表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 人魚族/マーメイド 編 ――
53/175

第53話「スーパーペガサス」


 前田翔馬……

 彼は俺の通う高校で恐らく一番の有名人である。


 成績は普通らしいが、運動神経は抜群、ルックスはトップクラスでイケメンだ。

 さぞかしオモテになるコトだろうと思われるのだが、クラスの女子とかに聞くと……


『確かにカッコイイ……んだけどねぇ』


 ……とまあ、こんな感じの評価に落ち着く。


 その最大の理由は彼の名前…… 前田翔馬という名前にある。

 実はマエダ・ショウマってのは偽名だ。

 本当の名前はマエダ・スーパーペガサスっていう、翔馬と書いてスーパーペガサスと読む。

 スーパーどこから出てきた? だったら超翔馬って書けよ。


 思わず目を細めてしまうほどキラッキラに光り輝くキラキラネームをお持ちなのだ。


 正直「スーパー」さえ付いてなければまだマシだったと思う、ウチの学校にはペガサスよりもキッツイDQNネームの奴が何人か居る。

 漢字から意味を察せるだけまだマシな方だ、ただ「スーパー」が邪魔なんだよな……

 彼自身が自分の名前をとにかく嫌いらしく、周りの人間に偽名(ショウマ)で呼ぶことを強要している。


 もし翔馬(スーパーペガサス)なんて呼ぼうものなら本気で殴り掛かってくるらしい。

 この名前に対する強烈なコンプレックスと素行の悪さのせいで学校一の有名人になってしまったのだ。


 多分だけど…… 名前に対して過剰な反応を示さず普通にスルーしてればここまで有名人にはならなかったと思う。


 しかし彼はいちいち反応した、そして訂正した。

 その無駄な足掻きのせいで彼の本名は全校生徒が知るところとなったのだ……



―――



「なっ!?!? は…… テメ!?!? はぁぁあ!?!?」


 胸揉みガールズに自分のコトを「ショウ様」と呼ばせていたところを見るに、異世界に来てまで日本にいた頃とと同じコトをしてたみたいだ。

 むしろチャンスと思ったのかも知れない、自分の本名を知る者のいない異世界転移を……


「とにかくその手を放せ、もう一回言わないと判らないか?」

「くっ……!!」


 チャラ男は素直にユリアの手を離した。

 そう、離さざるを得なかった。

 ここにいる人間は誰もがアイツをショウマだと思っている、俺の言ったスーパーペガサスが本名であることに気付いた者はいない……

 あ、もしかしたらキララには判ったかもしれないが……

 それなのに何度もスーパーペガサス呼びされたら誰かが気付くかもしれない、「スーパーペガサスってアイツの名前なんじゃね?」……と。


 あんなに狼狽えたらバレるっつーの。


「テメェ…… 一体何者だッ!!」

「は?」


 えぇぇ…… 完っ全に忘れられてる……

 そりゃまぁ、オッパイ揉みながら登場するような奴が男の顔なんか覚えてるワケないだろうけどさ……

 でも地味にショックなんですけど……


 はぁ…… まぁいい。


「同じ高校通ってて、更に同じバスに乗ってたんですけど覚えてないっスか? 先輩?」

「な……なに!?」


 チャラ男にマジマジと見られる…… そこまでしないと思い出せないのか?

 どんだけ男に興味ないんだよ…… きっと奴の目に映る景色は男にだけモザイクが掛かってたんだな。


「あ…… お、お前確かあの時の…… 確か…… 神楽坂?」

「神楽橋だ」


 地味にムカつく間違え方しやがって、俺はお前の本名を正確に覚えてたってのに。


「生きてたのか……」

「なんで死んだと思われてんだよ」


 やっぱり死んだと聞かされてたのかな? だったら指名手配されてない? コレは朗報だ。


「ふん、まあいい、どちらにしろ……」

「!!」


 チャラ男は空中から抜身のナイフを取り出した。

 次の瞬間……



  フッ――― ビーーーッ!



