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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 人魚族/マーメイド 編 ――
55/175

第55話「ハイペリオンT-M」


 ーーーーーーン


 ほとんど音もなく降りていくエレベーター、乗り心地自体は日本のモノと大差ないのだが……


「ふおおぉぉおぉ~~~♪ このエレベーターが降りていく感覚! 懐かしい~!」


 なんかキララが身悶えてる…… 一体なにに感動してるんだお前は?



 チーン



 扉が開くとそこは先程とは打って変わって天井の低い普通サイズの部屋だった。

 真っ暗だが計器類から漏れる光でさほど広くない部屋だと判る。


「ベルリネッタ、ここは?」

「中央管制室…… ここでFF-191・ハイペリオンT-Mのシステム掌握…… する」

「ハイペリオンT-M?」

「この島の正式名称…… 元々は調査船、水上用フロートユニット…… だった」


 フロートユニット、だから1000年もの間沈みもせず海を彷徨ってたのか。


「一部免疫機能が稼働してた…… そのおかげで下層は殆ど汚染されてない…… 保存状態……かなり良い」

「それじゃ治療用ナノマシンとかは?」

「生産プラントは未搭載、少量だけど備蓄アリ」


 よし! 不老不死の妙薬Getだぜ!

 何といってもSF超科学の産物だ、きっと核さえ無事なら上半身を吹っ飛ばされても復活余裕だろう!

 一つ問題があるとすれば俺の核がドコだか分らないってトコロだな、取り合えず頭だけは死守しよう。


「それじゃベルリネッタ自身の補填はできるか?」

「それは不可能です」


 やはり何でもかんでも上手くはいかないか。


「ここに配備されているの……あくまで汎用機のみ、ただ…… 我々の役に立つもの…… 手に入ると思う」

「? 例えば?」

「汎用型ナノマシンと備蓄エーテリウス粒子…… 使えばプレアデスの稼働予定時刻……1000時間は短縮可能」

「おおっ! マジかッ!」


 素晴らしい、ここは正に宝島じゃないか。

 お宝はすべて俺たちで頂いてしまおう、汚染体どもにはナノマシン一粒だってくれてやるものか!


 ……というか、コレって極級・攻略依頼『ダークウィード制圧』を既に達成したも同然だな。

 だがこの島の制御権を素直に渡すワケにはいかない、この島は巨大なオーパーツだ、渡せるワケがない。

 う~ん…… このまま海を彷徨っててもらうのが最善かな?

 ま、それは追々考えていけばいい。


「低層システム掌握完了、第2級管理権取得、FF-191・ハイペリオンT-M 第一次システム起動」



 ヴォン フィィィィィン―――



「お?」


 ベルリネッタがシステムを起動させると真っ暗だった部屋が明るくなり大量の立体ディスプレイが浮かび上がってきた。


「成功したか」

「イエスマスター」


 ディスプレイには現在ダンジョンアタックしてる全冒険者パーティーが映し出されているようだ。

 スーパーペガサス先輩のハーレムパーティー、半裸勇者のハーレムパーティー、姫勇者の逆ハーレムパーティー……

 なんでどいつもこいつも異性でパーティーメンバーを固めるんだ?


 まぁ俺もヒトのことは言えないワケだが……


「今現在のダンジョン攻略の進捗率ってどれくらいなんだ?」

「7.5%程です」

「たったそれだけ?」

「侵入者の95%、第1層を突破できない」


 まぁ判らないでもないな、ここのゴーレムやたらめったに強そうだったからな。


「それで保護対象はどこに居るんだ?」

「24層、最重要機密区画」

「?? 24層?」

「イエス」

「俺はてっきりどこかの冒険者が奴隷として連れてきたのかと思ってたんだが?」

「対象は220年前に保護された…… 人魚族(マーメイド)の少女」


 イヤッフォ~イ! ついに来たぜ人魚族(マーメイド)

