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非魔法使いによる反則的異世界攻略  作者: 群青
―― 獣人族/ビスト 編 ――
37/175

第37話「わふ」


 第49守護魔獣討伐後、地上に戻り報告をおこなった。

 なんか色々質問されたりしてなかなか報奨金を貰えなかった、だがそれも仕方のないコトなのだろう。

 昨日デビューした下級冒険者にそんなコトできるとは誰も思わない……


 だからってウソ発見器に掛けるなよ、失礼な奴らだ。

 しかもウソ発見器が機能しなかった…… アレって魔無(マナレス)には反応しないんだな、余計に疑われたのは言うまでもない。



「こちらが報酬の200万ディルになります」


 外が暗くなる頃ようやく支払われた、理不尽な理由を付けられて未払いにならなくてよかった。


 金貨200枚…… 無駄にかさばる…… 白金貨で用意しろよ。

 まぁどこぞの勇気ある者だったら鉄貨200万枚とかで用意しただろうからそれに比べればまだマシか。

 どうせ半分はすぐに使うしな。


 よし! 行くぞ! ツルツルお肌の獣人娘を買い取りに……! じゃなくて救いに!!


「あ、少々お待ちを」

「ん?」

「こちらが報酬の「ユグドラ茶100年分」と「ユグドラ君ぬいぐるみコンプリートセット」です」

「…………」


 金貨よりかさばるモノを押し付けられた…… すみませんゴミ箱どこですか?



―――


――




 金を握りしめ既に暗くなった路地裏を奴隷商に向かって歩く。

 普段ならこんな治安の悪そうなところを暗くなってから近づこうとは思わないんだが今日は特別だ。

 もしチンピラが金と女と俺の貞操を狙ってきたら始末するコトになるだろう…… ベルリネッタがな。


 …………


 出なかった。

 まぁ無駄に路地裏に血の雨が降らなかったんだ、良しとしよう。


「ようこそいらっしゃいました、カグラバシ様、このような時間にどうされたのですか?」


 ハダカデバネズミの獣人は夜の8時を過ぎていても嫌な顔一つ見せずに対応してくれる、商売柄か営業時間の概念は無いらしい。


「金ができたから例の娘を貰いに来た」

「は? もう……ですか?」


 さすがの店主もまさかその日の内に買いに来るとは思っていなかっただろう。

 どう見たって貧乏そうだもんな俺ら……


「先ほど第1世界樹迷宮の第49層が突破されたという噂を聞きました…… まさか?」


 もう噂になってるのかよ、それもこれもギルド職員の手続きが遅かったせいだ。

 そして流石は奴隷商と言うべきか、こんな信憑性の低い噂もすでに耳に入っているとはな。


「おっと失礼しました、余計な詮索はするべきではなかったですね。どうぞこちらへ……」



―――



 応接室へ通された。

 何でも奴隷を引き渡す前に洗浄しているそうだ、そのままの状態で渡されたら俺自ら体の隅々まで洗ってやったのに、余計なことしやがって……

 いや、臭いまま渡されても困るけどね。


 待ってる間に奴隷の取り扱いについてとか、書類関係の手続きを行っている。

 ただし俺は字が読めないからベルリネッタに丸投げだ。

 いちいちスマホで撮って確認とか手間が掛かってしょうがないからな。


 なので俺は出されたお茶を飲みながら優雅に聞き流している…… 奴隷の取り扱い方法を聞かなくて良いのかだって? 大丈夫、そこら辺はラノベで予習済みだ。


 …………


 しかしこのお茶渋いなぁ…… ちなみにコレがユグドラ茶らしい、俺は今後100年この渋いお茶を飲み続けなければならないのか? やはりゴミ箱行きだな。

 誰か高値で買ってくれないかなぁ?



 コンコン



「入れ」

「失礼します、店長、商品をお持ちしました」

「あぁこちらへ」


 連れてこられたのは…… なんつーか、テレビ画面から這い出してきそうな見た目の少女だった。

 はっきり言って貞子っぽい、髪の毛が伸び放題のせいで普通の獣人っぽく見えるほどだ。

 つーか服着てる? 見えないんだけど? いくら奴隷でも裸で引き渡しってコトは無いよな? ケチな王様だって布の服くらいはくれるぜ?