 その姿が突然消えた、そして……



 バシィィィン!!



「なっ!?」

「…………」


 音もなく背後に現れたチャラ男は容赦なく俺の首筋にナイフを突き立てようとした。

 多分パワードスーツで防げるけど一応防御した。

 ナイフを持っていた右手首を掴んで止める、この構図はさっきチャラ男がユリアにしたものと大体同じだな。


「躊躇なく殺しにきたな」

「くっ!?」


 くっ!?……じゃねーよ、僅か10日程度で異世界(アウトロー)に染まり過ぎだ。

 本名(スーパーペガサス)を知ってるだけで殺されてたまるか、どんだけスーパーペガサス嫌いなんだよ? ここまでくるとスーパーペガサスに失礼だ。

 お前は世界中のスーパーペガサスさんに謝るべきだ。そんな奴がコイツ以外に存在するかどうかは不明だが。


「なぜお前如きがコレを止められる!?」

「先輩の能力が空間干渉系だって分かってたからな、知っていれば対処は簡単だ」


 より正確に言うとアドヴァンスドサポートで察知できる、チャラ男が瞬間移動を使う際「ピコン」とか「ビー」って警戒音が鳴るから。

 さらに転移先までわかる、ここまでお膳立てされてたら…… そりゃまぁ防げるよ。


「おぉ大変だ、これで俺の口封じは出来なくなったな」

「チッ!」


 ここからは小声で。


「安心しろ、俺はアンタの本名を言いふらす気は無い」

「! 目的はなんだ?」


 うむ、いいね、話が早くて助かる。


「要求は二つ、一つ目は俺と仲間たちに関する不干渉だ、居ない者と思ってくれればそれでいい」

「………… 二つ目は?」

「二つ目は援助だ、俺は英雄候補じゃないから懐が常に厳しい、端的に言うと金くれってコトだ」


 英雄候補様なんだからなぁ…… さぞやお金持ちなんだろうなぁ……

 秘密をバラされたくなければ金を出せ。


 まぁ本音を言うと、色々優遇されてるお前らが羨ましいから少しくらい幸運をお裾分けしろってコトだ。


「お前が本当に喋らないという保証は?」


 げぇ、保障とか言い出しやがった……

 避妊もせずにヤリまくってそうな顔してるクセに小賢しい……


「その時は要求を無かったコトにすればいい、金を盗まれたとか……英雄支援機構だっけ? そこに訴えればイイ。

 ただしその時は全力でスーパーペガサスを拡散する」


 ただ本当に英雄支援機構にウソ報告されるとかなり困ったことになるだろう。

 もしそんなコトになったら本名拡散なんか目じゃないほどの制裁を科すからな?


「………… 分かった、取引の応じる」

「あ、現金で頼むよ」

「ちっ! 手持ちが無いから金は後で届けさせる、それでいいな?」

「結構、無駄に争わずに済んでよかったよ」


 ホントは白馬や他の英雄候補の現状を聞いておきたいトコロだが、勇者二人に見られながら親しげに会話するワケにもいかないからな。


「行くぞッ!!」

「あ~ん、ショウ様待ってぇ~」


 不機嫌を隠そうともしないスーパーペガサスは胸揉みガールズを引き連れて去っていった。

 あ、速攻で胸揉んでる…… ストレス発散のためのセクハラだろうか? 彼は異世界で道徳心や一般常識を完全になくしてしまったらしい…… もし日本に帰れたとしたら性犯罪で捕まるんじゃないか?


「さてと…… んじゃ俺たちも行くとするか、それじゃまたな」


 仲間たちを引き連れて颯爽とその場を去る。

 俺もスーパーペガサスに倣ってユリアの胸を揉んでみようかな……



 ガシッ!!



