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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 獣人族/ビスト 編 ――
44/175

第44話「魔王軍の手先」


『さて…… お喋りはそろそろ終わりでいいな?』

『ま、待て! え~と、確証はないが英雄候補らしい奴が一人いる! 異世界からやって来た男だ! このまま戦いを始めればそいつも巻き込まれて死ぬぞ! 生け捕りにしないといけないんだろ!?』


 あ、ズルい、保険を張りながら偽物を差し出しやがった。

 しかし魔王軍にそんなヌルい手が通じるだろうか?


『ほぅ? しかし少々信憑性に欠けるな』

『うっ!』


 バカ、そこで目を逸らすな、ウソ吐いてますって自白してるようなものだぞ。

 ……ん? 何で心配してるんだ? 今差し出された生贄って俺だぞ?


『ふっ…… だが一応聞いておこう、万が一という可能性もあるからな。そいつの名前と特徴は?』

『名前はカグラバシ・イヅナ! 黒髪黒目で黒のロングコートを身に纏ってる! 特徴は陰険だ!』


 あのバカ! 一瞬の躊躇もなく他人の個人情報垂れ流しやがった! しかも陰険て!

 クソッ! ここが地球だったらお返しにアイツの個人情報をネットにばら撒いて悪い噂を広めまくって血祭りに挙げてやるのに!


 ……たしかに俺ってちょっぴり陰険かな?


『カグラバシ・イヅナ…… ふむ…… 一応《魔公》の命令だし捕獲だけはしてみるか、間違っていたら始末して餌にすればいいだけだ』


 なんてコトだ…… 勇者(バカ)のせいで俺の異世界攻略チャートに《魔物の餌エンド》が復活してしまった。ベルリネッタと出会ったことで回避できたはずのルートだったのに……

 おのれバカ勇者め…… お前を切り刻んで魔物の餌にしてやりたい気分だ……


『さて…… こうなると計画の変更が必要だな』

『お? おぉお?』

『ユグドラシルの住民は一人も逃がすワケにはいかないな』

『………… え?』

『魔物で包囲しておくか』


 あ~あ、完全に裏目に出ちゃったよ、INTの数値が低いのに中途半端な作戦立てたりするから。


『ま、待て! 住民に手を出すな! カグラバシ・イヅナなら俺が捕獲してきてやる!』


 もう完全に魔王軍の手先じゃねーか、これが勇者…… 異世界からの来訪者が英雄候補として祀り上げられるのも納得だな、こっちとしてはいい迷惑だ。


『ハハッ、有難い申し出だがその必要はない』

『なんでだ! 顔も分からない相手を探すのは時間と労力が掛かるだろ!? 何なら抵抗できないようにして渡したっていい! 骨の2~3本折れてたって別にいいだろ!?』


 どんだけ俺を生贄に捧げたいんだよお前は? いくら何でも嫌い過ぎだろ?

 あと気付いて無いようだけど、魔王軍は初めっから都市を包囲して誰も逃がさない気だよ、そうじゃなければあんな大量の魔物を引き連れてくる意味が無い。


 おっと、そうこうしている内に魔物たちが左右に広がりだした。

 このまま放置して都市そのものが封鎖されるのは困る、俺たちが逃げ出すためにもね……


「ベルリネッタ、取り合えず下に溜まってる魔物を一掃できるか?」

「イエス、可能です」

「んじゃ頼む、ただしヒトは巻き込まないようにな?」

「了解。プロトアームズ《R》対星戦術兵器・惑星破壊砲(ディストラクター)展開(スタンバイ)



 フォン!!



 ベルリネッタの右側の空間が歪んだと思ったら巨大な兵器が……

 いやいやいや、ちょっと待て!