「さて、先にも申し上げた通りこの娘、言葉を介さないので取り扱いがかなり難しいのですが…… 本当にご購入でよろしいですか?」

「あぁ、問題ない」

「左様ですか、では隷属の首輪による主人登録を行います、どなたで登録されますか?」


 主人登録…… ベルリネッタのマスター登録みたいなものだな。


「マスターで」

「イヅナ様でしょうね」


 日本という国で生まれ育った俺は奴隷という制度そのものに嫌悪感を抱くのだが…… ま、いっか。


「分かった、俺で登録してくれ」

「それではこちらの書類にサインを……」


 サインでいいんだ、血判とか求められるかと思ってた。

 コレ日本語でもイイの? 筆記体っぽくグシャグシャっと書いとくか。


「……? ……?? あ、はい、結構です」


 サインって読めなくてもいいんだ、何の意味があるんだろうな? この行為に……


「お買い上げありがとうございます、只今よりイの401はお客様の奴隷になりました」


 イの401? なんだその潜水艦みたいな名前は?


「あ~、そう言えば名前が無いんだったっけ?」

「名前はお客様がご自由にお付けください」

「え? いいの?」

「はい、購入後に奴隷の名前を変えるのはよくあるコトですので」


 そういうものなのか…… じゃあ貞子……はちょっとヤダな、少し考えよう。



―――


――




 その後……

 支払いを済ませ事前に予約しておいた宿へ直行、宿と言っても冒険者ギルドの上にある冒険者専用の安宿だがな。

 ちなみに4人部屋が手配されていた、予約をしたのはユリアだ…… 彼女は男と同じ部屋で寝泊まりしても気にしないのだろうか? もちろん俺はまったく気にしないがな。


 フフッ…… 楽しみだな、寝間着姿のユリアを見るのは…… ハプニングどんとこい♪


 …………


 ん? アレ? あッ!! しまった!!

 奴隷といったらアレがあるんじゃないか!? 『夜伽』が!!

 4人部屋でいきなり目くるめく夜のご奉仕はハードルが高いんじゃないか? 俺だってドキドキ♪初ご奉仕を衆人環視の中で受けるのは勇気がいるぞ?


 いや待て、ものは考えようだ、ベルリネッタとユリアは恐らく夜伽なんて知らないだろう。

 ならば夜伽の専門家である(性)奴隷先生にレクチャーしてもらえばいいんじゃないか?

 フッ…… そうだな、俺も夜伽に関しては素人だ、ならば今宵は俺も無抵抗で先生のテクニックに翻弄されてみよう、ベルリネッタとユリアの為の勉強会だ!


「あの~、イヅナ様? もしも~し?」

「ハッ!? あ……あぁ、すまない」

「お疲れでしたら今日はこのままお休みになられますか?」


 おいおい、ナニ言ってんだよ? これからが本番だぜ?


「いや、大丈夫だ…… そ…それじゃぁ…… 始めようか」

「?? はぁ……」


 とは言ったものの…… いったい何をどうすればいいのやら? いきなり全裸でベッドに横たわればいいのだろうか?

 センセー! 教えてください!


 そんな思いで奴隷少女に視線を送ると……


「わふ……」


 なんか…… ちっちゃく吠えた。


 俺は肝心なことを忘れていた、ケモノに育てられた少女が夜伽なんて知ってるハズないじゃん!

 いきなり野性味あふれる交尾を始めるのが関の山だ…… それはそれでアリかも知れないが。


「あの、今更ですけど意思疎通できない娘を保護するのってすごく大変だと思いますよ? 今は大人しいですけど、もしかしたらいきなり噛み付いたり、夜な夜な月に向かって吠えたり、部屋の隅っこでオシッコしたりするかもしれませんよ? 最悪の場合は……ウンk……するかも」


 おい、恐ろしいコト言うなよ…… 確かにユリアの言う通りなんだけどさ……


 …………そうはならない気がする。


「…………」

「……わふ……」


 やはり……


「君さ…… こっちの言葉 解ってるよね?」

「わふッ!?」


 俺の言葉に反応した、言葉の意味を理解していなければあの反応は出ない。

 あとは簡単、このまま見つめ続ければ向こうが勝手に降参してくれるさ。


「わぅ…… うぅ…… ご……ご主人様……」


 思った通りこちらの言葉を完全に理解している、あのネズミ男適当なこと言いやがって。

 しかし…… ご主人様……か。

 いい響きだ、メイド喫茶とか行ったらこんな気分が味わえるのだろうか?