「待ちなさい!」


 去れなかった…… ヴェラ嬢に捕まってしまった。


「イヅナ…… あなた英雄候補のマエダ・ショウマと知り合いなの? やっぱり……」

「違うから、元いた世界で同じ学校に通ってただけだから」


 なんて言い訳は通用せず、結局ヴェラ嬢に長時間拘束された……



―――


――




「マスターお疲れ様です」

「あぁ……」


 まったく、ホントお疲れさまだよ。

 ヴェラ嬢…… アホ勇者の仲間にしておくには惜しいほどの人材だよ。

 俺の適当なその場凌ぎの言い訳の矛盾点を的確に突いてきやがった、おかげで誤魔化すのに無駄な時間を費やした。

 俺がこの世界に来た経緯…… 今更隠しても仕方ない気もするのだが、やはり隠しておくべきだな。

 指名手配はされてないっぽいけど、だがそれは男に興味のないチャラ男が単純に知らないだけって可能性もある。


 とにかくやたら時間を取られたおかげでもう夜だ、明日からダンジョン攻略始めないといけないってのに、始める前に疲れてしまった……

 1日くらい休みたい気分だ、速攻でダンジョンに入ったら、英雄候補パーティーや勇者パーティーに鉢合わせそうだし。


 どちらにしても休もう、今日は疲れた……



 ドンドンドン!!



「…………」


 安宿のドアが激しく叩かれる…… もう破壊する勢いだ。

 これ以上のトラブルは勘弁してくれ……


「どちら様?」

「ショウ様の使いよ!」


 ショウ様? あぁスーパーペガサスか。

 ……ってコトは、お金持ってきてくれたのか? それとも気が変わって暗殺に来たか?


 ベルリネッタがドアを開けると使いの女は何も言わずにずかずかと部屋へ入り込んでくる。

 あ、揉まれてない方の女の子だ。

 そして……



 ドスン!!



 テーブルにやたら重そうな袋を叩き付けるように置いた。


「ふぅ、重かった、わざわざ私が訪ねて来てやったんだからさっさと開けなさいよ」

「それは失礼……」


 あんな借金取りみたいなノックの仕方されたら誰だって警戒するっての……


「それでこれが?」

「えぇ、ショウ様からアンタにって」


 大きな革袋に詰められた貨幣…… ま~た小銭かよ、勇者みたいなことするなよ……


「2000万ディルよ」

「にッ!!」

「?」


 2000万ディル!?!? は!? マジ!? スーパーペガサス1匹で2000万??

 え? もしかして俺、殺されるの?


「この街って銀行が無いのよね、だから冒険者ギルド支部に出せるだけ出させたわ」

「そ……それはご苦労様です、そ……それでこんなに出して先輩は大丈夫なんで……すか?」

「大丈夫ってナニが?」

「いや…… 手持ちが無いって言ってたし……」


 金が無いからって宿にも泊まらずそこらの路地裏で青カン5Pとか始められても困る、もちろん後学のために見学させてもらうけど。


「はぁ? ナニ言ってんの? 英雄候補サマが小銭なんて持ち歩くワケないでしょ? 《英雄証(ビッグライセンス)》があれば盤面議会加盟国のありとあらゆる施設を無料で使えるんだから」


 !? そ……そういえば以前ユリアがそんな様なコトを言ってた気が……


「それじゃ…… この金は借りてきたワケじゃ……?」

「ギルド支部に出させたのよ」


 な…… な…… 何だよそれッ!! いくらなんでも優遇され過ぎだろッ!!

 もうそれ王族を上回ってるんじゃね?

 地球で例えるなら………………神サマ?


 同じ条件で異世界にやってきて、方や地位と名誉とブラックカードを持って白昼堂々オッパイ揉み放題!

 片や地位も無ければ名誉も無い、お小遣いすら取り上げられて命からがらゴブリンのキンタマ蹴り潰す……


 …………


 俺は今、異世界主人公の気持ちがよく判った……

 アイツらを惨めに這いつくばらせてpgrしたい!

 そんな劣等感を持つ主人公の気持ちが……






《特別解説》

『pgr/ぷげら』

 人を嘲る言葉だと思う、こんな言葉リアルで使ったコトある人いるの?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