「お前…それ…この間砂漠に大穴開けた兵器じゃないか、ここに穴開けられるとさすがに困るんですけど?」

「前回は照射範囲を絞り一点集中した…… だから星を貫いた。今みたいに散開してるなら…… 薙ぎ払う形で照射すれば大地の表面を少し削る? 程度でとどまる」


 ホントに? いや、ベルリネッタが嘘つくとは思わないけどさ、彼女の言う“少し”と俺の思う“少し”には大きな隔たりがあるんだよなぁ…… そもそも出力調整できないの?その兵器。

 だが仕方ないか、議論している暇はない。


「わかった、やってくれ……」

「イエスマスター」


 おっと対ショック対閃光防御っと……


「ターゲットロックオン、惑星破壊砲(ディストラクター)…… 発射」



 キュイィィィン…… バシュゥゥゥーーー!!!!



 ベルリネッタは砲身を左から右へ振りながら閃光を放った、その光は地上の魔物を撫でるように進む。

 そして一瞬の静寂の後…… 魔物の群れは左から順番に天を衝くほど巨大な炎の壁に飲まれていった。



 ズドォォォォォォン!!!!



「うわぁ……」


 なんかもう七日で世界を焼き尽くせそうなプロトンビームだ……

 事前にストレージで防御してなかったら爆風で絶対吹っ飛ばされてたぜ?



 ブシュゥゥゥゥゥ ジャキン!



「目標消滅」

「あ、はい……ゴクロウサマ」


 しかし消し飛ばした魔物はあくまでも一部、未だに続々とやって来る魔物の行列は遥か彼方500km先の大穴まで続いている…… 元栓閉めなきゃ延々垂れ流しなのかな?

 それに今の爆発に巻き込まれなかった魔物が下に数千は残ってる、冒険者を巻き込まないために着弾位置を離したコトで有効範囲から出てしまったのだろう。

 ま、それはいい。

 せっかく集まった冒険者たちが処理してくれるだろう、魔物たちは爆発に近かった分、火傷なり骨折なりの傷を負っているから。


 ただ…… 爆発の衝撃で吹っ飛ばされてきた魔物と冒険者たちが入り乱れて乱戦状態になっちゃってるが……

 陣形とか何の役にも立たなかったな、まぁそれは最初からか。

 むしろ100%死亡確定の状況から頑張ればなんとか勝利できる状況になっただけマシというものだろう。


 しかし魔王軍の幹部である男爵だけは何とかしないといけないな、勇者(バカ)のせいで俺の名前と特徴が知られてしまったから……


「ベルリネッタ、惑星破壊砲(ディストラクター)の射程距離は500km以上あるか?」

「イエス、最大有効射程距離、80万km」


 おぉぅ、余裕で地球から月を狙える距離だった…… そりゃそうか、元々は惑星破壊兵器の試験兵器(テストタイプ)なんだ、過剰とも思える射程距離があって当然だった。


「それじゃもう一発頼む、さっきと同じ要領で魔物の行列を薙ぎ払いながら500km先の陰界と繋がっちゃってる大穴を破壊してくれ」


 ここが盤面世界だからできる荒業だな。

 地球だったら丸みのせいで直接射撃できない、余計な穴を開けて事態が悪化するところだった。


「マスター、惑星破壊砲(ディストラクター)試験兵器(テストタイプ)…… 連続使用できない。

 エーテリウス粒子再充填に……およそ1000秒ほど必要」


 1000秒、15分ちょいってトコロか。


「ただ…… 当機(わたし)で貯蔵しているエーテリウス粒子、流用すれば15秒で再使用可能」

「それほとんど連続使用って言うんじゃないか? それをした場合ベルリネッタにどんな影響が出る?」

「………… 極度のエネルギー不足で…… ナノマシンの配列維持が不可能になる」

「? つまり?」

「分りやすく言うと……溶ける」


 溶ける!?!? ナノマシンって細かい砂のイメージだったけど液体金属に近いのか?