 俺も勉強した、この世界に暮らす《六種族(セトラ)》のコトを…… その中でもとりわけ《人魚族(マーメイド)》のコトを……

 神秘の生命体 人魚族(マーメイド)…… 海の中では下半身が魚の形態になっているが、陸に上がり身体が乾くと下半身が人間と同じく足に変化する。


 そして彼女たちはなんと女しかいない種族なんだ、しかも全員美人! 女だけでどうやって繁殖を?と思うところだろう。

 なんかね、単為生殖できるらしいよ、地球でもドチザメとかシュモクザメが雌しかいない環境下で子供を産んだなんてニュースがあったっけ……

 ただそれはあくまでもレアなケースだ。


 本来は他種族の男との間に子供を作るらしい。

 大事なことなのでもう一度言うけど他種族の男との間に子供を作るらしい!


 分かっているさ、過剰な期待をすると獣人族(ビスト)の時みたいに落胆する可能性があるコトは……

 しかし奴隷商の話からもその可能性は限りなく低い、間違ってもアマビエ様みたいなのが出てくることは無いハズだ!

 きっと俺の予想通りな美しい人魚姫が出てきてくれるに違いない。


 …………


 ん? 220年?

 人魚族(マーメイド)って耳長族(エルフ)並みに長い寿命を持ってるのだろうか?

 まさか昔は少女でした……とかいうオチじゃないだろうな? 人魚のミイラみたいな干乾びた人魚姫が出てこないだろうな?


「その人魚族(マーメイド)は220年も生きてるのか?」

「シールテクト凍結…… されてる」


 シールテクト凍結? コールドスリープのようなモノか?


「シールテクト凍結は…… 対象が持つ特異な性質のための特別措置……だったようです」

「特異な性質?」

「対象は人魚族(マーメイド)でありながら…… 水中生活に適応していなかった」

「は?」


 泳げない人魚って飛べない鳥より生き辛そうだな…… つーか致命的だ。


人魚族(マーメイド)は本来、首の両側についているエラ……用いて水中呼吸する」


 エラ呼吸なんだ……


「また骨格が軟骨で形成されている…… なので地上に上がる際は魔法による強化が必須」


 軟骨魚類……


「対象はそういった人魚族(マーメイド)の特性…… ほとんど持ち合わせていない…… ほぼ別種の生物と言っていい」


 それは人魚族(マーメイド)と言っていいのだろうか?

 魔無(マナレス)は同種族とはかけ離れた性質をしてるのが今までのパターンだった。

 巨乳エルフに不毛獣人、そして今度はカナヅチ人魚か……


「対象は…… より陸上生活に適応した進化種…… ではないかと考えられる」

「エラが無いってコトは肺呼吸ってコトだよな」


 魚じゃなくってイルカやクジラ寄りの人魚ってコトか、そりゃ進化種というより完全に別種だな。


「対象のシールテクト凍結は……陸上での単独生活が困難なための措置、FF-191・ハイペリオンT-Mには正規エクスマキナは未搭載だから」

「なるほどね……」


 陸上生活をサポートするためにはエクスマキナか魔無(マナレス)が必要だったワケだ。

 そして220年待ってようやく現れた……と。


「ベルリネッタ、最重要機密区画へ案内してくれ」

「イエスマスター」



―――



 24層・最重要機密区画


 そこはまるで博物館のようにモノが所狭しと展示(●●)されていた……


「…………」

「どこかに! どこかにウォシュレット付きのトイレないですかね?」


 キララは野生児のくせにそんなモノが欲しいのか? まぁ前世が日本人なら野●ソに抵抗があるのも仕方ないか。

 確か先輩転移者がウォシュレット付きトイレを製品化して無双してたはずだが……


「ここにあるモノは…… 全部オーパーツなのか?」

「イエス、ただしここに収められているモノ…… すべてプロトタイプ・アーティファクト」


 試作品(プロトタイプ)…… それはつまり……


「予算度外視で作られた高性能品ってコトか?」

「? 予算は掛かってる…… でも性能は正式採用品に劣る」


 えぇ~、試作品(プロトタイプ)って言ったら主人公が乗るようなオーバースペック機だろ? 普通は。


「暴走したら恒星系を消し去れる動力炉……専用機で試験する、量産目的の試作品に積むこと……あり得ない」


 まったくもって仰る通りで…… つかそんな危険な動力炉を兵器に積むなよ。


「ご主人様ぁ、ロボットアニメの見過ぎですよぉ?」


 クソッ!! なろう系を見過ぎのキララに言われた!

