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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 獣人族/ビスト 編 ――
46/175

第46話「さらばユグドラシル」


 いくらツノ生えてるとはいえあそこまで人に近い見た目をしてると殺したくない……

 意思疎通できる人型って時点で(ピー)はアウトだな。

 当然ベヒモスも使えない、あの武器で手加減とか無理だし。


「……と、いうワケで、アイツを冷凍マグロみたいに凍らせてストレージにinしようと思うんだけど可能かな?」


 手を汚さずに目的を遂げる手段を相談役(ベルリネッタ)に確認してみる。

 ベルリネッタからの返答は……


『……ムリ、保有しているマナウイルスを完全に死滅させる……或いは排除しない限りストレージに収めることはできない』

「それは…… 裏を返せばマナウイルスさえどうにかできれば冷凍封印も可能ってコトだよな?」

『あの汚染体…… マナウイルス浸蝕率A、完全に手遅れ、殲滅をおススメする』


 だから殲滅(それ)をやりたくないんだって…… くそ、俺にとって最も都合のいい状態「殺さずに口封じ」出来るアイデアが使えなかった。

 こうなると次に安全な手段となると…… 手足を切り落とし舌を引き抜いて抵抗できなくしてからアヴァロニア王国に匿名で郵送するしかないか…… 魔王軍の幹部だし受け取り拒否はされないと思う。

 もっとも殺すよりはるかにSAN値が下がりそうな気がする。


 そんなことするならボコって拉致って監禁する方が…… あぁ…… 考えるだけでめんどくさい……


 ! そうだ! ベルリネッタは脳外科手術が出来るんだ!

 だったら記憶を司る部位っていうと……海馬だっけ? そこをふんふんニャるほどって感じでいじって俺のことを忘れさせることができるんじゃないか?

 もしかしたら全記憶を失うかもしれないし、最悪再起不能になるかもしれないけど…… そこはSF超科学の技術力に期待しよう。

 ツノ男爵の海馬をいじくり倒して凡骨にしてやる! いくぜ! デュエルスタンバイ!!



 ピコン



「《点突(スピルド)一剣(シング)》」

「おっと」


 ギデオンがフライング気味に攻撃してきたが華麗に避ける。

 まだスタンバイ中だってのに何て奴だ、デュエリストの風上にも置けない奴め! ルールとマナーを守って楽しくデュエルしよう!!って用語を知らないのか!


「きさま一体何者だ? 何故この攻撃が避けられる?」

「はぁ?」

「身体強化魔法や探知魔法が使えない魔無(マナレス)にこの攻撃がよけられるハズがない」

「そんなコト言われても…… 実際避けられるしなぁ……」


 そう言えば超越級(オーバード)の勇者でも4本同時攻撃は捌ききれなかったな。

 普通に考えれば虚無級(ゼロ)魔無(マナレス)に対処できる攻撃じゃない。


 まぁ答えは分かり切ってる。超科学文明のサポート技術だ。

 例え意識外からの攻撃だろうとセンサーが反応して教えてくれる…… 俺に不意打ちは一切通用しないぜ。

 ただしこのサポートは俺の生命線だ、絶対に知られてはいけない、特に勇者とかに……

 なので適当な理由を捏造しておこう。


「このくらい格闘ゲームを嗜む転移者には大したことないぜ? 俺たちは1秒じゃなく1フレーム(60分の1秒)で世界を見ているからな」


 ……と、自分は異世界人の中では普通ですアピールをしてみる。

 実際このレベルの格闘ゲーマーなんてめったにいないだろ? 彼らは「光が遅すぎる」とか言い出すからな、もちろん光回線のコトじゃなくって…… そこまで行くと人間やめて神の領域に踏み込んでると言わざるを得ない。


 あ、ちなみに俺は格闘ゲームはそこそこで、どちらかと言うとRPGばかりやってました。

 そうだ! 白馬からドラクエを(以下略)。


「なるほど…… 英雄候補が脅威となり得るのは我々とは生きてきた環境が違うからか」

「あ~……うん、まぁそんな感じ」


 う~ん…… まるで地球が強者だけが生き残る弱肉強食の世界みたいな印象を与えてしまったかな?

 これから魔王軍と戦うであろう英雄候補たちの難易度を無駄に上げてしまった…… ま、いっか、俺が貰えなかった転移特典の異能魔法を使って頑張ってくれ。


「さしずめお前は本命の実力を計るためのサンプルというワケだな」

「あ……」


 失敗した、俺から興味を逸らそうと思ったのに、余計に興味を引いてしまった……


「取り合えず捕獲していくか」


 Noooooo!! 最悪だ!! 完全に裏目に出てしまった!!


