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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 獣人族/ビスト 編 ――
40/175

第40話「命に別状……ない」


 そうそう、俺は俺で一つ実験したいことがあったんだ。

 俺しか使えない俺のたった一つの異世界専用能力《時空間干渉システム・ストレージ》…… これ、勘違いしてたけど俺しか使えないワケじゃないんだよな、ベルリネッタも当然使える。

 つまり俺が指示を出せばベルリネッタがリモートで操作することも可能なハズ、スマホの音声認識システムを使うよりよほど信頼度が高い。


 そんなワケでインカムを用意してもらった。

 コレをBluetoothっぽい何かでスマホと接続して…… スマホはパワードスーツの内ポケに収納…… OK。コレで両手がフリーになった。


『マスター、不衛生極まりない毛玉の塊…… どうするの? 殲滅する?』


 あぁ、もう! この殲滅大好きっ子め! 味方じゃなければ取り合えず殲滅を推奨するんだから。


「ここは街中だ、それに相手は一応名の知れた冒険者だ…… 殲滅はまずい」

『だったら…… 消滅の方がいい?』


 ………… いや、より悪くなった。

 でも殲滅よりはマシか? 証拠が残らない分…… いやいや、そうじゃなくって。

 忘れてるのかな? やるの俺だよ? 一般日本人がいきなり殺しとか出来るわけない。

 モンスターだってハードルが高いのに、殺しの対象がヒトなんて……


 ん? ………… ヒト? ぶっちゃけ彼らは倉庫で放し飼いにされてる獣にしか見えないが…… まぁ哺乳類は無理ってコトで。


「全員生かす方向で行く、この街には同じような考えの奴らが他にも必ずいる、そいつらへの牽制目的ってコトでボコボコにヘコませてやる。

 ベルリネッタは手出ししないでくれ」

『イエスマスター』


 カッコつけて「手出し無用」みたいに言ったけどさ、マジでヤバそうだったら手出していいからね?

 本当にピンチに陥ったら超過保護なベルリネッタのコトだ、モンペみたいな勢いで敵を駆逐してくれるから心配ないけどね。



 ザッ



 倉庫前で見張りをしていた二人の前に無防備に姿を現した、当然警戒しているが無視してそのまま悠然と歩み寄る……


「ッ!? 誰だッ!?」

「子供? 迷子か?」

「!? コイツ…… 反魔力同盟(アンチマギア)の一人だ!!」

「なに!? それじゃ! コレがターゲットの一人!?」

「ハッ! ツイてやがるッ! まさか向こうからやって来るとはな、しかも武装してない! おい! 骨の2~3本折れても構わねぇ! 生け捕りにしろ! コイツは交渉に使えるぜッ!!」


 う~ん、盗賊パーティーの発想がゲスいな…… こりゃ手心加える必要とか一切無いな。


「死ね! 小僧ッ!!」


 見張り獣人Aがナイフを構えて突っ込んでくる……

 おいッ!! 生け捕りにするんじゃなかったのかよ!!

 俺はお前ら汚染体とは違ってごく普通の一般人なんだよ! そんなデカいナイフで腹でも刺されたら高確率で死ぬっつーの!!

 コレは正当防衛が認められる、思いっきりやり返してやる!



 スッ―――



「ッ!?!?」

「吹っ飛べ」


 相手の懐に潜り込み肩背中でぶちかます、敵より速く動けなければ上手くは行かないだろう。



 ドゴォォォン!! バキバキッ!! ズドォォォーーーン!!!!



 目の前に迫ってきていた獣人が消えた……


 消えたと思ったら倉庫の扉をぶち破っていた…… いや、それだけに留まらず勢いで扉自体が外れ内側に倒れた。

 そして獣人たちの視線が俺に集中する…… そりゃそうだろう、いきなり破られた扉、その先に月明かりの逆光の中で鉄山靠ポーズで固まってる男…… 大注目だ…… 当たり前だよな。