 だが全く反論できない。


「ここに置かれているモノ…… 本当に隠したいものから注目を逸らすための目くらまし」

「目くらまし?」


 ベルリネッタに展示室の隅っこの壁際に連れてこられた。



 シュン



 壁の一部が開いた。


「隠し部屋か」


 いいね、こういうの男の子なら絶対憧れるぜ。

 俺も将来は本棚の後ろに隠し階段のある家に住みたいものだ……


 あぁそうか、もし冒険者がここに辿り着いたとしても注目するのはオーパーツの方だ、こんな隠し部屋を探そうとする奴なんていない。

 純血種の保護を最優先に考えた目くらましか。


 そしてその隠し部屋の中には2mくらいある巨大な水晶と、その中に封じられた人魚がいた……


「わぁ…… すごく可愛いですね……」

「スッゴイ美少女…… キララちゃん負けちゃいそう……」


 ユリアとキララの言う通り確かに可愛い、まごうコトなき美少女だ。

 だが…… 子供的可愛さなんだよな……


 この子、10歳くらいじゃね?

 BBAじゃ無かったコトは僥倖だが、ここまで若いとは思わなかった。

 泳げない人魚族(マーメイド)の子供…… そりゃ保護しなきゃ間違いなく海の藻屑だっただろう。


 長い水色の髪に美しい尾びれ、全裸だけどエロさは感じない。



 コポ……



「ん?」


 いま気泡のようなモノが…… この水晶の中って液体で満たされてる? 凍結って言うからてっきりガチガチに固められてるのかと思ってたが、SF的治療ポットっぽいぞ!? あの巨大金魚鉢みたいなの。


「ベルリネッタ、エラ呼吸できない人魚を液体漬けにして大丈夫なのかよ? 液体呼吸ってやつか?」

「現在は液体型ナノマシンがすべてを管理している…… そもそも酸素は必要ない」


 あぁそうか、一応凍結されてるんだもんな。


「マスター、こっちのパネル…… 手を当てて、解凍プロセス実行のため……承認が必要」


 ? ベルリネッタの承認じゃダメなのか? まぁいい……



 ピ!  フッ―――



「!? おわっと!!」



 ガシッ!



 巨大金魚鉢が突然消えた。

 徐々に液体が抜かれていくのかと思ってたら、問答無用でいきなり全部だ、どういう機能だよ一体?

 ふぅ…… 危うく落とすところだった。


「スゥ…… スゥ……」


 よかった、ちゃんと息してる。

 しかし整った顔立ちをしている、さすがは人魚族(マーメイド)だ。


 …………


 だがいくら可愛いからといってもずっと直視しているワケにはいかない、なにせ相手は全裸なんだからな。

 しかし心配は無用だ、長い髪の毛が都合よくB地区を隠してくれている、下半身に至っては魚だ、夜8時台の地上波放送にも耐えられる。


「うゆぅ……」コシコシ


 あ、起きる。

 ファーストコンタクトは非常に大事だ、なにせ今は裸の少女を抱いている…… お巡りさんを呼ばれてもおかしくない状況だ。



 グゥ~~~



「おなかしゅいた……」


 220年ぶりに目覚めて第一声がそれって……






《特別解説》

『アマビエ様』

 疫病よけの御利益があるとされている妖怪。

 コロナ騒動初期の頃、予備知識なしにアマビエ様の絵を見た時「なんだこの落書きみたいな下手な絵は?」と思った記憶がある。


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