「元々 魔無(マナレス)の捕獲指示は出ているからな」

「は?」


 なんで? 魔無(マナレス)なんて魔物の餌にしかならないだろ? そりゃ魔力ゼロは逆に希少種と言えないコトも無いけどさ……

 この世界、魔無(マナレス)に厳し過ぎだろ…… 魔王軍にまで狙われるとか……

 やはりアイツを拉致って脳改造するしかない!! 俺だけじゃない! ユリアやキララ、この世界に生きる全ての魔無(マナレス)の為に!!


「おっとそうだった、その前に用済みの役者を始末しておくか」

「ん?」


 用済みの役者? 俺のコトじゃ無いよな? だったら……



 シャキン!!



 ギデオンが手を振り上げると空中に浮かぶ黒い剣が切っ先の向きを変えた。

 その先にいるのは……勇者だ。


「《点突(スピルド)十剣(ディカ)》」

「え?」


 突然殺意を向けられた勇者は反応できない。

 戦場でナニ呆けてるんだあのバカはッ!!


 放たれた10本の黒い剣が勇者を貫く寸前に……



 バッ!!



「勇者危ない!! 勇者殺しジャンピング・ニー・バットーーーッ!!」

「え? は? ゲブッ!?!?」



 ドグシャアァァァッ!!!!



 高速移動からの勇者顔面への膝蹴り

  ↓

 勇者吹っ飛び

  ↓

 黒い剣の攻撃を回避成功!

  ↓

 やったぜ!


 …………


 あ、しまった、勇者を助けちゃった。

 俺を魔王軍に売った男など串刺しにされればよかったのに、ついつい助けてしまった。なんてお人好しなんだ俺は。


「うわ……」

「ル、ルー様ぁ!!」

「う…… 骨逝ったんじゃないの今の?」


 取り巻きガールズが吹っ飛んだ勇者の元へ駆け寄る。倒れたままの勇者もピクピク動いてるし無事のようだ。

 やれやれ、俺が仕返しする前に勝手に殺されるんじゃねーよ。


 あ、もうスッキリしたから殺されてもイイヨ。


「勇者をかばうのか?」

「体が勝手に動いただけだ」


 いやマジで。


「ならばこれでお前は逃げられないな」


 そう言うと空を舞ってた数本の剣が勇者パーティーに狙いをつけた。

 いや…… 別に…… 逃げられますけど? ナニか勘違いさせちゃったかな?

 俺に逃げられない理由があるとすればそれは「お前の口封じ」それ一点のみ!


 まぁいい、放っておこう。

 ああいう奴はピンチになると人質を使うからな、そんな時に人質ガン無視で攻撃すれば相手の意表を突けるかもしれない。

 人質はアイツの保険じゃない、俺の保険だ。


「異世界人はどこまで俺の攻撃を躱せる? 《点突(スピルド)二十剣(ダブディカ)》」


 !?

 20本の剣がこっちを見てる、なんだよダブディカって!? もしかして同時に操れるのは10本までじゃないか? なんて思ってたけど甘すぎたか。

 20本の剣が普通の人間には認識できない速度で飛んでくる…… 集中しろ神楽橋飯綱!



 キィィィィィン―――



 …………見える。


 世界がスローモーションで見える……


 ついでに攻撃の速度や順番なんかが立体表示されてる。

 ターゲットマーカーやゲージ、さらに視界の右上辺りに三次元レーダー…… 完全にゲーム画面じゃん。

 どっかに制限時間のタイマーとか必殺技のクールタイムとか表示されてない?


 通常では認識不可能であろう速度で飛来する20本の剣、その軌跡がくっきりと見える。

 ……が、狙いはあまり正確ではない、このまま突っ立ってても俺に直撃するのは4本だけだ、他の16本は俺の逃げ道をふさぐためにばら撒かれてるのか? 厄介なことしてくれる。


 もっともスローモーションでなら完全回避もさほど難しくはない。



 ズドドドドドドドッ!!!!



 着弾により大量の砂煙が舞う……

 普通なら身体がバラバラになるような攻撃だが……


「煙い! ストレージ!」



 フッ―――



 視界を塞いでいた煙は音もなく消えた。


「無傷……か、一体どうやったんんだ?」

「普通に避けただけだよ」


 う~ん、よくない流れだ……

 今の攻撃は一方向からだけだったから対処は簡単だった、しかし全ての剣を使って全方向から同時に攻撃されたらとてもいくらレーダーがあっても避けられるものじゃない。


「次は100本でいってみるか」


 ほらな? そうくるに決まってる、ファイアウォールを使うか……

 …………いや、待てよ?


