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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 獣人族/ビスト 編 ――
41/175

第41話「獣人解放運動」


 異世界生活8日目……


 ギルドセンター上層階・ウエイティングルーム……

 ここは特級以上の冒険者パーティーのみが入ることを許される高級サロン…… 要するに談話室だな。


「うわっ、スゴイ! イヅナ様見てください、砂漠! 砂漠が見えますよ!」


 この街で生まれ育ったユリアは砂漠なんか親の顔より見飽きてるんじゃないですか?


「はぁ~、空港の高級ラウンジみたい、死ぬまでに一度は入ってみたかったんだけど…… その願いは叶わなかった……なぁ」


 キララさん…… コメントに困るようなコト言わないでください。


 本日はヴェラ嬢との勉強会というコトでここに呼び出された…… あっちが敗者だよね? なんで場所指定するんだよ?

 まぁ広くて綺麗で人も少ないから良いんだけどさ…… 酒場の一角で勉強会するよりはマシだからな。

 しかし最底辺である下級冒険者パーティーの俺たちが入っていいのだろうか? 多分ゲスト扱いってコトなんだろうけど……ま、いっか。

 取り合えず自由に飲み食いしていい菓子は根こそぎ頂いていこう。これくらいは持ってってもイイだろ? クッションやソファーや絵画は持ってかないからさ、一応礼儀正しい日本人なモノで……

 でもアメニティくらいは許されるだろう、トイレットペーパーはアメニティに含まれるのかな?


 つーか肝心のヴェラ嬢がまだ来ない、こっちは徹夜明けだってのに…… はぁ……


「あれ? イヅナ様、眠そうですね? もしよろしければ膝枕とか致しましょうか?」

「マジで!?」


 ユリアから超魅力的な提案を頂きました! いや、どうせなら膝よりはるかに柔らかそうな胸枕とか…… は、無いな。

 砂漠の国でそんなコトしたら暑苦しくてしょうがないからな………… なんかこの部屋暑くね? エアコンのリモコンはどこだ!? 設定温度を10℃くらいまで下げようぜ!


「お待たせしました」

「チッ!!」


 狙いすましたかのようなタイミングでヴェラ嬢がやって来た。


「な…… 何で私いきなり舌打ちされたの?」

「あわわ、き、気にしないでください! イヅナ様はちょっと寝不足で気が立ってるんです、ゴメンナサイ!」


 何故か俺の代わりにユリアが謝ってる、寝不足なのは事実だが今のは…… いや、そうだな、彼女は何も悪くない。


「失礼しました、それより……」


 一緒に入ってきた勇者パーティーのその他がすぐ隣のテーブルに座る……

 席はいくらでも空いてるのにわざわざ隣に来るんじゃねーよ、ソーシャルディスタンス考えろよマナウイルス感染者どもめ!


「あぁ、そちらも気にしないで、ただのミーティングだから」

「へ~、そっすか」


 俺のことをメッチャ睨んでる…… ヴェラ嬢にセクハラでもしたら斬り殺すぞ!って目だ。自分の女を取られたくない男の目……とも言う。

 そんな心配しなくてもヒトの女に手を出す気はない、どうせお前ら夜な夜な乱交パーティー開催してるんだろ? 異世界主人公は古来より非貫通系美少女にしか興味を示さないルールがある、仕方ないので俺もそのルールに則って非処女は攻略対象外に致しとうございます。


 まぁDTだから向こうからお誘いがあったら絶対乗っかっちゃうだろうけど……


「それにしても何でここを指定したんだ?」

「最近奇妙な事件が頻発してるから安全な場所、すぐに情報が集められる場所というコトでここを選んだのよ」

「奇妙な事件?」


「えぇ、例えば第七世界樹迷宮崩壊とか……」


 あぁ、プレアデス発進で崩れたダンジョンね……


「砂漠の外延で延焼し続けていたゲヘナの炎が消えたコトとか……」


 あぁ、解除されたファイアウォールね……


「上級冒険者パーティーが無残な姿で発見されたりとか……」


 あぁ、《闇色腕(ダークアーム)》の連中のコトね……


 なんだ、全部俺ら絡みじゃないか。

 だがその言い方は誤解が生じる、まるで《闇色腕(ダークアーム)》の連中が死体で発見されたかのような言い方だ、ちゃんと全員生かしておいたぞ?