 例え倉庫の中で乱交パーティーが開催されてたとしてもみんなこっちを見るに決まってる、俺は乱交現場をガン見するけどね。

 いや…… 動物の交尾シーンはどうでもいいか……


 以前マンガで見た鉄山靠を真似してみたんだがエライことになってしまった…… 獣人が目にも留まらぬスピードで吹っ飛んでいった。


「あ~…… ちょっとやり過ぎた?」

『大丈夫…… 肋骨12箇所骨折、左上腕骨と右大腿骨骨折、あと内臓破裂寸前…… だけど命に別状……ない』


 命に別状ない…… じゃ、いっか。

 この大型ダンプが突っ込んだみたいな威力で生還するとは…… 獣人って頑丈だなぁ。


「カッシュ!? ち、ちくしょうッ!! なにが起こった!?」

「ボスっ! アイツです!! 反魔力同盟(アンチマギア)の一人ッス!!」

「な、なにッ!!?」


 ボスはライオン系の獣人か…… 普通だな。


「こいつ…… な……何をしやがったッ!?」

「気を付けろ!! コイツなにかオーパーツを身に着けてやがるんだッ!!」


 お? よく気付いたな? それらしい物は何も持ってないのに…… いや、砂漠の街に不釣り合いな漆黒のロングコートは見るからに怪しいか……


「このガキがァァ!!」


 チーター柄の獣人が襲いかかってきた…… 怒りに我を忘れているようにも見えるが……


『マスター、背後からも1匹……迫ってる』


 匹……いや、今はいい。

 真正面から大きな音と勢いで迫る、それを隠れ蓑に背後から気配を消したもう1人が仕留める……

 いい連携だとは思うが…… もちろんベルリネッタに言われる前から気付いていたさ。



 トンッ!



「なッ!?」


 背後からの襲撃者が構えた剣を振り下ろす寸前にバックステップで距離を詰める。

 それだけで容易に相手の懐に飛び込むことができる、そしてそのまま振り下ろされた腕をつかみ一本背負いの要領で前方へ叩き付けてやる。

 もちろんそこはチーター柄獣人が突っ込んでくる場所だ……



 ドゴッ!! ドゴォォォン!! グシャッ!!!!



「……ッッッ!!?」

「ガハッ!!!!」


 ヤバめな音がした…… 大丈夫っスか?


「ガフッ!」

「コヒュー…… コヒュー……」


 息してる…… なら大丈夫だろう、こいつら頑丈だし。


「なっ!?」

「デイン!! ハンス!!」

「な……何なんだよ、いったい!!」

「このガキがぁぁーーーっ!!」


 獣人の一人が元ソルジャーみたいな大剣で襲い掛かる!


「…………」


 やはり敵が遅い…… スローモーションとまでは言わないが地球の物理法則下より2~3割は遅く感じる。

 これがアドヴァンスドサポートの力なのか? もしかして思考加速か時間加速機能とかも付いてるのだろうか? だとしたら何というチート機能だ。

 いいね! チート万歳! 敵だって魔力で色々強化してるんだ、だったら俺だってSF超科学でチート(ズル)したっていいじゃないか。

 敵がすぐそこまで迫ってきているのにゆっくりこんなこと考えてる余裕があるって普通にすごいコトだな。


 大剣の軌道から僅かに体を逸らし攻撃が外れた瞬間その場で素早く一回転、後ろ回し蹴りで大剣の横っ腹を蹴る。



 バキィーーーン!!



 大剣は根元からポッキリ折れてしまった…… 素晴らしい……いや、凄まじい蹴りだ。

 そして踵が全く痛くない、この分だとパンチでも行けたかもしれないな。


「な、何なんだコイツは一体!?!?」

「深夜に大声を出すのは近所迷惑だぞ? 常識を疑われるぜ?」



 スッ――― トン


 ドゴォォォン!!



 手のひらで軽く触れたあと勢いよく押し込む、すると獣人は後方へ飛んで行き近く積まれていた木箱に突っ込み破壊した……

 大声は出してないけど、近所迷惑って意味じゃどっちの方が……って感じだ。


 まぁこんな(ヤク)の売人が取引に使いそうな倉庫だ、周辺に迷惑する民家なんか無いだろう…… 多分。


「チッ! お前ら! アイツには近づくな、魔法で拘束しろ!!」

「そ、そうか!」


 ライオン男がようやくまともな指示を出した、気付くのがおせーよ。

 つーか魔法はマズい、ストレージを使えば大抵の現象は無効化できると思う、だがそれには時間が必要だ。


 ①相手の魔法を確認

 ②その対処法を考える

 ③指示を出す

 ④魔法を無効・無力化する


 いくら思考が加速してても一瞬でそれらをやるのは難しい…… 特に③の対処法を言語化して指示を出すのが。


 脳外科手術を受けて考えるだけでストレージが使えれば可能かもしれないが……


「蔓延る霧氷 戒めの氷鎖 冬の停滞を彼の者へ 《氷結拘束(フリージングジェイル)》!」



 ヒュゥゥゥゥ……



 魔法が発動すると霧と小さな氷の粒が俺の周囲を回りだした。

 それはどんどん勢いを増していき、氷の粒は次第に成長していく…… えぇっと、砂漠で大量に仕入れた熱があるからそれを放出すればいいのか? あ、俺自身が焼けないように範囲を……


『ファイヤーウォール展開』



 パリィィィン!!