「待たんか卑怯者! 貴様もデュエリストの端くれならターン制くらい守れ!」

「は? デュエリスト? ターン制?」

「お前の実験ってのは一方的に攻撃して相手の回避性能を確認するだけなのか? 異世界人の攻撃能力を見たりしないのか?」

「お前が英雄候補ならそうしただろう、だが魔無(マナレス)の攻撃能力など見る価値はない」


 ごもっとも、普通は何もできないからな。

 普通はな……


「さあ行くぞ! 《点突(スピルド)全剣(オール)》」


 ギデオンが宣言すると全ての剣の切っ先がこちらを向く……

 やらせるか!! 今度は俺のターンだ!!



 ドン!!



「なに!?」


 パワードスーツで強化された脚力をフルに使い、相手との距離を一気に詰める! 相手が魔無(マナレス)だと思っているなら急にこのスピードに対処はできまい!

 そして相手の懐に飛び込み全力で腹パンを叩き込む! おら吐きやがれ!!


「《昼食再注文(リバース・オブ・ランチ)》!!」


 ズドォォォンッ!!


「ゲブォッ!?」


 そのまま素早く背後に回り胴をガッチリホールド。相手の体を持ち上げ全力でエビ反り!


「《腰の悲鳴撃(バックドロップ)》!!」


 ドスン!!


「ガッ!?!?」


 砂漠でバックドロップは効果が薄いな、よし、次、そのままサブミッションに移る。


「《骨付きカルビ撃砕(コブラツイスト)》ォォォッ!!」


 ビキビキビキッ!!


「グッ!? アガガ……ッ!?!?」


 思った通りだ、コイツの魔法は精密操作が利かない、つまりこの様に密着されると自分を巻き込む恐れがあるため攻撃できないんだ。

 これは欠陥魔法と言うより修練と対策が足りない、ま、それを補うための魔物の大群だったんだろうけど。


「ギ、ァア……アガアアァァァアッ!!!!」


 ほれほれ、さっさとタップしないとアバラが折れるぞ? 漫画とかだと折れても割と平気な肋骨だけど現実だと声も出せないほど痛いらしいぜ?


「ガガ……グ…ガアアァァアアアアアッ!!!!」


 な…… なんて根性だ! 完璧に決まってるのに決して諦めようとはしない、さすがは魔王軍の幹部! どこぞの勇者とは違う! ならば俺も全力でお相手するのみ!!



『マスター』

「ん? ベルリネッタか、どうした? 今ちょっと手が離せないんだが?」

『この世界…… 地球で言うところの「タップ」という概念……無いのでは?』

「へ?」


「く…ぁw…せ…drftgy…ふ…じ…」


 ギデオンは白目を剥きながら未知の言語を発している…… 初めて聞く言葉なのにどこかで聞いたことがある気がする…… きっと気のせいだろう。



 パッ ドサッ



 技を解くとギデオンはうつ伏せで倒れこんだ。


 ツンツン


 ツツいてみるが反応は無い、完全に落ちたかな?

 まさかギブアップを知らないとは思わなかったんだ、メンゴメンゴ♪


「お~い勇者、何かコイツを縛り上げるモノ持ってないか? 海〇石みたいなので魔力を封じることができるとありがたいんだけど?」

「バッ、バカ野郎ッ!! 油断するな! まだそいつの魔法は消えてないッ!!」

「は?」


 空を見上げると確かに大量の剣が未だに宙を漂っている。

 気を失えば魔法って消えるモノなのか…… 全ての剣の切っ先は真下を指している、俺のターゲットは外れているようだが……

 ハァ…… これ以上男に寝技を掛けたくないんだが仕方ない、《悪夢の安眠枕(チョークスリーパー)》で落とすか……



 ブワッ!!



「!?」


 急に生暖かい風の様なモノが吹き付けた。

 振り返るとギデオンが立ち上がっている…… いや、違う! ちょっと浮いてる!? すげぇ空中浮遊だ!! さすが剣と魔法の世界! トリックなしで浮けるのか!!