 ただ奴らに見せしめを与えようとしたんだが、何をすればいいか少し迷った。


 最初は絶対外れない首輪でもプレゼントしようと思ったんだが、そんな魔法のような首輪を持ってないので断念。

 次に真っ裸にして大通りの辺りに逆さづりにしようと思ったんだが、元々動物が服着たような見た目の獣人を剥いても意味が無い気がした。

 そこで思いついたのが毛刈りだ、毛刈り後のアルパカがマッチ棒みたいなちょっと哀愁を誘う見た目だったのを思い出して、全員の体毛を徹夜で剃り落としてやった。

 武士の情けで首から上と、あと面倒だから手足の先、あと触りたくないので股間周辺は残してやった…… なんかスタンダードプードルみたいになってたなぁ……


 うん、実に無残な姿だった…… あいつら比較的体毛が短いからやりにくくて仕方なかったが頑張った。

 その結果、頭だけ妙にデカくって身体中の皮膚がちょっと弛んだ姿になった、あの姿を見て改めて思った…… ウチのキララたん最高♪ってね。


 そんなコトを一晩中やってたもんだから、今はとってもお疲れです。



「ここ数日で色々なことが起こり過ぎで…… 一体何が原因なのか……」チラ


 疑われてるな…… だが流石に迷宮崩壊やファイヤーウォール消失まで俺らの仕業だとは思うまい。


 …………


 俺らというよりベルリネッタの仕業と言うべきか。


「それで…… 気になっていたんだけど、そちらの彼女は…… 獣人族(ビスト)?」


 ヴェラ嬢の視線の先にいるのは当然キララだ。

 キララは見ようによっては毛刈り後の獣人に……見えないコトも無いかな?


「ウチで保護した癒し兼ツッコミ担当のオオガミ・キララちゃんです」

「わふッ!? 私ってツッコミ担当!?」

「黒髪の獣人族(ビスト)…… もしかして英雄の血筋?」


「は?」

「はい?」


「知らないの? かつて獣人族(ビスト)を奴隷身分から解放した六英傑の一人『博愛の英雄・犬飼健』を」


 博愛の英雄・犬飼健…… 知るワケねーだろ、誰だよそれ?


「獣人解放の合言葉の元、当時はヒトとして認められていなかった獣人族(ビスト)をヒトと認めさせ、奴隷として虐げられていた者たちを解放。その人生の大半を賭して獣人族(ビスト)の地位向上に心血を注いだ英雄、それが『博愛の英雄・犬飼健』よ」

「へ~(棒)、立派な奴もいたもんだな、そいつがキララのご先祖様なのか?」

「犬飼健の子孫は黒髪になるケースが多いらしいわ、もちろん黒髪が全部英雄の子孫ってワケじゃないけどね」


 キララはともかく獣人族(ビスト)の髪の毛ってドコからドコまでなんだ? 全身のコトを指してるのだろうか? 判らん。


「あの…… 獣人解放運動の合言葉ってどんなだったんです……か?」


 キララは今の自分のルーツかも知れない男に興味があるようだ。


「え? あぁ、異世界の言葉らしくて意味は分からないのだけど、確か……『ジュードゥ・ノ・ケモナ』って言ったかな?」


「「oh……」」


 俺とキララは二人同時に額を抑えて天を仰いだ、タイミングが完璧に一緒だった…… ついでに心情も一緒だったと思う。

 なるほど、そりゃ獣人解放運動(ジュードゥ・ノ・ケモナ)に心血を注ぐワケだ、そして英雄の立場を利用してケモノ成分80%オーバーの嫁を娶って子孫を残しまくったワケだ。


 何故なら重度のケモナーだったから…… 剣と魔法の異世界にやってくる日本人ってどこかおかしい奴だけなんだろうな。


「あ、もしかしてジュードゥ・ノ・ケモナの意味、判るの?」

「いや…… 知らないほうが幸せなことってあるんだよ……」

「??」


 ここ一週間はそんなんばっかだ……


「あ~、ちなみにキララ」

「はい? なんですか?」

「すね毛が針金みたいな奴とハゲ、どちらが好みですか?」

「それ…… その二択から選ばなきゃいけないんですか? 中間を用意してください……です」


 どうやらキララはご先祖様の性癖を受け継いではいないようだ、良かった。



―――



 さて…… しょーもない無駄話で時間を喰ってしまった、さっさと本題に入ろう。


「前にも言ったが俺たちが知りたいのはアヴァロニア大陸の情勢についてだ」

「あっちの情勢が知りたいってコトは、あなた達は……」

「この街でやりたいことは終わったから移動するつもりだ、その為にもあっちのコトを知っておきたい」


 この大陸でも探せばまだ魔無(マナレス)が見つかるかもしれないが、それはプレアデスが使えるようになってからゆっくり調べればいいコトだ。

 なのでまずは移動を優先する、少々目立ち過ぎてしまったからな。


「現在魔王軍はアヴァロニア王国を中心とした連合軍との戦争状態よ。

 魔王軍はなぜかアヴァロニア王国を必要に攻めているので向こうの大陸でも別の国なら比較的安全に旅をすることができるでしょうね」


 そこら辺はお姫様が言ってた情報通りだな。


「アヴァロニア大陸の西の外れ、この世界の中心には《奈落》と呼ばれる巨大な穴があり、そこから大量の魔物がこちらの世界にやってきているわ」

「その奈落ってのはダンジョンなのか?」

「そうね…… 通常のダンジョンとは異なるけどダンジョンの一種と思ってもらっていいわ。

 奈落も他のダンジョンも同じ陰界から陽界へ魔物がやって来るトンネルなのよ」


 委員会? 妖怪? 前にも誰かがそんなような単語を使ってた気が……?