「!??」

「なにッ!?」


 氷の粒と霧は一瞬で晴れた……

 呪文から察するに氷結系の拘束魔法だったのだろう。それは俺を凍らせることは出来なかった。


 俺は薄い紫色の炎のようなモノに包まれている…… え? チョット待って? あああ熱ああ うぎゃあああ 助けて 熱い 死にたくない メr…… いや、熱くねーじゃん。


 見た目は炎だがマンガやアニメでよく見るオーラの演出そのものだった。


「馬鹿なッ!! 魔法が無効化? 強制解除された!?」


 いや、今ベルリネッタはファイアウォールと呟いた…… この大陸に大砂漠を作り出したあの悪名高きファイアウォールだ。恐らく魔法の源である魔力を焼き尽くしたのだろう……


 …………たぶん。


 だがこれは魔法使いに対する究極のアンチスキルだ、恐らくこの世界に存在するどんな魔法でも無効化できる。


 …………きっと。


 そしてマナウイルスを一切保有していない純血種(ピュアブラッド)のみが、あの炎で焼かれることなく無事でいられるのだろう。


 …………おそらく。


「ファイアウォールって遠隔で使えたのかよ」

『今のはストレージ経由でマスターの周囲にファイアウォールを展開した』


 そうか、俺のストレージはベルリネッタからの借りものだ、要するに四次元ポケットとスペアポケットの関係だな、中身を共有できる。

 ただし俺のスペアポケットには使用制限があり不思議道具を取り出すことができないというクソ仕様。

 人生ってままならないな……


「クソッ!! 何なんだコイツは! おい、エルダーを出せ!!」

「なっ!? 街中でアレを使う気ですか!?」


 ? えるだ~?


「攻撃は当たらない、魔法は効かない、なら他に手はあるのか?」

「そ……それは……」

「分かったら早くしろ!」


 何か分からないが良くないコトよするみたいだ、もちろん俺はそれを律義に待ってやるほど伝統を重んじる性格ではない。


「《報復棘山田(モーニングスターショット)》」



 ヒュッ ドゴオオォォォン!!



「ッ!!!!」


「全員動くな」


 トゲ付き鉄球を後ろを向いて走り出した獣人の顔の横すれすれに撃ち込んで動きを止める。

 狙い通り全員その場から一歩も動けなくなった……


 確かに狙い通りだったんだけど…… あぶねー! ギリギリ狙い過ぎた! 10cm横にズレてたらあの獣人の頭が吹っ飛んでたトコだ! ストレージの狙いが正確無比で助かった。



 オオォォォオォォォオォォォォォォ……



「ん?」



 バキバキバキ! ズゥン!



 大量に積まれていた木箱の向こうから何か巨大な生き物が現れた。

 4~5mくらいあるかな…… 恰好はゴブキチやオーク先輩と同じく吹けば見える皮の腰巻一丁、魔物界ではあのファッションが最近のマストらしい。


『魔物・トロールです』


 えるだ~ってのはアイツの事か、つまり切り札だ。


「グルォォォォォオオオ!!」


 なんか…… めっちゃ怒ってない? あ、右の乳首から血が出てる…… どうやら俺のトゲ付き鉄球がクリティカルヒットしたらしい。

 寝てたところに血が出る勢いで乳首攻めされたらそりゃキレるよな。


「ま、まずい!! ハモンド!! すぐにエルダーを落ち着かせ……ッ!!」



 バチィーーーン!!!!



 ボスライオンがトロールに引っ叩かれて吹っ飛んだ……

 多分あのトロールはテイムモンスターかなにかで俺と戦わせるつもりだったんだろう。


「ヒィィィィッ!!」

「に、逃げ……!!」



 ドゴォォォン!!