「《闇夜之帳(ダート・ソレイド)・極限剣現》」



 ブワァァァ



「おおぅ!? なんだこりゃ……」


 急に空が暗くなった、見上げればそこには数万の剣が浮いている…… まるで巨大なムクドリの群れだ…… 今ウンコ爆弾落とされたら致命傷だな。


「やってくれたな迷い人よ」

「ん?」

「白状しよう、俺の魔法はその圧倒的な速度から俺自身にも認識が困難で狙いを正確に付けることができない。

 お前の狙い通り密着されると敵だけを狙うコトが出来ず攻撃ができない弱点がある」


 やはりな。


「しかも数が増えるほど制御は困難になっていく、しかしその代わり威力は跳ね上がる」



 スーーー



 ギデオンは話しながら少しずつ浮き上がっていく…… あ、ヤベ。


「俺の狙いはもう分かっただろ?」

「自分が巻き込まれない位置からの一斉攻撃……か」

「その通り、如何にお前でもコレは回避できまい?」


 うん、無理、だって隙間が無いもん。

 俺はファイアウォールとかパワードスーツがあるから平気だろうけど、あの密集率の剣が一気に落ちてきたら俺以外はみんな死ぬぞ?


「待て待て! ここにはお前の部下の魔王軍だってまだ居るんだぞ!? それに魔無(マナレス)の捕獲命令は!?」

「知ったことか」


 だよな~、僅かな生き残りの魔物のコトなんか気にする奴じゃないよな?

 魔無(マナレス)捕獲の件だって、そんな奴居なかったって報告すれば済む話だ。


 ギデオンは既に20m以上は浮き上がってる、ここは砂地で足場が悪いが全力でジャンプすれば届くだろうか?

 いや、無理でもやらなきゃ全員死ぬ。

 例え俺と全く関係ない奴らでも大量虐殺を見逃すわけにはいかない!


 やるしかないんだ!








『マスター、エーテリウス粒子充填完了、カウントダウン省略、緊急発射します』


 ん?


惑星破壊砲(ディストラクター)…… 発射(ファイア)



 バシュゥゥ <ボッ> ゥゥーーー!!!!



 あ、今…… あ……



 ズドドドドドォォォォォォーーーン!!!!



「……………………」


 ベルリネッタの放った光線は列をなして迫って来ていた魔物の群れを残らず消し飛ばし地の果てへと消えていった……

 ここからでは確認できないが恐らく陰界と陽界を繋ぐ大穴を破壊し塞ぐことができただろう。


 それはいい…… それはいいんだけどさ……


「ベルリネッタ、今……射線上にさ……」

『イエス、汚染体が浮いてた、大穴破壊ミッションに支障ないと判断、一緒に殲滅した』


 あああああ、やっぱり見間違いじゃないよな、ツノ男爵ギデオンさんが光の中に消えていったのは……

 空を覆っていた黒い剣たちも煙のように消えていき、再び青空が広がっていた……


 何と言いますか……


「ゴメンナサイ」

『? マスター、それは何の謝罪?』


 なにって…… ウチのロボ子が空気読まずにゴメンナサイって謝罪だよ。

 ハァ…… うん、忘れよう。

 結果だけ見れば目的は完璧に遂げられたんだから。


 生き残っている冒険者も魔物も一様に固まってる…… 今のうちにずらかろう。


「ベルリネッタ、迎えを頼む」

『イエスマスター』



 シュイーーーン



 10秒も掛からずにベルリネッタがエルスヴィタールに乗って現れる、うむ実に迅速だ、それでは行くとしますかね、ドッコイショっと。


「お……おい、待て…… カグラバシ・イヅナ……」


 チッ! 勇者が再起動しやがった。


「え~と、僕たち急ぎの用がありますのでこれにて失礼いたします、あとのコトはヨロシク」

「いや…… 待て…… ど、どこに行くんだ?」

「え? あ~…… あっちの方」


 適当に指さす、あっち北東かな?


「ではサラダバー」

「は? サラダ?」


 あ、間違えた、サラバダーだ…… ま、どーでもいいか。


「ベルリネッタ、行ってくれ」

「イエスマスター」


「ちょっ! 待てって! オイッ!!」



 俺たちは勇者の声を無視してその場を離れた……

 数分後にはこの街自体から離れることになる。


 もう目立ち過ぎとかそんなレベルじゃない。

 とてもプレアデスの修理を待ってる余裕はない、一刻も早くアヴァロニア大陸へ渡ろう。


 さらばユグドラシル…… もう二度とこねーよ―――




―― 獣人族/ビスト 編・完 ――






《特別解説》

『SAN値』

 正気度、精神耐久値、心のHPの様なモノ。現代人の多くは月曜朝に数値が低下している気がする。


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