「陽界は私たちが暮らすこの大地のコト、陰界はその裏に広がる闇の世界のコトよ」


 あぁそうか…… 盤面世界だもんな、表と裏があって当然だった。

 しかし闇の世界ってなんだ? 表面に昼と夜があるんだったら裏面にだって昼と夜はあるだろ? ただの比喩か? 知らないだけか? 過去の英雄は誰もそこに突っ込まなかったのかな?

 そしてそんな闇の世界から大量の魔物がやって来る…… つまりマナウイルスの汚染率は裏の世界の方がはるかに高いってコトか…… そんな穴全部塞いじまえよ。


「つまりアヴァロニア大陸の西側に近づかなければ安全というコトね、今のところは……だけど」


 今のところは……か、当然だな、戦争やってんだから情勢がどう転ぶかなんて分かるワケない。

 コレはもう異世界からの英雄候補たちに頑張ってもらうしかないな、もちろん俺は一切手伝わない、だって英雄候補じゃないし。


 …………ん?


「あのさ、前から疑問に思ってたんだけど、魔王との戦争の真っ最中に戦地から遠く離れたこんな場所で勇者は何をしてるんだ?」



 ビクッ!!



 隣のテーブルでナニかがビクッて動いた。


「俺の中の勇者って「人々の先頭に立って魔を討ち滅ぼす者」とか「苦しんでいる者を決して見捨てない聖人」みたいなイメージだったんだけど、戦場にも立たず苦しんでいる人々から目を逸らして何でこんなトコロにいるんだ?」


 もちろん大嘘だ、こんなイメージ持ったことない。

 俺の中の勇者といえば…… 田舎から上京してきた純朴な少年を数人で取り囲み殴る蹴るの暴行を加え有り金すべて奪っていく珍走団のイメージだ。

 完全に屑のそれだ。


 まぁ実際には返り討ちに遭ってるからここまでヒドイ奴って印象はないんだが……


「言いたいことは分かるわ、でも今は…… 何というか…… ちょうど1年前くらいから魔王軍はアヴァロニア王国だけに狙いを絞ったのよ、そして同じころから《六魔卿》が戦場に姿を現さなくなったのよ」

「《六魔卿》?」

「魔王軍のトップ6人のことよ、《魔王ディアブロ》を頂点に《魔公爵ジェイド》《魔侯爵アグロヴァル》《魔伯爵ベネヴィア》《魔子爵ヴィンセント》《魔男爵ギデオン》を《六魔卿》と呼んでいるの」


 あぁ、異世界モノにはかなりの高確率でお貴族様が出てくるんだよな……

 いっつも思うんだけど公爵と侯爵、アレどうにかならないのかね? 発音が一緒だとアニメ化した時とか困ったりしないのかね?

 あと今更だけど魔王の名前ディアブロって言うんだ、知らなかった。


「《六魔卿》が何を企んでいるのか探るために私たちは世界中を回ってるの」

「わざわざ勇者が? そう言うのは専門の冒険者とかに任せた方がよくない?」

「う…… その…… 3勇者パーティーの中で一番弱い私たちはレベル上げも兼ねてるのよ……」


 勇者が目を逸らした…… そんなコトだろうと思ってたよ。


「それで成果は?」

「なにも…… そもそも《六魔卿》が全員出てきたのは100年前の大侵攻の時だけと言われてるわ、特に《魔王ディアブロ》と《魔公爵ジェイド》はそれ以来一度も表舞台に立っていない。

 単純に情報が足りな過ぎるのよ」


 ふむ…… よくあるのは既に魔王が死んでいるってパターンだ。

 老衰、あるいは側近(魔公爵)に殺されてるってケースがベタだな。

 あるいは何かを待っているか……だ。


「だから私たちは各地のダンジョンを廻りつつ異常事態が無いか調べてるの。

 そしてここ無限砂漠で最近立て続けに異常事態が起こり始めている……」


 それは魔王軍とは一切関係ないんだけど……

 ここは話を合わせておこう。


「つまり来たるべき本番に備えてるってワケか」

「そう、まさにソレよ」


 勇者がドヤ顔してる…… ドヤるようなコトではない。


 …………


 最近周辺で起こっている異常事態は全部俺たちが原因だ、今は魔王軍の関与が疑われているが俺たちに疑惑の目が向けられる可能性は十分ある。


 色々と目立ち過ぎたからな……

 やはり早急に安全圏への脱出が必要になりそうだ。






《特別解説》

『獣人族/ビスト』

 どこの異世界にも大体生息している亜人の一種。ほぼハゲが存在しない種族でもある。

 理由はハゲると獣耳と人間耳部分の違和感がスゴイからだと思う、ちなみにウチは4つ耳設定。


『重度のケモナー』

 擬人化したケモノキャラを愛する人たち。拗らせると性欲の対象まで逝ってしまう。


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