよねオレって。


 …………


 もしかして…… 刷り込み(インプリンティング)……か?

 人魚族(マーメイド)は成人するまで陸に上がらない、つまりシャロは生まれて初めて男という生き物を見たんじゃ無いだろうか?

 初めて男を見た時、運命の相手と思い込むインプリンティングが発動する……


 即興で思いついた説にしては割とあり得る気がする。

 もしこの仮説が正しかったとしたら人魚族(マーメイド)ハーレムを作るのも容易いぞ!

 成人したての人魚が遡上してきたトコロを地引網かなんかで一網打尽にしてやれば、アッという間にハーレムの完成だ!


 ふむ…… ルースに着いたらイイ感じの河を探して罠を仕掛けてみようか、一度入ると出てこれなくなる感じのヤツ…… 全長5mくらいの。


 おっと、思考がわき道にそれてしまった。

 とにかくシャロが俺たちと共に行くことを拒むことは無いだろう、そもそも一人じゃ生きてけないし、俺にメロメロ(※死語)だからな。


 しかしそうすると一つ問題が発生する。

 何といってもシャロは歩けない。

 この施設内なら車椅子でも用意すれば自由に動き回れるだろう、しかし一歩でも外に出ればそうはいかない。

 中世ヨーロッパに毛の生えた程度の文明レベルではバリアフリーの概念なんて存在しない。


 ずっと俺がお姫様抱っこしてるってワケにもいかない、そんな状態で街中を歩けばお巡りさんこっちです!されるに決まってる。


「なにか乗り物を用意しないといけないな」

「マスター、それなら良いの……ある」


 おぉ! ベルリネッタが頼もしい言葉を!

 セグ〇ェイみたいなのいっちょ頼むぜ!



―――



「ヘッヘッヘッ」


「…………」

「…………」

「…………」

「うわ~♪ でっかいワンコ……だよね? 初めて見たぁ~♪」


 ベルリネッタが用意した乗り物?は予想外の巨大な犬……


「キララの親戚?」

「いや…… ウチは黒オオカミですから」


 確かにオオカミというよりはグレート・ピレニーズに似てるかな?


「というか、なんで生物がいるんだ?」

「生物……じゃない」

「は?」

「最初期型…… 試作エクスマキナ」


 キララじゃなくベルリネッタの親戚だったか……


「元々は対象の護衛と介護……目的で設計された、この姿は本体表面のナノマシンの配列を操作して創り出してる」

「ね、ね、おにいちゃん、触ってみてもいいかな?」

「あ……あぁ……」


 シャロを巨大ワンコの背中に乗せてやる……


「うわぁ~♪ フカフカぁ♪」

「ヘッヘッヘッ」


 フカフカなんだ…… なんというクオリティー、本物のワンコにしか見えん。


「と……とにかく今日からソイツがシャロのコトを助けてくれるはずだ、まぁ…… 仲良くな?」


 見た目はモフモフだけど、中身はきっとZO●DSみたいなのが入ってるんだ、たぶんライガー系。

 おぉ、強そうだ。


「シャロの……ワンコ♪ ねぇおにいちゃん、この子名前なんて言うの?」

「名前? え~と……」

「名前はない…… 開発コードはSe-Do」

「し~……ど? 可愛くない!」


 まぁ試作機の開発コードだからな、名前が無いと不便ってノリで適当に付けたんだろう。


「ねぇおにいちゃん、この子に名前つけて♪」

「え? オレ?」

「うんうん♪」


 俺に任せていいのか? パグにクシャ太郎って名付ける男だぞ?



 キラキラキラ☆



 うっ! シャロが目をキラキラさせている…… つーかみんな俺をガン見してくる、そんな目で見られると断れないし変な名前も付けられない。


 そうだな…… デッカイ犬…… 犬といえばキララだ、キララの妹枠ってコトでクララとか?

 …………

 ダメだ、むしろ介護が必要そうな名前に聞こえる。


 う~ん、白い犬、シャロを守ってくれる白い大きな犬……


「あ、早太郎」

「ハヤタロ?」

「決めた! お前の名前は早太郎だ!」

「ハヤタロー♪ 今日からキミの名前はハヤタローね♪ おにいちゃん、アリガトウ♪」


 あ、受け入れられちゃった……


「ご主人様……」

「う……」

「剣と魔法の世界で純和風名の「早太郎」ですか?」


 だってぇ…… シャロを守ってくれそうな気がするんだもん……


「イイね! なんかそのギャップがイイ感じです!」


 いいんだ…… ならきっとパグ(クシャ太郎)もいい名前なんだろうな。

 俺のつける必殺技名も庶民臭さと凡人臭さを感じていたが、きっとセンスがいい名前なんだろう。


 うむ、自信がついたぜ!






《特別解説》

『早太郎』

 隣の県まで妖怪サルを退治しに行ってくれる霊犬。


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