「そうすると…… 身体の再生に全エネルギーを使用、マスターに共有しているストレージ、使用も不可能になる。

 さらにこの場所だと…… 流れ落ちたナノマシンをすべて再集結させることムズカシイ、再生が成功したとしても身体がさらに小さくなる。

 ついでにこのケース…… 身体の再構築は前例がない、だから予測が難しい…… 最低でも1000時間から2000時間は必要だと思って。

 あ、あとプレアデスの修復……停止する」


 ………… リスクが高すぎる……


「いいです、素直に15分待ちます」

「イエスマスター、惑星破壊砲(ディストラクター)再充填……開始」


 これでいいんだ、あの威力の兵器を15分で再使用できるなら十分早い。

 調子に乗ってプロトンビームを連続で「薙ぎ払え!」した挙句、たった二発で溶けて死なれたら損失の方が大きすぎて笑えない。

 俺はトル〇キアの姫みたいな失敗はしないぞ! ま、あそこまで差し迫った危機は感じないし。


「ところでベルリネッタ、再充填しながらでも俺のサポートは可能か?」

「イエスマスター、そちらは滞りなく行う……可能…… でももしかして…… 降りる?」

「あぁ、男爵に俺の情報を知られた、コレは放置できない」

「………… 確かに……」


 魔王軍はなぜか英雄候補を捕らえようとしている、まぁロクな理由じゃないだろう。

 俺は英雄候補じゃないけど同じ時期にこの世界にやって来た、当然英雄候補との関連性も疑われるだろう。

 魔王軍にまで指名手配されたらたまったもんじゃない、お尋ね者認定はアヴァロニア王国だけで十分だ。

 そしてもし魔王軍に捕まったりしたら…… 速攻で情報を漏らすことになるだろう、拷問とか秒も耐えられる気がしない。

 用済みになったら、英雄候補ならともかく魔無(マナレス)の俺を生きて帰してくれるとも思えない、餌にするってハッキリ言われたし。


 つまりアイツを何とかしないといけない……というワケだ。

 問題なのはその「何とか」をどうすればいいのか分からないトコロか…… 取り合えず喋れないように舌でも引っこ抜いてみるか?



―――


――




― ユグドラシル南西門前 ―


「う……ぐっ……! な……何が起こったんだ?」


 突如背後から爆発の衝撃に襲われたギデオンが起き上がり振り返るとそこには……



 ゴオオオォォォオォォオォォォォ―――



 さっきまでそこにいた筈の数万の魔物を飲み込み燃える炎の壁だった。


「何だこれは…… まさか極級魔法……か?」


 それはまさに世界の終りのような光景だった。



「アチッ! 熱ぃぃいッ!! アチャチャチャチャッ!!」

「ルー様! 後頭部が燃えてますっ!」

「ちょっ! 走り回らないで! 消せないから!!」

「水!! 誰か水を!!」

「アチチチチチチチチチチッ!!」


「勇者…… まさかこれを待つための時間稼ぎだったのか? 俺はあんな馬鹿にハメられたのか?」


 すぐそばで大騒ぎしている勇者を見てギデオンは大いなる勘違いをしていた。



「大いなる癒しの水よ在れ!《大水滴(アクアドロップ)》!」



 ドボン! ジュッ!



「うへぇ…… た、助かった…… ありがとうフラn……」

「ルー様後ろッ!!」

「!?」


 ギデオンが禍々しい黒い剣を頭頂部目掛けて振り下ろしてきた。



 ガギンッ!!



 勇者は自らの剣を抜き寸でのところでそれを防いだ。


「う…ぐっ…ぐぎ……ッ!!」

「よくもやってくれたな勇者よ、正直お前のことを見下していたよ」

「なっ!? んっ!! だとぉぉお!?」

「完璧だったぞ、自然かつ完璧、まさかあそこまで完璧にバカを演じきれる奴がいるとは驚いた」

「んなっ!? くっ……はぁ??」


 勇者は困惑していた、褒められてるのか貶されてるのかよく判らなくて。


「だがもう騙されん、弱いフリをしても無駄だ、俺は全力でお前を殺す」

「だっ!? 誰が……ッ!!」


 勇者はナゼか絶体絶命のピンチに陥っていた。






《特別解説》

『トル〇キアの姫』

 風の谷のナウシカの登場人物。彼女と結婚すると「おぞましきもの」が見れるらしい、連コラでも見せられるのだろうか?

 ※要注意!! 連コラは検索しないほうがいいです!


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