「その…… ご主人様は…… なんで日本語話してるの……です?」

「!?」


 なんで? なんで異世界人の口から日本語って単語が出てくるの?

 彼女は俺と違って転移者ではない、確かに見た目はジャパニーズホラーの呪いのビデオで主演を務めそうな黒髪黒目の日本人ポイ、だが本物のケモ耳とシッポが付いた日本人なんて俺の知る限り三次元日本には存在しない……

 ならば答えは一つだけ……


「君は…… “転生者” なのか?」


 転生者…… よーするに生まれ変わりだ。

 日本で死んで記憶を保持したままこの世界で生まれ変わったクソチート野郎、大多数が転生特典とかいうチート能力を授けられてる奴らだ…… まぁ転生者に関してはもはや説明するまでもないよな? きっと今期のアニメにもその手の話が一つや二つはあるだろうから。


「ああ…… ああぁぁぁーーー! やっとまともに言葉が通じる人に出会えたです」


 あ~……なるほど。ケモノに育てられたら異世界語なんて覚えられないよな、なんて運の悪い奴だ。


「あ、あの、イヅナ様? 彼女の言葉が解るんですか?」

「は?」


 ユリアが不思議なことを言った、解るも何も俺たち同じ言葉話してるじゃん?

 ん? あれ? 違うの?? じゃあ俺いま何語話してるの?


「ベルリネッタ、コレってどういうことだ?」

「この世界で他者との万能意思疎通手段…… 2種類ある、一つは魔力による《言語共通化(コモンランゲージ)》、もう一つが精神感応を用いた《接続式認識共有(トランスジャック)》」

「ふむ……」


 何のコトだかサッパリ判らん。

 だが魔無(マナレス)である俺の意思疎通手段は……


「マスターが使ってるの、後者の《接続式認識共有(トランスジャック)》」


 当然そうなる、しかしいつの間にそんな能力習得したんだ? そんなモノ配る暇があるなら「敵の能力を奪う」みたいなチートスキルの一つでも寄こせよ!

 ……と、言いたいトコロだが、目の前に言語関係の能力を貰えなくて苦しんだ人がいるからなぁ…… やっぱり貰えてよかった。


「《接続式認識共有(トランスジャック)》は元々外宇宙の存在と円滑に意思疎通を行うために《エーリュシア》で発明された技術。

 他惑星には音声以外にも光信号や精神感応…… 様々な方法でコミュニケーションを取る種族が存在する、だから想定しうる全てのケースに対応できる能力になってる」

「ふむ……」


 今なにげに異星人の存在を完全肯定したな…… まぁ俺からすればユリアだって立派な異星人だから今更なんだけどさ……

 そして相変わらず何のコトだかサッパリ判らん。つまりど~ゆ~こと?


「今は本船の《Archive》からリンクが切れている状態…… だから独自に《Archive》を構築、そこに接続して《接続式認識共有(トランスジャック)》機能を使用してる」

「ふむ……」


 ??? 辛うじて判るのは今説明されているコトが俺の知りたい内容では無いってコトだけだ。


「つまりマスターはどんな言語を使っていても、この星に存在する……あらゆる知性体と円滑な意思疎通ができる」

「ふむ……」


 うん、わかった、よく分からないコトがよく分かったからもういいや。

 多分だけど俺が日本語で喋った言葉は、例え相手が宇宙人だろうが地底人だろうが異世界人だろうが、問答無用の精神感応で相手の言語に自動翻訳されて聞こえるってコトだ。

 理屈はよく分からんがそういうコトだ。


 そしてこのケモノ娘は言語系能力を持っていない上に、この世界の言語を習得していないから俺の日本語しか解らない…… ってワケだ。


 ………………


 多分。




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