 逃げ出そうとする獣人の足元に鉄球を撃ち込み……


「さっきも言っただろ? 「動くな」って」

「「「ッ!!」」」


 ニッコリ微笑みながらもう一度警告する、その場を動くな……と、後はカオスだ。


「た、助け……」



 バチィーーーン!!!!



「くっ、来るなぁーーーッ!!」



 バチィーーーン!!!!



「ひ、ひいぃい……」



 バチィーーーン!!!!



 乳首を激しく責められ怒り狂ったトロールが盗賊団を次々と張り倒していく……いや、張り飛ばしていく…だな。テニスボールみたいにピュンピュン飛んでく。彼らもこれで更生してくれればいいのだが。


『マスター…… 相変わらずやること……エグい』


 黙らっしゃい、如何に低燃費で最大効率を引き出すかは異世界に措いても重要なファクターだ。

 自分の手を汚さずに盗賊団をボコれる手段があるのならそれを使わない手はない!

 アイツ等が自分で用意した魔物にシバかれて不幸な結果になったとしても、それはアイツ等自身の自業自得というものだ。


 トロールの乳首に鉄球撃ち込んでキレさせたり、盗賊たちに逃げることを禁じたけど俺は悪くない。


「ゴメンナサイ! ゴメンナサイ! ゴメンナサ……」



 バチィーーーン!!!!



 そして最後に残っていた獣人も張り飛ばされ、ここに上級冒険者パーティー《闇色腕(ダークアーム)》は全滅したのだった……

 結局半分以上はトロールが張り飛ばしたからパワードスーツの実験にはあまりならなかったな、いや、まだ最後の仕事が残ってたな……


「グルォォォォォオオオ!!」


 トロールは右乳首のカタキ(俺)をとうとう発見した、この薄暗い倉庫の中で全身黒尽くめの俺を見つけられるとは視力は良いようだ。


 …………と、余裕ぶっこいてたけど……どうしよう? 攻撃手段がない。

 トロールは人間の倍以上の体格のうえ非常にデb……ふくよかだ、分厚い脂肪に守られたヤツにはどれだけ鉄球を撃ち込んでも致命傷にはならないだろう。

 同様に《大型冷凍庫開放(アブソリュート・ゼロ)》や《山吹色の太陽光線(サンライト・オーバーレイ)》でも効果があるとは思えない。


 …………


 なんかもう真面目に相手するのが面倒くさくなってきた。


「ベルリネッタ、――――――って可能か?」

『イエス、可能』

「んじゃそれで……」


「グルォォォォォオオオ!!」


 トロールが猛烈な勢いで迫って来た…… うわ…… まぁ~たブラブラしてるよ、なんでどいつもこいつも丈の足りない皮の腰巻着けてるんだ? ほとんど美少女戦士級のミニスカートじゃねーか! この世にこんな嬉しくないミニスカがあっていいのだろうか?



 ズン! ズン! ズン! ボゴッ!



「オォオ!?」


 トロールの足元が突然崩れ穴へ落ちていく……


「ウオオオォォォオ!?!?」



 ドズン!! ボゴッ!! ドスーーーン!!



 トロールは落とし穴の底をぶち抜き、そのままダンジョン第一階層へ落ちていった……

 太り過ぎだよ、次からはダイエットしておくんだな。


 ちなみにこの落とし穴、ストレージで掘ったものだ。

 床石部分を残しストレージ領域の限界値である半径5mほどの落とし穴を作った。

 ダンジョン第一階層までの深さは闘技場で見た観客席と天井の高さから目分量で5~6mほど、それだけ掘った穴にあのデブを落とせばダンジョンの天井をぶち抜いてくれると思った。

 目論見通りになったな、仮にダンジョンに落とせなかったとしても、さっき収納した大量の土砂を勢いよく落としてやれば底が抜けるだろう……という割と雑な作戦だった。


『状況終了、マスターお疲れさま』


 終わり? ふっ、ベルリネッタもまだまだヒトというものを解ってないな、まだ終わりじゃない……

 愚かにも我らに牙を剥いた哀れな獣たちに見せしめという名の罰を与えなければならないのだから……






《特別解説》

『モンペ』

 ここではモンスターペアレントの略、自分の子供のために他者に変更を強要してくる、そのうち風が吹いたら遅刻を認めろ、雨が降ったら休校にしろとか言いだしそう。


『美少女戦士級のミニスカート』

 とにかく短い。太もも全露出でたぶん股下3cmくらいしか丈がない。



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